水産系高校の共同実習船建造へ 岩手・宮古で調印式 [2013年06月21日(Fri)]
イカ釣り漁実習中のイメージ図 東日本大震災で共同利用の実習船を失った岩手県立の水産系3校(宮古水産高校、高田高校、久慈東高校)に対し、日本財団が新たな共同実習船建造を支援することになり、6月6日、宮古水産高校で調印式が開かれた。建造される実習船は最新の機材も搭載され、2015年4月から水産業の次代を担う高校生たちがイカ釣り漁やサケはえ縄漁、近海マグロはえ縄漁などの実習に利用する。 |
調印の証として握手を交わす 3校は、震災前まで利用していた135トンの共同実習船「翔洋」を津波のため陸に打ち上げられて失った。実習船は水産系高校生にとって様々な漁法の船上実習を行う上で欠かすことのできない存在だ。日本財団は岩手県沿岸部の地域経済を復興するには地域の基幹産業である水産業に携わる人材を育成する環境整備が必要として「未来の水産漁業担い手育成プロジェクト」を立ち上げ、共同実習船建造への支援を決めた。建設費9億8645万円のうち5億4860万円を「岩手県漁業担い手育成基金」に対して拠出する。新しい実習船は170トンで、定員34人。イカ釣り漁用の照明がLED仕様になり、女生徒専用のトイレ、風呂も備えられる。3校(宮古水産高校100人、高田高校・久慈東高校各20人)の140人が利用する。 生徒の活躍への期待を述べる海野常務/復興への抱負を語る生徒代表の松原君 宮古水産高校の体育館で開催された調印式では、同高校の全校生徒と関係者ら合わせて約400人が出席し、達増拓也岩手県知事、大井誠治岩手県漁業担い手育成基金代表理事、海野光行日本財団常務理事が調印書に署名した。この後、海野常務理事は集まった生徒に対して「共同実習船を活用し、海の現場で有意義な経験を積んでいただきたい。いつか三陸の海で、そして世界の海で皆さんが活躍する姿を見ることができる日を楽しみにしています」とエールを送った。これに対し生徒を代表し、海洋技術科3年生の松原佑樹君が「建造の決まった船を漁業実習で有効利用し、必ず三陸漁業の復興を成し遂げたい」と抱負を語った。 新しい商品開発に励む食品家政科の生徒 東日本大震災のため同校は水産加工食品の製造過程を学ぶ実習授業で使用していた設備も被災した。共同実習船の調印式終了後、実習原料や製品を保管する超低温冷凍機、サンマやイカなどを乾燥して製品化する実習に用いる乾燥機、食品及び原料の放射能値を測定する装置などを新たに配備した実習室の完成披露会も開催された。この機材配備に対しても日本財団は2366万円を拠出した。食品家政科の生徒は「整備された実習室で、新しい商品を開発して、三陸の復興に貢献したい」と意気込みを話していた。(山口領) |