相馬の獅子神楽が復活 震災後初の奉納 [2012年06月28日(Thu)]
奉納された獅子神楽の様子 東日本大震災で保存会が被災、継続が危ぶまれていた旧相馬藩領のひとつである宇多郷(福島県相馬市)地区の神楽が、日本財団の支援をはじめとする各方面からの協力で2年ぶりに復活した。地域ごとに伝わる神楽が一堂に会する春の大祭が6月17日に相馬市坪田の大雷神社で開催され、9団体が大震災からの復興を願って伝統の神楽を奉納、境内には笛や太鼓の音とともに、震災前の活気が戻った。 |
1月には目録贈呈も行われた/獅子の幕や太鼓の節など種類はさまざま 宇多郷には26の神楽保存会があり、このうち5団体が津波被害を受け、獅子頭や笛、法被などの大半を失った。家を流されたメンバーもおり、保存会の連合会会長も亡くなった。この地区の神楽は、ヤマセによる冷害で頻繁に飢饉に悩まされてきた農民が豊作への願いを込めて奉納。旧相馬藩に7つあった郷でそれぞれ継承されていた神楽のうち最も古い形を残しているとされ、県の無形民俗文化財に指定されている。相馬市を代表する祭りでもあり、地元の住民から「雷神さま」と親しまれている大雷神社での祭典はどうしても成功させたいと、一時途方に暮れていた関係者が復活のために立ち上がった。 左から、松川神楽保存会の草野祐抵会長・高橋奈央さん・武口敬子さん この日は、被災状況がひどく神楽の奉納ができない3団体が早朝に獅子頭を奉納した後、午前8時の神事に続いて神楽の舞いがあった。このうち松川神楽保存会太鼓奏者の高橋奈央さん(13)は中学1年生という最も若いメンバーで、後継者不足も懸念されている宇田郷の神楽にとって期待の星だ。幼稚園のころに町内を回る神楽の姿に感動、太鼓の練習を重ね、今は神楽の奉納の際にも演奏を任されるようになったという。高橋さんは「久しぶりに大雷神社の祭りに参加できて楽しかった」と微笑んでいた。同保存会の草野祐抵会長は「今回は復興につながるようにと町内会総出で参加させてもらった」と語った。 宇多郷神楽は、獅子がダイナミックに舞うことにより神様が乗り移り、眠りから覚めた獅子が再度荒々しく舞うという構成が特徴。大雷神社の例祭は、6月の春祭りと9月の秋祭りがあるが、度々の凶作に悩まされていた農民は日照りが続く度に神楽を舞ったという。前日夜から降り続いていた雨は、この日はやんで、境内に用意された神楽殿で奉納することができた獅子は、以前 とは少し違う氏子の思いを背負って、生き生きとした様子で舞っていた。今回獅子頭の奉納のみで終わった団体も、秋祭りには神楽を奉納できるよう相馬市も支援する予定だという。(枡方瑞恵) |