アジアの平和構築専門家の育成を〜国連平和大学が初の通訳なしでの募集説明会 [2012年06月26日(Tue)]
通訳なしの説明会に聞き入る参加者 アジアに関する知識と平和構築の専門知識の両方を兼ね備えた人材を育成する国連平和大学のアジア・リーダーズ・プログラム(ALP)。その第7期生の募集説明会が6月2日、東京・赤坂の日本財団ビルで開かれた。説明会では、国連平和大学から事業部長のトーマス・クロンプメーカー氏が参加したこともあって、初めての試みとして、英語・日本語の言葉が通訳なしで使用された。47人の参加者は説明内容の聞き取り、その後の英語による質疑応答に、熱心に、そして懸命に取り組んだ。 |
国連平和大学に集う学生ら ALPは、日本財団が国連平和大学(コスタリカ)とアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)と協力し、日本や東南アジアなどの学生を対象に実施している。近年、多様な形態の紛争・対立がアジアで多発している中、国境を越えて活躍する際に不可欠な語学(英語)のレベルアップと、現場経験(フィールド・プロジェクト)を組み込んだプログラムで“平和構築のノウハウ”を身に付けてもらうもの。終了時には国連平和大学より国際平和学の修士号(Master of Arts)が授与される。奨学金が全額支給され、 学生の出身国がミャンマー、カンボジア、インドネシア、スリランカ、タイ、ベトナム、ラオス、フィリピン、日本など、国際色豊かな教育環境で学べることも魅力の1つとなっている。 伊勢崎教授(左)とクロンプメーカーさん 説明会ではクロンプメーカー氏のほか、ALPで講師を務める東京外国語大学の伊勢崎賢治教授と4人のALP卒業生も出席。伊勢崎教授が「実務家の養成は、(仕事遂行を通して訓練する)OJTでしかありえない。ALPではフィールド・プロジェクトがプログラムに組み込まれているからこそ実務家養成ができる。また座学としての重要な問題意識も学ぶことができる」とALPの長所をアピールした。また卒業生らはALPで学んでよかったことについて、「議論しながら学べた」(1期生・田島健二さん)、「紛争の当事者がクラスでその紛争について話し合っていた」(3期生・中路潤子さん)、「いろんな国の人と一緒に学べた」(4期生・有馬弥生さん)、「仲間の国際色が豊かだった」(4期生・Amit Mehtaさん)などと話した。 質問に答える卒業生 参加者からは募集や学生生活、就職活動といった質問が相次いだ。「どのような資質・性格を応募者に臨むか?」という質問には、クロンプメーカー氏が「これまでのキャリアをどのように平和構築分野に結び付けたいのか、その後の自分の進みたい将来にどのように生かせるか、という情熱を持った人を望みます」と回答。約1時間にわたって、現地での生活ぶりや不安点、応募予定者への熱いメッセージなどを伝える英語と日本語が、会場内を飛び交った。 元気にプログラムに取り組む5-6期生 一方、昨年の説明会に参加していたALP6期生の入学オリエンテーションが6月7、8の両日、アテネオ・デ・マニラ大学で行われた。オリエンテーションではこれからの学事日程の確認、書類の提出、学生生活における注意事項、キャンパス・ツアー、そして日本財団に関するプレゼンテーションが行われ、新たに日本財団奨学生となった6期生30人のALP学生生活が始まった。(田中麻里) |