臨床の現場より E [2007年05月22日(Tue)]
先日、St. Jude病院の病棟担当のドクターから、骨髄移植を前にして白血病が再発してしまった患者さんについてある特殊な治療を試みたいのだが、それにあたって私達の研究室でよく使っている方法で準備を手伝って貰えないかとの依頼がありました。結局、技術的にクリア出来ない問題があって断念したのですが、非常に困難な状況になった患者さんを前にして、それでも何とかしたいという医療スタッフの思いは、国や病院が異なっても同じだなと感じました。
前回は、散漫にいろいろな事を書き過ぎました。小児救急についてはうまく伝わりにくかったかも知れませんが、トリアージという言葉を調べてもらえれば、もう少し理解して頂けるかも知れません。散漫ついでに書きますと、こちらにいても、日本の小児救急に関する話はインターネットを通じてたくさん入って来ています。ネットからだけでも相当深刻に感じますから、現場のリアリティは推して知るべしと思っています。行政が解決すべき大きな問題だと思っていますが、その中で心配な事があります。小児救急を求める声が大きい余り、小児がん患者さんに皺寄せが来るのではないかという点です。St. Judeの日本人仲間の間でも、出身施設などで、小児がん治療を専門にしていた施設やその担当医が新たに行政等の要請で小児救急の診療を開始したりする例を散見します。大学病院やその他の専門施設における小児がんの臨床は、決して片手間で出来るものではありません。一方で、小児救急も生半可なものではありません。業務を兼任することによる疲弊や、一般小児疾患の多くが感染症であることを考えると、小児がん患者さんの治療環境が後退するのではないかと危惧します。小児救急の問題解決の必要性に異論はありませんが、だからと言って、そのような治療環境の後退があってはならないと思います。 引用した化学療法剤投与におけるチェック体制の話は、前に勤めていた阪大病院でも、内科の一部で似たようなシステムが試み始められていたと思います。ただ、御多分に漏れず、予算もマンパワーも不足した大学病院ですから、その後継続されているのかどうか、小児科を含め他科にも運用が広がっているのかどうか、当時は難しそうに感じましたが、どうなっているでしょうか? さて、引用記事です。これが最後の引用になります。 [患者のサポート体制] St. Judeでは、患者及びその家族のサポート体制は非常に充実しています。まず、Behavioral Medicine(行動医学)という科があり、新患患者が来ると直ちにその科に属するソーシャルワーカーが患者のもとを訪れ、患者の家族背景(家族構成、患者の性格、保護者及び家族の教育歴や職業、経済的側面、患者をサポートできる親族の存在、宗教)などを調べ、個人に適したサポート体制を計画します。 チャイルドライフスペシャリストは、患者が子供らしく生き生きとした生活ができるような遊びや催し物などを通じてサポートします。人形を用いて、骨髄穿刺や腰椎穿刺、あるいは中心静脈管理の重要性を患者に教える遊びはメディカルプレイと呼ばれます。 St. Judeでは、2月あるいは3月のマルディグラ(Mardi Gras)、5月のシンコ・デ・マヨ(Cinco de Mayo)、10月のハローウィン、12月のクリスマスなどは非常に大きな病院のお祭りです。そして、患者の誕生日や、化学療法最後の日の“No More Chemo”パーティーは、チャイルドライフスペシャリストを中心に医療スタッフが突然患者のいる病室に“突入”し盛大に祝います。また、チャプラン(Chaplain)という宗教的なサポートを行う人たちもいます。なお、病名の告知は理解可能であれば原則として全例に行っており、これが患者と医療スタッフのコミュニケーションを比較的スムーズなものにしています。 その他、患者の病気が長期寛解に入り治療が終わると、医師とソーシャルワーカーが晩期障害の評価を行ったり、社会適応を助けたりする1年おきのクリニック(ACTクリニック)、年に1回小児悪性腫瘍の生存者が集う“Survivor day”、そして残念ながら亡くなられた患者の家族が集う“Day of Remembrance”もあります。 by Hiro, in Memphis |
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