「蔵の街」にレトロ食堂がオープン〜地元・栃木にこだわった食材に人気 [2010年08月24日(Tue)]
なすび食堂と殿塚理事長 昭和初期の建物を改装したレトロな大衆食堂が、栃木市万町の「蔵の街」大通り沿いにオープンした。社会福祉法人なすびの里(殿塚治理事長)が、日本財団の支援を受けて、空き店舗を一新。ちゃぶ台を骨董品店から探し出して座敷に据え、メニューも同法人の就労センターで働く障害者が作るうどんを中心に、栃木らしい食材をそろえた。福祉とまちづくりの精神が合致した新店舗の誕生に関係者の期待は高い。 |
レトロ感覚で、座敷にはちゃぶ台が置かれている なすび食堂は木造2階建てで、広さ約100平方メートル、客席は30席。元は昭和2年に建てられた塩乾物商「嶋田屋」の店舗で、09年12月に市の歴史的建造物に指定された。持ち主が郊外に移り空き家となったため、障害者が働ける食堂として、同法人が改装に乗り出した。資金は、伝統的な建物を社会福祉施設として活用する、日本財団の「もったいないをカタチに」のモデル事業として支援を受け、また市の歴史的町並み景観形成補助金も利用した。 巴波川では、土蔵巡りの遊覧船も 栃木市は、朝廷からの勅使(例幣使)が日光東照宮に参向する道筋にあたり、宿場町として栄える一方で、この例幣使街道と並行する巴波川(うずまがわ)の舟運が物流拠点となり、豪商の白壁土蔵が並ぶ「蔵の街」としても栄華を極めた。この街並みの雰囲気に合わせて、なすび食堂はちゃぶ台をはじめガラス戸、障子、建具など内装も“昭和のたたずまい”にこだわった。余談だが、通りを隔てた先のレストランの建物は、映画「オールウエイズ〜3丁目の夕日」で銀座にある宝石店として登場したところという。 イナリ付き栃木うどん。左は注文品を待つまでのサービス前菜 メニューは地場産の食材にこだわった。「栃木風田舎うどん」(780円)は地場の豚肉、ナス、ニンジン、玉ねぎの汁に、特産の干ぴょうを巻いたイナリ付き。同法人で生産されたイチゴで作った「苺氷」(250円)はデザートとしておススメ。かつては同市の給食に出ていたという鮫のフライや漫才で有名になったレモン牛乳もある。今、栃木の人は四季折々に何を食べていたか、五目飯か赤飯か、それをカタチにした「歳時記定食」を研究中という。 現在の従業員数は7人で、うち2人は知的障害者。皿洗いや盛り付け担当だが、「楽しいですね、忙しいのは大歓迎です」と笑顔を見せた。店長の竹島貞雄さんはホテルのフロント業を10数年勤めた接客のベテラン。「店舗のハード面は理事長らが整えてくれた。私はソフト面で、入ってみたくなる店、おいしい店、応対のしっかりした店を目指しています」と話した。「製麺や箸を袋に入れる作業は他の施設の障害者が担当している。今はお客に覚えてもらう助走期間ですが、将来は障害者の働き手を増やし、この歴史の町にマッチした、栃木らしい個性をもった店にしたいですね」と殿塚理事長は抱負を語った。(平尾隆夫) |