洋酒は船乗りたちから伝わった 平戸のオランダ商館で特別展 [2012年08月24日(Fri)]
![]() コースターもこれだけあると壮観だ 長崎県平戸市は、1609年(慶長14年)に日本最初の海外との貿易拠点としてオランダ商館が設けられ、1639年には石造りの巨大な倉庫も建設され南蛮貿易の街として知られる。その後商館は徳川幕府の命令で出島に移転、倉庫も破壊されたが、この2階建て倉庫が平戸市によって2011年9月に復元され、現在、財団法人松浦史料博物館(木田昌弘館長)が日本財団の支援で「船乗りが伝えた海外の酒」という特別企画展を開催している。 |
![]() 担当の岡山さん 松浦史料博物館は、旧平戸藩主だった松浦家に伝わる美術品や歴史資料、土地、建物を松浦家から寄贈され、これらの保存・展示をしている。平戸オランダ商館復元後は、その運営にも当たっている。今回の特別展は、平戸の対外貿易時代に伝わったワインやビールなど船乗りが愛した酒をテーマに、大分県日田市の天領日田洋酒博物館や平戸市の老舗酒造メーカー・福田酒造の協力でウイスキーのボトルやビール瓶、帆船模型、コースターなどの珍品514点を展示した。 ![]() ![]() 復元されたオランダ商館/世界博に出品したビールの木箱 学芸員の岡山芳治さんが4、5年前から酒に関する企画展のアイデアを温め、バーテンダー協会を通じて、個人で中学3年生当時から31年間かけて洋酒に関する10万点の資料を集め、博物館を開いた日田市の高嶋甲子郎さんと知り合い、全面的な協力を得たという。展示物の中にはパリ万国博覧会(1900年)に出品した日本のビール会社の木箱やオランダから伝わった「ランビキ」という蒸留器、ペルシャ(現在のイラン)で織られた高級絹織物を使った松浦家伝来の少年用上着などもあり、酒とのかかわりを通して日本の歴史を振り返ることができる。 ![]() カネールクウクはさっぱりした味で好評だ この企画展は7月21日からスタート。初日には中近東から東南アジアに伝わるサトウキビが原料のアラック(アラキ酒とも呼ばれ、船員が愛好した)という蒸留酒の試飲会を行い、8月19日には、ポルトガル人が伝えたカスドース(平戸市の郷土菓子)やオランダ船員が伝えたカネールクウク(クッキー)作りをする「南蛮スイーツ調理試食体験会」があり、大人と子どもが楽しんだ。岡山さんは「世界の4大し好品といわれる酒、茶、コーヒー、たばこの多くは対外貿易時代に平戸を通じて日本に広まった。日本一の洋酒のコレクターである高島さんからも貴重な品を借りることができ、お酒が好きなお父さんたちに面白がって見てもらっている」と語っている。この特別展は9月2日まで。(石井克則) |
