今回の展示を企画した岡田さん(咸臨丸模型前で)
万次郎は1827年(文政10年)に貧しい漁師の家で生まれ、14歳のときに仲間4人とともに漁に出て遭難。漂着した鳥島で143日間の無人島生活を送ったあと、米国の捕鯨船に救助された。以後数年間を米国で送り、日本に帰国後は日米和親条約の締結に力を尽くし、通訳、英語教師として活躍した。2011年4月にニューアルオープンした同資料館は、波乱万丈の生涯を送った万次郎にまつわる多くの資料を展示している。
万次郎を救出したジョン・ハウランド号の模型
今回は常設展示の万次郎自筆のアルファベット掛け軸や漂流について記した「漂流紀畧」、万次郎を救った恩人、ホイットフィールド捕鯨船長の再現した自宅のエトランスなどのほか、帆船模型の製作に取り組んでいる高知工科大学の草柳俊二教授の協力で、咸臨丸(江戸時代末期に米国との日米修好条約調印のため勝海舟を船長として太平洋を横断した。万次郎が操船指揮を執った)やジョン・ハウランド号(万次郎を救助した米国の捕鯨船)などの帆船の模型も展示され、1、2階を使った展示物は500点に上る。これらの展示を見た入館者からは「万次郎の生涯に触れ、感動した。力強く生きる気持ちになった」という感想もあった。
企画展会場
このほか、7月15日には資料館のある海の駅「あしずり」で「ジョン万 海の元気まつり」が開かれ、巡視船「とさ」の体験航海や水上綱引きなどのイベントが行われた。この後、関連企画として7−8月の日曜日(7月22、29、8月5、19、26)のジョン万次郎を模した人形・フィギュア塗装教室、大阪市が所有する航海練習船・帆船「あこがれ」の体験航海(10月27、28)も計画されている。
体験航海の巡視船・とさ
アメリカマサチューセッツ州フェアヘーブンと土佐清水が毎年交互に開いている「ジョン万祭」は、ことしは日本の番で、10月27日に土佐清水市で開催される予定だ。同観光協会の岡田りえさんは「草柳教授の協力でジョン万次郎時代のさまざまな帆船の手作り模型を展示することができた。夏休みを中心に多くの家族連れが来館してくることを期待している」と語っている。(石井克則)