車椅子 18カ国に2545台 送る会の活動、一層の広がり [2012年02月10日(Fri)]
障害のある途上国の子供たちに動けることの喜びをー。こんな願いをこめNPO法人「海外に子ども用車椅子を送る会」(東京都福生市)が日本で使用済みとなった車椅子の海外寄贈事業をスタートして8年、贈られた車椅子は18カ国2500台余に上り、補修・梱包や輸送費の確保に大学生や高校生も参加するなど送る会の活動は一層の広がりを見せている。(写真:活動を明るく語る森田会長)
送る会の発足は森田祐和会長(53)が2003年、悪性リンパ腫で余命1年の宣告を受けたのがきっかけ。先天性障害の次男が使う車椅子の国内での運用にかねて疑問を持っており、その活用を目指して翌年,NPO法人を立ち上げた。障害を持つ子どもが使う車椅子は医療用機器の扱いを受け、18歳までは子どもの成長に合わせ2〜3年ごとに新しい車椅子に更新される。新品は15〜25万円、国と地方自治体が9割を補助する。しかし中古品には補助がなく、結局、新品の方が保護者負担が少ないこともあって多くが廃棄される結果となっている。 |
今年1月フィリピンで行われた贈呈式 目下、会員は約70人。日本財団や企業の助成・補助金を得て、首都圏を中心にPTAや福祉協議会などの協力で不要となった車椅子を収集、04年10月、マレーシアの養護センターに16台を贈ったのを皮切りに、アジア、南米、アフリカの18カ国の養護センターや保健省、赤十字などに計32回にわたり2545台の車椅子を寄贈してきた。 相模女子大や武蔵大生も参加 最近は洗浄・整備や修理や梱包などに協力する高校生や大学生も増え、1月、タイの障害者インターナショナルへ発送された80台の整備・梱包作業には相模女子大と武蔵大学の学生が参加、車椅子1台につき1万円近くかかる運送費などを学園祭のチャリティーバザーや街頭募金で集めた。3月にはバンコクでこれら学生も参加して寄贈式が行われる予定だ。 WHO(世界保健機関)の推計によると、障害がありながら車椅子を手にできない子どもは世界で500万人を超す。各国からの支援要請も増え、最近では車椅子が寄贈先の道路事情に合わずパンクするケースが目立つ。空気タイヤの代わりにハッポウゴムを活用する方法や現地に修理工場を設けることも検討されている。 森田会長とエチオピアの子ども 福生市内で貸衣装店を営みながら活動を続ける森田会長は最近、発送したミニ通信の葉書で、昨年12月、90台を贈ったエチオピアのチェシャ財団障害者支援センターを訪問した際、「車椅子で大きく生活が変わった子どもたちの明るい顔が印象に残りました」と記し、「余命1年とまで宣告されたがんと息子の障害というハンデがあったからこそ、ここまでやってこられた」と事業の継続に意欲を見せている。(宮崎正) |