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リスク・アプローチの手法について(4)[2016年05月13日(Fri)]
2016年5月13日(金)
 おはようございます。今朝も良い天気です。昨日は、夏日になったところも多かったのではないでしょうか。さて、先日、成年後見の研修で認知症のお話を聞く機会がありました。認知症の方の実情と家族や施設の対応について、知ることができました。そこでわかったことは、認知症の特徴を踏まえて対応すべしということです。たとえば、食べたことを忘れてすぐに飲食を要求する過食症については、その要求に応じても問題なく、むしろそれすらも要求せず、寝たきりになった方が家族は大変ということです。これについては、別の機会でお話ししたいと思います。今日も元気で行きましょう。

(要旨)
@まずは監査計画において重要性の原則を適用する
A次に監査の実施段階で重要性の原則を適用する
B最後に監査報告段階で重要性の原則を適用する

 さて、本日のテーマは「リスク・アプローチの手法について(4)」です。前回、リスク・アプローチの手法として、自治体や非営利法人の特性を勘案した重要性の原則を適用する必要があることをお伝えしました。今回は、どういう局面で重要性の原則を適用するかです。

@まずは監査計画において重要性の原則を適用する

 最初に監査計画を策定します。監査計画とは、その年度初めに今年は何を重点においたテーマを設定し、どこを監査対象にするかの計画を考えます。そして監査の日程や項目を作成します。監査の事業計画みたいなものですね。

 すでにお伝えしたように、自治体や非営利法人の監査の範囲は会計監査だけでなく、業務監査も含むため広範囲です。このため、限られたリソースで監査を効率的効果的に進めるためには、やみくもに行ってもダメです。そう、監査にも当然に戦略がすごく重要になるのです。

 そこで、重要性の原則の登場です。広範囲な監査対象の中から絞り込みを行う際に、過去の監査結果や最近の情勢などと併せて、どこに問題(リスク)がありそうかという当たりを付けるのに金額的重要性や質的重要性を勘案して、監査対象を考えます。

 一定の監査結果を出すのに、この当たりを付ける前段の計画がとても重要です。つまり、この辺に問題(リスク)がありそうだということを確認するために、何が重要であるかないかを考え、それを確かめるプロセスを計画に落とし込みます。

A次に監査の実施段階で重要性の原則を適用する

 監査計画ができると、その計画に基づき監査を実施します。その過程で、監査結果を出すためにどんな監査項目に対してどのような監査手続を行うかを決定して行きます。その際にも、重要性の原則を適用します。

 限られた時間で監査をしますので、この辺に問題(リスク)がありそうだという監査項目を優先して監査します。ここで、金額的重要性や質的重要性を勘案して優先順位を決定するのです。たとえば、契約事務を管轄する部署であれば、数多くの契約案件の中から、一定金額以上の案件を抽出します。

 抽出された一定金額以上の案件を集中的に監査することで、そこで大方の契約事務の範囲をカバーすることができます。もちろん、抽出されなかった案件に問題があることもあり得ます。

 しかし、リスク・アプローチの考え方からすれば、ある程度のリスクはやむを得ません。リスクをすべて抽出することは現実的に困難だからです。ただし、そうしたリスクもある程度カバーすることも必要ですが、これについては別の機会にお伝えしたいと思います。

B最後に監査報告段階で重要性の原則を適用する

 監査実施をした後は、監査結果をとりまとめます。この段階でも重要性の原則を適用します。監査結果は案件の大きいものから小さいものまで様々です。

 その中から、今後の対応や監査結果を公表する場合の影響度などについて、やはり金額的重要性や質的重要性を勘案して、監査結果として取り上げるのかどうかの優先順位を決定するのです。

 たとえば、金額的重要性が小さい旅費交通費の誤りでも、そこに不正や意図的な処理がある場合は、これを監査結果として取り上げることがあります。

 以上、重要性の原則を適用する局面は、監査のすべての過程で発生します。監査人は、あらゆる段階でこの重要性の原則の判断を迫られています。そうした適切な判断をするためにも専門的な能力と経験が求められるものと言えます。

 では、この重要性の原則を適用する際に、どこに問題があるかという当たりを付けるリスクをどのように見て行けばよいのでしょうか。次回に続きます。
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