手話等による受験対策授業が開講 大学受験を目指す聴覚障害者のために [2010年06月24日(Thu)]
現在、ろう者の進学率は全国平均で約16%程度と極めて低い。大学受験に臨む聴覚障害学生に対するサポート体制がろう学校、大学側等に整っていないからだ。この問題を解決しようと、同大学は昨年10月に日本財団の支援を受けて聴覚障害学生支援プロジェクトを立ち上げ、情報保障をつけた授業を開始した。校外で開講したこの受験対策授業もその一環として行われたものだ。
2人で行われるパソコン通訳 授業には手話だけでなく、パソコン通訳も用いられた。字幕速記者が講師の発話内容を瞬時にパソコンに打ち込み、それが教室の前のスクリーンに投影されるという仕組みである。手話のわからない生徒はこのスクリーンを見て授業を受けた。さらに目も見えず、耳も聞こえない生徒には手で触って通訳を受ける「触手話」という方法が用いられ、それぞれの生徒の要望にこたえていた。 触手話による通訳 「聴者(聴覚に障害がない人)の講師と、ろう者の生徒との調整が難しい」と語るのは通訳者の一人である宮原麻衣子さん。聴者である講師は、ろう者が授業内容を本当に理解しているのかどうか判断するのが難しい。通訳者は講師の発話内容を通訳するだけではなく、つねに先生と生徒の間にたって生徒が内容を理解できるようにサポートしなくてはならない。授業中、通訳者から講師にアドバイスをする姿もしばしばみられた。 授業を通訳する宮原麻衣子さん 通常の高等学校やろう学校では、ろう者の生徒は読唇術(唇の動きから話者の発話内容を読み取る技術)を使って授業を受ける。しかしそれだけでは先生の話すこと全てを理解するのは難しく、授業についていけなくなる生徒も多い。そのような場合、自分で教科書や参考書を読んで自習しなくてはならないため、学校で周囲から孤立してしまうことも少なくない。同プロジェクトを担当する日本社会事業大学の斉藤くるみ教授は「ここの授業に通う生徒は、授業内で内容を理解できたことに驚き、とても喜んでいる」と話す。 この手話等による受験対策授業は6月4日から8月6日までの毎週金曜日(18時〜21時)、新宿永和ビル地下会議室で行われる。(宇田川 貴康) |