青函連絡船の思い出探しに〜「摩周丸」の運航実績が電子データベース化 [2012年08月31日(Fri)]
データベース化された運航ダイヤ/保存されている昭和24年9月分の運航ダイヤ 1908年(明治41年)の就航から海底トンネルの開通で役目を終えた1988年まで、青森―函館間113キロを運航し続けた青函連絡船。そのうち、1948年(昭和23年)以降の約40年間の運航ダイヤ(運航成績表)を電子データベース化し、パソコン上で閲覧できるシステムづくりが進行中で、函館市青函連絡船記念館摩周丸で順次できた分から公開されている。これまで研究目的で要望のあった日のダイヤ開示などはあったが、一般公開は初めて。1便ごとの気象状況、船名、乗り継ぎ列車などが一目で分かり、郷土史家や船マニアらの関心は高い。 |
運航ダイヤの画面を説明する高橋摂さん 記念館として保存される摩周丸を運営するNPO法人語りつぐ青函連絡船の会(木村一郎理事長)が、日本財団の助成で、残されている運航ダイヤをスキャンする機械などを導入、今年4月からデジタル化に着手した。高橋摂事務局長によると、昭和30年代以降はきちんとそろっているが、昭和20年代については抜けている期間があり、総数はざっと1万3000枚。また古い年代のダイヤは触れるとボロボロ壊れる心配があり、慎重な取り扱いが必要。このため作業完了は来年3月ごろになりそうだという。 摩周丸の甲板から見る函館山 記念館摩周丸では、80年の歴史を持つ青函連絡船(ピーク時の運航は13隻30往復)の写真やデータ、運航記録などについて紹介する企画展「青函連絡船72万8239航海の記録」を、運航ダイヤ閲覧とともに開催している。連絡船はいずれも貨物輸送が中心で、石炭から木材、ウマやウシまであらゆる物資が対象になっており、北海道開拓や戦後の経済復興に大きく貢献してきたことが分かる。また、どの程度の風の強さで欠航していたか、いかに工夫して効率のよい輸送を達成していたかなども読み取れると、高橋さんはデータベース化の威力を話した。 記念館として保存されている摩周丸 7月下旬に記念館を訪れた。公開されている運航ダイヤはまだ1日分だけ。それでも連絡船マニアだという若者は「とても面白い、この日の積み荷や船長名など当時の状況が浮かんでくる」とパソコンの前にくぎ付けだった。佐藤幸雄副館長(元1等航海士)は「問い合わせでもっとも多いのが『私が昔乗った連絡船の名前を知りたい』という質問。データベース化ですぐに答えられるようになったが、フェリーなどと勘違いされているケースもあって」と苦笑い。白井朝子副理事長は「連絡船に乗ったのは修学旅行だったのか、それは臨時便だったかなど、乗客の状況などもデータに加え、来年以降も内容を充実させていきたい」と話した。(平尾隆夫) |