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2020年10月06日

第 3 回手話学コロキアム「学校・家庭内におけるフィールドワーク研究」を開催しました

【第 3 回手話学コロキアム「学校・家庭内におけるフィールドワーク研究」を開催しました】

去る 9 月 27 日(日)関西学院大学手話言語センター主催の手話学コロキアムをZoom(ウェビナーおよびミーティング)で行ないました。この手話学コロキアムは、手話使用者に手話研究の意義や魅力を伝えることを目的にし、昨年より開催されたもので、第 3 弾となる今回は「学校・家庭内におけるフィールドワーク研究」というテーマで、金沢大学の武居渡先生と宮城教育大学の松ア丈先生をお迎えし、講演やワークショップを行ないました。
第1部 60 名、第2部 20 名の定員が、受付開始からわずか1日で定員に達し、関心の深さを感じました。
第1部の講演は Zoom ウェビナー形式で行なわれ、武居先生からは「手話獲得研究の方法論」と題し、未就学の高齢ろう者の姉妹が家庭や地域で使用しているホームサインの研究事例を通して、研究手法を分かりやすくお話していただきました。実際の事例の中で、指差しや身振りをどのように数値化し、分析していくかなど具体的なお話があり、とても参考になりました。
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参加者の感想を一部紹介します。
・初心者にもとてもわかりやすいお話でした。もっと手話分析の方法論について学べるところが増えるといいなと思いました。
・大変わかりやすいご説明で、研究の「面白さ」を十二分にお伝え頂きました。

松ア先生からは「ろう重複障害の子どもたちの手話をどう捉えるか」というテーマで、ろう重複の子どもの手話を分析した事例をお話していただきました。具体的なお話を通して研究手法や研究姿勢を示してくださり、「一見、曖昧や未熟に見える行動でもその人なりの秩序がある」という言葉が印象的でした。
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参加者からも、
・先生の知見が広がり、先生のような分析や研究する方、専門家が増えること、そして日々格闘している私達のような現場の者に、ヒントを多く頂けるようになることを願っています。
・手話研究が教育現場でどのように役立てられているかが明瞭に伝わるご講演であったように思いました。
といったコメントをいただきました。
第2部は、Zoom ミーティングを活用し、ろう者グループと聴者グループに分かれ、それぞれ講師を囲んでワークショップ(ディスカッション)を行ないました。
各グループで様々な質問や議論が飛び交い、時間がいくらあっても足りないほど大いに盛り上がりました。
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以下、参加者の感想(一部抜粋)です。
・オンラインでの初めての感覚で、講師交代で話せるなんて良いと思いました。
・第一部の研究方法だけでなく、第二部で研究者自身の考え方をも聞けたことが私にとっては大きいです。
・大変有意義な時間でした。
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ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
posted by 小野田 at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

2019年12月10日

講話会2019を開催しました【後半】


【講話会2019 を開催しました – 後半】

前半の講演に引き続き、対談の報告です。関西と関東、どちらもフロアからご質問・ご意見を
いただき、講師のお2人がそれに答えながらディスカッションをするという流れでした。


様々なご質問がありましたが、やはり皆さんが関心を持たれた一番のテーマが「アイデンティティ」「母語」「第一言語」ではないかと思います。
マーハ氏も田門氏も上記に関しては共通の認識を持っておられ、
アイデンティティとは様々な要素(例:生まれた町、宗教など)で作られるものであって、国が決めるのではない、むしろ自分のアイデンティティは自分で決めることができる、ということを強調されていました。

そして、人工内耳手術を受けたお子様をお持ちの保護者から「音声で育てるのか、手話で育てるのか、と医者から言われたが、なぜどちらか一方を選ばなければならないのかと疑問に思った」というコメントに対し、マーハ氏、田門氏それぞれに、
「自分の言語は他人が決めるものではない。自分で決めていい」「母語はいくつあっても良いし、仮に話せなくても自分が母語と思うのならそれが母語である」というお答えをされていました。
アイデンティティや母語の問題は、多言語環境のもとに生まれ、またマジョリティ言語に常に囲まれている状況下におられるお2人には、身をもって感じられることなのかもしれません。

また、「本当に手話言語法は必要なのか」というご意見もありました。現在の日本の状況(ろう学校教員が手話学習をする機会が限られている、ろう児の言語獲得支援やろう児を持つ親の手話学習支援の整備が不十分である、など)を考えると「とりあえず法律だけ作っても意味がないのでは」という見解に対し、田門氏は、講演でもテーマとなった「学習指導要領」を例に挙げ、
「様々な立場の人の要望を一度に叶える学習指導要領を作ることは難しく、ボトムアップ方式では限界がある。むしろ、トップダウン方式で、法律を先に作り、それを手掛かりとして学習指導要領を作るという方向も考えられるのではないか」とご自身の見解を述べられました。


多言語社会のあり方、またそれを保障するような法律を制定すべきか否か、という議論を通して、これからの我が国における「言語政策」「言語教育」の課題が浮き彫りになったような気がしました。

関西・関東共にこうしたフロアからの積極的なご発言のおかげで、活発な対談の時間を持つことができたと思います。


講話会にお越しくださいました皆様、本当にありがとうございました。
また、情報保障をご担当いただきました、英日通訳の皆様、ろう通訳の皆様、読み取り通訳の皆様、文字通訳の皆様、ありがとうございました。


当センターでは、今回の講話会の報告書を作成し、発行する予定ですので、詳細はそちらをお読みいただければと思います(報告書は完成次第当センターホームページやSNS等でお知らせいたします)。

当センターの今年度のイベントはこれにて全て終了いたしました。来年度も様々な内容をお届けすべく、只今準備をしておりますので、これからも当センターHPやSNSでの情報をチェックしていただけましたら幸いです。
​今年もあと僅かになりました。良いクリスマスと新年をお迎えください。

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posted by 小野田 at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

講話会2019を開催しました【前半】


【講話会2019 を開催しました – 前半】

去る11月16日(土)に梅田センタービルで、12月1日(日)にステーションコンファレンス池袋で、2019年度講話会を開催しました。
関西と関東合わせて、100名を超える方々にお越しいただきました。

今回のテーマは「言語の多様性」です。「多様性」や「ダイバーシティ」という言葉はよく聞かれるようになった昨今ですが、日本にいる大多数が、「日本という島国に生まれ、日本語を母語とする両親の元に生まれた聞こえる人」であることを考えると、言語に対する「多様性」については、なかなか意識を向ける機会が少ないのではないかと思います。
そこで講話会では、社会言語学者のジョン C. マーハ氏(国際基督教大学)および、ろう者で弁護士である田門浩氏を講師に迎え、それぞれご講演をいただき、そしてフロアからの質疑応答も含めた対談を行ないました。今回は「前半」として、講演の様子を報告します。


まずはマーハ氏による講演、題して「手話言語とは –On Sign Language」です。
マーハ氏が初めて日本に移り住まれた時、学生があまりにも「言語の多様性」について無頓着で、手話についても何も知らないという事実に驚かれたそうです。
ヨーロッパなどの国では、国勢調査の中に「言語」に関する質問がここ2,30年で増えているのに対し、日本の国勢調査には言語に関する質問が一切なく(2015年現在)、そもそもそこから、国内における言語使用に対する意識が薄いことを強調されていました。

講演では言語についてのクイズシートが用意されていて、それに基づいて参加者一人一人が、自分の言語について見つめなおしディスカッションをする時間も設けられました。

例えば、
・あなたの言語は語彙と文法がありますか?
・あなたの言語は多様性を持ちますか?(方言、職業による言葉遣い、敬語など)
・あなたの言語は自己意識を形成しますか?
などです。

「言語とは何か」について、人の言語と動物のコミュニケーションシステムとの違いや、方言などの例を取り上げて分かりやすくお話しいただきましたが、その中でも、単民族国家という意識が高い私たち日本人にとって、「言語は民族性や宗教に限定されない(例:イスラエル手話は、アラブ人もユダヤ人も使用する)」、「言語はある集団の持ち物ではなく、社会の共通財産である(例:日本語は日本人のものだけではないし、手話言語はろう社会だけのものではない)」というご指摘は、認識を新たにするよい機会になったのではないでしょうか。

様々な言語が社会に認知されるために、「マイノリティ言語」という言葉は使わず、”lesser-known language (あまり知られていない言語)”と呼ぶようになった欧州連合(EU)。
日本社会にある様々な言語を可視化することが、言語の平等性を築く第一歩になるであろうという気付きを与えてくださった講演でした。


続いては、田門氏による講演、題して「言語としての手話の認知 過去・現在・未来」です。「全日本ろうあ連盟手話言語法案に関する5つのポイント」、「ろう者のアイデンティティ」、「ろう社会」が講演の主なポイントでした。そして、この3つのポイントは密接に関係していることが伺えました。
田門氏によると、手話言語法が必要であると考える最大の意義は、「全ての聴こえない人、つまり、生まれつき手話を身につけた人も、成人してから手話と出会った人も、人工内耳を装用しているろう者もそうでないろう者も、言語的アイデンティティが尊重され、権利が認められる必要がある」ということです。

また、言語学者の Carol Padden 氏が述べるように、ろう社会の中には様々な文化グループが存在し、言語も多種多様であると考える方が、むしろ妥当ではないかということでした。
上記から、聴者もろう社会の一員であると考えると、ろう社会とはそもそも多言語社会ということになり、日本社会全体の多言語社会化を目指すのであれば、ろう社会の多言語社会化も進めるべきではないか、と述べられました。

ただし、その前提として日本手話言語が尊重されなければならず、ろう教育においても日本手話言語の文法をきちんと指導することが求められる、ということを強調されたうえで、「手話か手話言語か」「自然言語か人工言語か」「日本手話言語と日本語対応手話は区別すべきか」という事について、今後実質的な議論が必要であるということで講演を締めくくられました。

マーハ氏の「言語は社会の共通財産」という概念、田門氏の「ろう社会はそもそも多言語社会である」という概念が、「言語の多様性」を考えるキーワードとなるのではないかと思いました。

参加者からのアンケートを一部紹介します。
・アイデンティティそのものについて深く考えることや話を聞くことがあまりなかったので、勉強になり、良かった。
・「言語の共有」という概念、人類共有の財産、限られた者だけの財産ではないというお話がとても印象に残っています。新たな視点をいただいたように思いました。
・法の仕組みの考え方、大いに参考になりました。
・ろう学校、教育のありかた、手話の認知がもっと広まってほしいと思いました。

後半は対談について報告いたします。

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posted by 小野田 at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

2019年10月24日

第2回手話学コロキアムを開催しました

去る10月6日(日)、手話言語研究センター主催で「言語の海を航る」と題し、第2回手話学コロキアムを開催しました。6月に行なわれた「言葉の森にでかけよう」に続く第二弾になります。このコロキアムは、手話研究に関心を持つ手話使用者の方々が増えてもらいたいとの想いのもと、今年度から新たに始めた事業になります。今回は、兵庫教育大学の鳥越隆士先生と筑波技術大学大学院修士課程の矢野羽衣子先生をお招きし、ご自身のフィールドワーク研究についてお話をいただきました。前回も盛会でしたが、今回も35名(内、ろう者10名)のご参加をいただき、非常に活発な学びの場になりました。

 まずは、矢野羽衣子先生よりご自身が生まれ育った愛媛県大島の宮窪地域や奄美大島古仁屋地域の手話についてフィールドワークのご経験をお話いただきました。手話を引き出すためのツールによっては相手に不快な思いをもつことや地域の自然な手話を収録したくても、相手をみて日本手話に合わせてしまう状況があることなど、実際にフィールドワークを行う中での経験談をきくことができました。そして、最後に「フィールドワークをすることにより不就学ろう者や地域共有手話使用者の生活や考え方について、自分が学ぶ機会にもなり成長につながった」とフィールドワークの感想を述べられていました。
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矢野羽衣子先生 講演

次に兵庫教育大学の鳥越隆士先生より、手話との出会いやその後、フィールドワークをするに至った経緯からお話いただき、老人ホームや教育現場、沖縄の離島と幅広くフィールドワークをなされてきたご経験をお話いただきました。それらのフィールドで得られた知見は、ホームサイン、手話の喃語や幼児語などろう児の手話言語の獲得、難聴学級での難聴児たちが手話を使用する状況など、いずれも示唆に富むものばかりでした。実際にフィールドに入らないと得られない様々な情報をお聞きし、フィールドワークの面白さや重要性を再認識させていただきました。
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鳥越隆士先生 講演

その後、グアテマラ(カクチケル語)や喜界島(喜界語)でフィールドワークに取り組んでいる今西祐介(本学総合政策学部准教授、手話言語研究センター研究員)がモデレーターとして入り、鳥越先生、矢野先生のミニトークを行いました。フィールドワークの難しさについて、矢野先生からは、手話を引き出すために例文を提示しても、それが馴染みのないものであれば「そもそも、そんなことはない」と一蹴されてしまい、言語を引き出す手法に苦労をするという話があったり、鳥越先生からは聞こえる者として、社会のマイノリティーであるろう者に接する際の信頼関係の構築の難しさや、フィールドワークの成果をどのように還元すればよいのかという研究の終わり方の難しさなど、フィールドワーカーの生の声をお聞きすることができました。トークが進むにつれて、少数言語を対象とする研究の中で、日本語や日本手話の影響が否めないのが現実であり、それも含めてその地域の言語となっている事実を言語学者としてどのように受け止め、分析をすすめていくかといった研究のスタンスの根本に関わる問題提起までなされました。
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ミニトークの様子

ミニトーク終了後、参加者全員でディスカッションの時間を設けました。聴者のグループとろう者のグループに分かれていただき、30分で講師が入れ替わるという形で、活発な質疑やコメントが交わされました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
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ディスカッションの様子

 矢野先生が講演された「ろう者自身の言語学者が少なく、ろう者が主体となって研究に参加する必要性がある」という言葉が印象的でした。ろう者の皆さん、一緒に手話研究を盛り上げていきましょう。また聞こえる聞こえないに関係なく、ひろく手話に関する研究に関心が高まっていくことを期待したいと思います。
 鳥越先生、矢野先生、素晴らしいご講演をありがとうございました。また、手話通訳の皆さん、長時間にわたる情報保障お疲れ様でした。
 手話学コロキアムは、今年度はこれで終了です。次年度にはまた新しい内容を企画して参ります。ご期待いただければ幸いです。

posted by 小野田 at 12:42| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

講話会2019開催のお知らせ

手話言語研究センター主催 2019年最後のイベントは、毎年恒例の「講話会」で締めくくりたいと思います。

講演会では、これまで「手話言語習得(2016年度)」「聾史(2017年度)」「ろう者学と文化的対処能力(2018年度)」と様々なテーマを取り扱い、毎回講演と対談という形式でとり行って参りました。2019年度もこの方式を踏襲していきます。
今回は「言語の多様性」をテーマに、社会言語学者のジョン・C.マーハ氏、およびろう者の弁護士の第一人者である田門浩氏をお招きし、お二方の講演および対談を企画しました。

「言語の多様性ってどういうこと?」「言語の権利って何?」「手話言語とどのような関連があるの?」そんな疑問に答えてくれるイベントになること間違いなし!

毎回好評をいただいていることから、今回も関西(11/16:大阪)と関東(12/1:東京)の2箇所で開催いたします!

詳細はこちらのチラシをご覧ください→https://is.gd/CP0oYy

たくさんのお申込みをお待ちしています!
※事前申込制、参加費無料
※英日通訳、手話通訳、要約筆記が付きます

お申込みURL:
・11/16(土)関西講話会→https://forms.gle/wdAUBW2ZatirbrSv8
・12/1(日)関東講話会→https://forms.gle/UwbPJNVpeSUrpX837
posted by 小野田 at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

2019年10月15日

手話通訳研修事業「あなたの知らない手話通訳の世界〜シンポジウムと模擬法廷通訳演習〜」を開催しました

去る9月15日(日)、手話言語研究センターと兵庫県手話通訳士協会の共催事業「あなたの知らない手話通訳の世界 〜シンポジウムと模擬法廷通訳演習〜」を、甲南大学岡本キャンパスにおいて開催しました。3連休の真ん中にも関わらず、午前の部(定員100名)、午後の部(定員60名)ともに定員に達し、大勢の方にお集まりいただきました。
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開会の挨拶

この「手話通訳研修事業」は、手話言語研究センターとしては初の事業となります。専門領域に特化した手話通訳について議論ができる場、技術研磨ができる場を提供したいという思いから本事業を立ち上げ、そして長年にわたり法廷通訳に特化した手話通訳士現任研修を実施されている兵庫県手話通訳士協会との共催がこの度実現しました。そして、いつもその手話通訳士現任研修の講師をされている、ご自身も弁護士の、甲南大学法科大学院教授の渡辺修(ぎしゅう)先生の力をお借りすることができました。何度も会場下見やリハーサルを重ね、手話言語研究センターとしても今年度大きなイベントの1つとなりました。
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渡辺修先生

まず午前のシンポジウムは、金城学院大学教授の水野真木子先生をモデレーターに迎え、5人のシンポジストにご登壇いただきました(シンポジストについての詳細は一番下をご覧ください)。日頃手話通訳を利用している、ろう当事者(竹内氏)、同じく手話通訳を利用する聴者の弁護士(渡辺先生)、その双方の橋渡しをする手話通訳者(酒井氏、多賀氏、池上氏)という、異なった立場のシンポジストが集い、「コミュニティ通訳」という大きな枠組みの中で、「人権を保障する」という意味での通訳の責務や、「異なる言語を持つ双方を調整する」という意味での通訳の責務、そして、「支援者」ではない手話通訳者がどこまで双方の間を取り持つのが許されるかについて議論が交わされました。
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水野真木子先生

日頃手話通訳として現場に出ておられる参加者の方は、共感できる部分がたくさんあったでしょうし、これから手話通訳を目指そうとしておられる参加者の方は、現場の声をたくさん聞くことにより、自分が目指す手話通訳像が浮かび上がったのではないでしょうか。
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シンポジウムの様子

午後からは法廷通訳演習です。
まずは、弁護士の栗林亜紀子先生より、「二つの手続き –民事と刑事」というテーマで、民事事件と刑事事件それぞれの手続きや裁判での流れをご説明いただきました。
特に印象に残ったのは、手話通訳などの、いわゆる「通訳人」の持つ役割についてでした。
特に刑事事件においては、ろう者と直接のやり取りをしてはならず、通訳行為に徹するということ、そして、話者の話した内容を「忠実に、正確に」訳すことが大変重要であり、内容の増減、変更、省略などはしてはならないということでした。
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栗林亜紀子先生講義

その後、事前に通訳演習にお申込みをいただいた参加者の方々が順番に、与えられた場面に沿って通訳演習を行いました。例えば「黙秘権」の説明1つにとっても、ただ説明文通りに手話に変換するのではなく、その概念を正確にろう者に伝えるための等価訳が求められます。
演習は甲南大学内にある法廷教室で行われ、本物そっくりの雰囲気に、通訳者の方々も、傍聴席で様子を見ておられた参加者の方々も幾分緊張されている様子でした。
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法廷通訳演習の様子

各場面での通訳演習が終わると、ろう者の評価者として、午前に引き続き竹内幸代氏、そして本センターの前川和美が、通訳者にコメントやアドバイスをし、またろう者の被告人役の方や弁護士の渡辺先生および栗林先生からも、法廷の場面で通訳者に求めること(立ち位置は自分で決めて交渉する、勝手に被告人とやり取りをしてはいけない、など)についてのアドバイスがありました。
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法廷通訳演習の様子

朝の10時半から夕方の4時半という長丁場でしたが、改めて手話通訳が担う責務や目標言語への通訳スキルについて、参加者の皆様と一緒に考える貴重な時間になったのではないかと思います。
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法廷通訳演習の様子

本イベントにご登壇いただきましたすべての皆様に感謝申し上げます。
また、法廷通訳という非常に高度な知識と振る舞いが求められる場で通訳演習にご参加いただきました皆様、お疲れ様でした。
そして、今回は午前の部、午後の部ともに、締切日を待たずとしてお申込みが定員に達しました。改めて皆様の「手話通訳」に対する関心の高さが伺えました。
ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。
そして、今回定員の関係でお越しいただけなかった皆様、次回のイベントでお会いできることを楽しみにしております。
最後に、本イベント共催の兵庫県手話通訳士協会の皆様に感謝申し上げたいと思います。

※アンケートの内容は後日アップいたします。

〜登壇者一覧(敬称略)〜
午前 シンポジウム 
<シンポジスト>
・渡辺修(ぎしゅう):甲南大学法科大学院教授、弁護士
・竹内幸代:西宮市聴力言語障害者協会ろうあ部会 手話奉仕員養成講座講師
・酒井智子:伊丹市設置通訳者
・多賀真理子:看護師、手話通訳士、「聴覚障害者の医療を考える会」
・池上睦:兵庫県手話通訳士協会会長

<モデレーター>
水野真木子:金城学院大学文学部教授、「法と言語学会」副会長

午後 手話通訳演習
<講師>
・渡辺修(ぎしゅう):甲南大学法科大学院教授、弁護士
・栗林亜紀子:弁護士
<評価者>
・竹内幸代:西宮市聴力言語障害者協会ろうあ部会 手話奉仕員養成講座講師
・前川和美:関西学院大学手話言語研究センター 研究特別任期制助教
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2019年07月04日

ミニ講座を開講しました

【ミニ講座のご報告】
去る6月21日(金)関西学院大学西宮聖和キャンパス「リプラ」にて「手話とろう学校」と題し、大阪府立生野聴覚支援学校(以下、ろう学校)中学部の与那覇里美先生をお招きし、ミニ講座を開催しました。当日は20名の学生たちが参加してくださいました。
ご自身がろう者である与那覇先生から、ろう学校の歴史と現状に加え、様々な設備(チャイムのランプ、災害時用モニター、音声を聞き取りやすくするためのループ)、さらにキュードスピーチや言語指導(発音の訓練)の様子などのお話があり、ろう学校の実際を知ることができました。ろう児に発音や聴覚活用などの手段を可能な限り補償するとともに、手話を大切にしながら『わかる授業』をめざしていることも分かりやすくお話してくださいました。最後に与那覇先生のおっしゃった「ろう学校とは、「ろう」の子ども達の将来をともに築く場所である」という言葉はとても印象的でした。
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講演の後は、本センター研究特別任期制助教の前川による日本手話体験講座を実施しました。全く音声を使わない講座は参加した学生たちにとって新鮮だったようで、みんな目を輝かせて楽しく手話を学んでいました。
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 ご講演くださった与那覇先生、本当にありがとうございました。手話通訳の皆さん、要約筆記をしてくださった関西学院大学の学生の皆さん、会場である「リプラ」のスタッフの皆さん、ご参加くださった皆さまに、感謝申し上げます。
posted by 小野田 at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

2019年07月02日

手話通訳研修事業「あなたの知らない手話通訳の世界〜シンポジウムと模擬法廷通訳演習〜」開催のお知らせ


 関西もようやく梅雨入りし、毎日雨模様ですが、紫陽花がより映えてキャンパス内を彩ってくれています。
さて、手話言語研究センター2019年度の事業としては第3回目となりますイベントのお知らせです。
この度、兵庫県手話通訳士協会との共催で、「手話通訳研修事業」の開催が実現の運びとなりました。題して「あなたの知らない手話通訳の世界 〜シンポジウムと模擬法廷通訳演習〜」です。
タイトルを見ると、現在、法廷手話通訳として活動されている方々を対象とした専門性の高いイベントのように思われるかもしれません。もちろん、法廷で活躍なさっている方も対象ですが、それに留まらず、手話通訳に興味のある方々、手話通訳を利用したことのあるろう者の方々、学生・院生の方々など、手話(通訳)の経験を問わず幅広い方々を対象としています。
法廷手話通訳を取り上げることで、手話通訳の現状と課題についてそれぞれのお立場で考えていく内容を考え、今回は2部構成で企画しました。

まず午前の部では、「手話通訳 知ろう・語ろう・考えよう」と題し、金城学院大学教授の水野真木子先生をモデレーターにお迎えし、手話通訳者・手話通訳利用者・手話通訳コーディネーター・弁護士と、「手話通訳」という領域に様々な立場で関わっている方々をシンポジストに迎え、「手話通訳のあり方」と課題について意見交換をしていただきます。

午後の部で法廷通訳に焦点をあてていきます。まず甲南大学教授の渡辺修先生より「司法通訳の流れ」と題して、手話通訳者がどのような現場に立ち会っていくのか、全体的な流れをお話いただきます。その後実際に法廷に見立てた教室を用いて、模擬法廷通訳の演習を行い、法廷場面での通訳の在り方について考えます。演習には見学だけでもOKです。法廷手話通訳ってどんなもの?という関心のある方も大歓迎です。

詳細は、以下またはチラシをご覧ください。
たくさんの方々の参加をお待ちしております!

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【イベント名】あなたの知らない手話通訳の世界 〜シンポジウムと模擬法廷通訳演習〜
【共催】関西学院大学手話言語研究センター 、 兵庫県手話通訳士協会
【日時】2019年9月15日(日) 10:30-16:30(10時受付開始)
【会場】甲南大学 岡本キャンパス
(阪急「岡本」駅より徒歩約10分、JR「摂津本山」駅より徒歩約12分
【参加費】午前の部:無料  午後の部:演習受講者、見学者共に1,000円(ただし、学生の方は学生証提示で無料)

【内容および教室】
<午前の部> 5号館2階522教室
10:30-12:00 シンポジウム「手話通訳 知ろう・語ろう・考えよう」
※定員100名
モデレーター:水野真木子(金城学院大学教授)
シンポジスト:
・渡辺修(甲南大学教授)
・竹内幸代(NPO法人手話教師センター)
・酒井智子(手話通訳士)
・池上睦(兵庫県手話通訳士協会会長)

12:00-13:00 昼休憩(各自ご用意ください。なお、近くに食堂や売店はございません。)
<午後の部>
※定員60名
13:00-13:30 イントロダクション「司法通訳の流れ」  (12号館2階会議室)
講師:渡辺修(甲南大学教授)
13:30-16:30 模擬法廷通訳演習 (12号館4階法廷教室)
講師:渡辺修(甲南大学教授)

【対象者】法廷や手話通訳に関心のある方どなたでも
【備考】手話通訳および要約筆記が付きます

【お申込み】
・お申込みURL
https://forms.gle/4zj79PcPwrn8vDkE9
・QRコードでのお申込み
→チラシ内のQRコードを読み取り、Google フォームにてお申込みください。
・Faxでのお申込み
チラシ裏面の申込書に必要事項をご記入のうえ、記載のFax番号までお送りください。

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2019年06月28日

第1回手話学コロキアムを開催しました

【2019年度 第1回手話学コロキアムを開催しました】

 去る6月16日(日)「言葉の森にでかけよう」と題し、2019年度第1回目の手話学コロキアムを開催しました。このコロキアムは、手話言語を取り巻く様々なテーマについて、いずれは自分で研究してみたいというモチベーションを持っていただくことを目的にしています。まずは、どのような研究があるか、その醍醐味や重要な点は何かを手話に限らず講師からお話をいただきます。今回のテーマは「フィールドワークによる言語の研究」。心配された雨も降らず、当日は16名の方々がご参加くださいました。
 今回の講師は、国立民族学博物館の菊澤律子先生と相良啓子先生。音声言語と手話言語のフィールドワーク研究についてそれぞれお話をしていただきました。
 まず、菊澤先生から「フィジー語の森に出かけよう!−「ことば」と「場」と「担い手」と−」というタイトルで、太平洋の島々で行なっている音声言語の言語調査の様子などのご講演がありました。先生のお話では、世界にはおよそ7000の言語があり、その中には教授法のない言語も多く存在しているそうです。
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 そのような言語を調査する手法であるフィールドワークでの、言語の記述について具体的なお話がありました。例えば、フィジー語で「私たち」という言葉には6種類もあるそうです。それらの意味を的確に把握していくためには、他の言語の使い分けの知識が役に立つとのことでした。そして、対象となる言語を使えるだけではなく、収集したデータを分析する力が必要であり、そのためにはろう者・聴者問わず研究に関心を持つ者が専門的にトレーニングを受けられる環境が必要であると述べられていました。最後に、自分の言語や国にはない経験、予期しない困難を解決していくこと、人との関わり、対象社会およびその社会を超えた貢献などフィールドワークの様々な魅力についてお話しくださいました。
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 次に、相良先生からは「手話の森にでかけよう−ろう者による言語のフィールドワーク−」というタイトルで、ご自身がろう者の研究者である立場からフィールドワークのご経験をお話しいただき、後半では、参加者によるグループディスカッションもありました。前半のお話では、イギリスのセントラル・ランカシャー大学で手話の類型論の研究に出会い、研究者となっていったご自身の経験や、データ収集にあたって協力してくださる方との信頼関係や同意書を取ることなどフィールドワーク研究の留意点や研究倫理についてのお話がありました。また、ご自身の手話の類型論に関するフィールドワークについてもお話しいただき、数や色彩、親族名称の語彙を引き出すゲームについて、実際の映像を交えながらご紹介いただきました。65192709_1128103194061896_3363770072140087296_n.jpg
 後半には、参加者が3つのグループに分かれ、フィールドワークで数、色彩、親族名称の語彙を調査する際に、対象者から語彙をどのようにすれば効果的に引き出せるか等、話し合いを行ないました。
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 菊澤先生、相良先生、素晴らしいご講義とワークショップをありがとうございました。また、手話通訳の皆さん、長時間にわたる情報保障お疲れ様でした。
 最後に、ご参加された皆様に感謝申し上げます。第2回のコロキアムは10月に予定しています。詳細が決まりましたら当センターのホームページやSNSでお知らせいたします。また、お会いしましょう。
posted by 小野田 at 12:25| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)

2019年03月06日

研究成果報告会を開催しました

【2019年2月24日(日) 2018年度研究成果報告会を開催しました】

去る2019年2月24日(日)、関西学院大学手話言語研究センター研究成果報告会を梅田キャンパスで開催いたしました。

今回は研究員2名と専門技術員3名が今までの研究の成果を発表しました。以下、簡単ですが要約したものをお知らせいたします。

(1)「関西学院大学の大学生を対象とした手話に対する認識の質問紙調査」(松岡研究員)によれば、人間福祉学部において「日本手話」の授業が開講され、2004年調査に比べ、手話が言語であるという認識が広まり、手話の授業についても肯定的な回答が増加する一方、関心や受講意欲の面では大きな変化はないという結果が報告されました。
(2)「日本手話授業における学生のエラーや学習方略に関する質的研究」(下谷専門技術員)では、人間福祉学部学生を対象とした学習者の手話の習得段階における具体的な状況の報告がなされました。
(3)「日本語と手話のバイリンガル・バイモーダルの子どもの発話に関する量的分析」(平専門技術員)において、バイモーダル児は様々な要因から言語ストラテジーとして日本語と手話を同時に使用する場合があることが示唆されました。
(4) 「視覚言語モデルからのアプローチによる日本の手話の分析」(川口専門技術員)の中で、視覚言語モデルについての仮説が述べられた後、日本手話の指差しの役割の分類や感情を表す手話表現の分類が提示されました。
(5)「日本手話の文末指さしに関する統語的研究」(今西研究員)では、日本手話の文末指差しに関する統語的研究のレビューを踏まえ、これまで日本手話の文末指差しは任意的と言われてきているが、Nullという設定を行うことで文法的に沿った形で出現する可能性が示唆されました。

手話言語学のみではなく多岐にわたる研究の報告が行われ、参加者からは「興味深い内容を聞かせていただき勉強になりました」「これまで手話にふれてこなかったので、全ての発表が新鮮でふれられたことが喜びです」などの声もきかれました。

お越しくださった皆様ありがとうございました。

今回の報告会をもちまして、今年度のイベントは全て終了いたしました。

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posted by 小野田 at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | (カテゴリーなし)