郷土の森を守ろう 高知で「おじさん」救援隊が活躍 [2009年01月06日(Tue)]
いの町の伐採請負現場は急斜面のひのき林。1ヘクタールを1年がかりで整地 農山村の高齢化や過疎化が進み、さらには木材市況の下落などによって、森林の荒廃が深刻になっている。しかし森は、豊かな生活環境にとって欠かせない大切な資源。そんな郷土の森林を守り育てようというおじさんグループが、高知県でがんばっている。その名も「土佐の森・救援隊」。アイディアに富んだその活動方式は、同じ悩みを抱える全国の林業地でも応用できそうだ。 |
四国・高知は県土の84%が森林に覆われる森の国。この比率は日本一で、高知県は平成15年、全国に先駆けて「森林環境税」を導入、個人と法人の県民税に500円を上乗せして高知県森林環境保全基金を設置した。それに応え、郷土の森の環境保全に取り組もうという森林ボランティア団体が続々と結成され、今では約30団体が県内各地で活動している。(写真:伐採には危険がつき物。隊員の技術は日々向上している)
「土佐の森・救援隊」は、そうした民間グループの先駆的ボランティア団体で、県の森林環境税導入とともにNPO法人の認証を取得、山林の間伐や下刈りを請け負ったり、限界集落のシンポジウムなどを開催、山村文化の振興といったテーマに取り組んでいる。毎週火曜と木曜日の活動日には会員10人ほどが山に入り、終日、間伐などに取り組む。月に1回は合宿もする。(写真:最も時間がかかるのが搬出。ささやかながら機械力も備えている) メンバーには現役公務員や職探し中の若者もいるが、多くが定年退職者だ。東京での仕事を終えて帰郷し、森の荒廃にショックを受けて参加した人や、東南海地震の襲来に備え、チェーンソーに慣れようと参加している防災ボランティアもいる。「定年後」であるから時間はたっぷりあるものの、林業にはほとんどが素人だ。現場隊長の松本誓(ちかう)さんは高知県の森林局OBで、在職中に取り組んだ森林保全にますます熱中している。(写真:作業現場で昼食。おじさん隊員たちは黙々と食べ、再び作業に) 「モリ(森)券」というアイディアが、隊員の活動に弾みを付けている。森林保全のために流した汗の代償に発行する地域通貨券的な森林証券だ。「1モリ」が1000円までの商品と交換できる。いの町や高知市などの協力店で、例えば4モリで佐賀町の鰹のたたき、5モリでいの町の土佐和牛と交換できるといった具合だ。協力店には飲食店やガソリンスタンドなどたくさんの商店が名乗りを上げている。 協力店がモリ券を救援隊事務局に持参すれば、交換した商品の定価通りの現金が支払われる。その原資は協賛企業の賛助金や、山林の所有者と折半する伐採木材の売却費、地元の木質バイオ燃料製造所が買い取る端材などの売り上げを当てる。つまりはNPOの活動収益を、地場産品の売り上げへと回転させているのだ。 朝から日暮れまで、急な傾斜を上り下りして危険な伐採をし、重い丸太を運んで「モリ券」2枚程度だが、環境保全に役立った証だからみんな満足だ。森林組合が請け負うには採算が取れない小さな森林を対象に、「ボランティアではあるけれど、セミプロの域を目指す」集団として、頼れる救援隊に成長しつつある。(写真:本日の「モリ券」は2モリ。これが結構、励みになる) 個人会員は80人を超え、協賛企業も25社にのぼっている。ここから派生した新しい森林ボランティア組織も生まれている。日本財団は、こうした「土佐の森・救援隊」の活動方式が、システムとして確立できるよう支援している。 |