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リスク・アプローチの手法について(3)[2016年05月06日(Fri)]
2016年5月6日(金)
 おはようございます。今朝は昨日までの晴天と打って変って曇り空です。週末は崩れそうな感じです。昨日は神戸のアースデイのイベントに行ってきました。知らなかったのですが、今年で9回目とのことです。知り合いのNPO法人がブースを出しており、古着回収のチャリティーをしていましたので、少しばかり持参しました。すごい人で、主催者の熱気もむんむんで、本当に熱い1日でした。今日も元気で行きましょう。

(要旨)
@自治体や非営利法人の監査における重要性とは
A自治体や非営利法人の監査では質的重要性の方をより重視する
B自治体や非営利法人の特性を勘案した重要性の原則を適用する

 さて、本日のテーマは「リスク・アプローチの手法について(3)」です。前回、リスク・アプローチの手法として、財務諸表監査における重要性の原則についてお伝えしました。金額的重要性と質的重要性について、重要か否かの判断を行う考え方に触れました。

@自治体や非営利法人の監査における重要性とは

 今回は、自治体や非営利法人の監査における重要性について深堀をしていきます。自治体や非営利法人の監査では、監査対象の重点が異なります。自治体では主に監査委員、非営利法人では監事が監査を行います。加えて、非営利法人では一定の要件を満たせば、外部監査として会計監査人の監査もあります。

 どちらも外部監査を除き会計監査と業務監査を行いますが、自治体の場合は業務監査が中心であり、非営利法人では会計監査が中心です。会計監査の場合は、財務諸表をメインに監査しますが、業務監査の場合は事務事業などの業務をメインに監査します。

 したがって、監事が行う会計監査は通常、前回お伝えした財務諸表監査における重要性の原則を適用して、金額的質的に重要な影響を与える科目について監査を行います。

 これに対して、自治体における監査委員の監査は、事務事業などの業務をメインに監査しますので、法令等や経済性・効率性・有効性の観点から、金額的質的に重要な影響を与える事務事業について監査を行います。

A自治体や非営利法人の監査では質的重要性の方をより重視する

 非営利法人でも比重は異なるとはいえ、業務監査もしますので、ここからは共通の問題として取り上げます。自治体や非営利法人の監査では、民間企業の監査と比べて質的重要性の方をより重視するのが実感としてあります。

 何故なら、監査対象としての財務諸表より、事務事業の方がはるかに対象が広く、適用される法令等も段違いに多いからです。このため、監査の守備範囲が膨大になることが通常であり、そこから監査対象のリスクを評価するのに、質的重要性の方を重視することが結構あります。

 また、事務事業の財源として、税金が投入されていることから、金額的重要性がなくても、住民の関心事には一定の配慮が必要となります。たとえば、人件費や旅費交通費に対する支出を監査する際には、手当や交通費の妥当性を見るのにかなり小さな金額でも取り上げることがあります。

 それは、税金で公務員の給料や交通費の支出をしている関係で、わずかな金額の誤りや不当な手当の支出については、住民の厳しい目があるからです。そうするとたとえ数千円でもうっかりミスはもちろん、意図的な不正支出には目を光らせる必要があります。

B自治体や非営利法人の特性を勘案した重要性の原則を適用する

 このように、民間企業の監査とは同じ部分の重要性の原則を適用することがある反面、自治体や非営利法人の特性を勘案した重要性の原則を適用することも検討しなければなりません。この辺は、行政の仕組みや実態を反映したものとなりますので、重要性の原則の適用も応用が必要です。

 民間企業とは異なる自治体や非営利法人の特性は、やはり現場を経験しないとそう簡単には理解と把握はできません。ここが、民間企業の監査にはない重要性の考え方であり、自治体や非営利法人の実態を知らないと思わぬ所で足元をすくわれます。

 逆に、そうした自治体や非営利法人の実情を知ることができれば、いわゆる監査における目利きが出来てきますので、実態を踏まえた監査が可能となります。自治体や非営利法人の監査の難しさでもあり、特性でもあります。

 では、自治体や非営利法人の監査をする際に、どういう局面で重要性の原則を適用するのでしょうか。次回に続きます。
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