まぐろ資源の現状と今後の動向は 遠洋水産研究所の宮部氏が講演 [2009年02月20日(Fri)]
海洋フォーラムの会場 すしや刺身で日本人には身近な魚である「まぐろ」に対する需要が日本以外でも高まり、漁獲枠の規制強化が打ち出されている中で、まぐろ問題の現状と将来を考えるフォーラムがこのほど東京の海洋船舶ビルで開催された。海洋政策研究財団が実施している「海洋フォーラム」の57回目で、独立行政法人水産総合研究センター遠洋水産研究所の宮部直純温帯性まぐろ資源部長が「まぐろ資源の現状と今後の動向」と題して講演した。 |
近年、日本のほかにも台湾と中国を中心にまぐろブームが起き、供給が需要に追いつかない事態が起きている。こうした中で、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は2008年11月、地中海と東大西洋のクロマグロの漁獲枠を2011年に08年よりも35%削減することを決め、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPEC)も同年12月、メバチを2009年から毎年10%、3年間で30%削減という規制強化策を決めた。(写真:公演する宮部氏)
宮部氏は講演で種類や分布状況、漁法、世界と日本の漁獲量の動向など、まぐろを取り巻く事情に触れた後、国際的なまぐろ資源の保護・規制の現状を説明した。乱獲や過剰漁獲に陥った背景について「これまでの資源管理は最大持続生産量(MSY)という古い理論に基づいていた。資源の環境、漁獲はあまり変化しないという考え方だった」と分析した。また、WCPECを除いたまぐろの国際条約の規定では資源をMSYの水準に保つことが目的として採用されており、条約を修正しない限り予防的措置の適用は難しいと語った。 今後の資源・漁業管理問題として宮部氏は「隻数の制限や削減など漁獲能力の削減」「監視能力の強化」「まぐろ漁の際にサメやウミガメも漁獲してしまう混獲問題」などを挙げた。生態系の保存に関しては、単一種の管理から複数種を一括管理する方向への転換や、海洋保護区域の設定が必要と提言。英国に本部があるMSC(海洋管理協議会)の認証マーク制度は「持続可能な漁業のための原則と基準」に基づき、第三者の認証機関が認証した水産物には認証マークが与えられ、消費者がこのラベルのついた水産物を選ぶことによって、厳しい取り組みをしている漁業者を支えることにつながっていると指摘した。(写真:主なまぐろの種類) 宮部氏は長年まぐろ問題の研究をしており、WCPECの委員もしている。まぐろ問題はこのところメディアでも取り上げられることが多く、フォーラムには大学や研究機関の専門家が集まり、講演後、地球温暖化の漁獲への影響や途上国の乱獲問題などで意見を交換した。(写真:熱心に講演を聞く参加者)(石井克則) |