小中高の海洋教育推進へ 東大と日本財団が初の研究拠点 [2011年01月05日(Wed)]
調印式で握手する濱田東大総長(左)と笹川日本財団会長 初等・中等教育における海洋教育の普及推進に向け日本初の本格的な研究拠点として「海洋教育促進研究センター」が東大と日本財団の共同プログラムとして発足、本格的な活動を始めた。当面はセンターを研究・実践のハブ拠点に横浜国大や琉球大など拠点大学と連携、海洋基本法(2007年施行)が打ち出した海洋教育と人材育成を推進するための研究を行い、文部科学省の次期学習指導要領にも成果が反映されるよう提言を行う考えだ。 |
海洋基本法は28条で海洋教育の推進と必要な人材育成を打ち出しているが、現行の学習指導要領には「海洋」の言葉や「海」、「海洋」の科目はなく、必要な知識を身に付けた教員も養成されていない。
研究センター機構図 こうした中、東大は2007年、全学機構の「海洋アライアンス」をスタート、現在約200人の学部生、院生が多角的な海洋学研究を進めており、新たに小中高校の海洋教育の在り方を研究する研究センターも同アライアンス内に組織された。日本財団はアライアンス発足時に4億5千万円を支援したのに続き、今回も昨年10月のセンター発足時から13年春までの2年半に2億3千万円の予算を支援する。 昨年12月20日、東京・本郷の東大で行われた調印式で濱田純一東大総長は「研究センターは海洋教育の研究と普及推進に向けた国内でも初の本格的な試み。海洋基本法の精神の具体化を後押しできるような力強いメッセージを発信していきたい」と挨拶。これを受け笹川陽平日本財団会長は「大学・大学院レベルだけでなく初等・中等教育過程でも海洋教育は積極的に推進されなければならない。それを推進する日本最大級の拠点が初めてできたことを誇りに思う」と期待を語った。 調印式に合わせ記者会見も行われた 当面は横浜国立大、琉球大のほかに拠点大学を4―5校選び、これら大学を中心に実践校となる小中高校や日本財団、海洋政策研究財団がネットワークを作り研究を進める。教育学と海洋学の専門家が協力してカリキュラムや教材の開発を進めるのが特徴で、このほかワークショップなども随時開催、その成果を踏まえ海洋教育の重要性を次期学習指導要領に向け提言していく考えだ。 センター長を務める佐藤学・東大大学院教育学研究科教授は「海洋はいろんな教科の中に広く分散して組み込まれており、教育学に基づき統合するカリキュラムの開発研究が欠かせない」とした上で、「海洋学と教育学の専門家が手を組んで研究するのは異例のケース。成果を教員養成や現職教員の研修に活かし、次期学習指導要領に海洋教育が積極的に導入されるよう政策提言していきたい」と意欲を語っている。(宮崎正) 動画:東京大学・日本財団「海洋教育促進研究センター」調印式(1:56秒)
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