人間ばかりの作品展
[2023年06月30日(Fri)]
さる6月11日、毎年恒例の総会・研修会を、近所の公民館で開催しました。
ゲストは、10年ひきこもった末に、自ら大阪に移り住み、カメラマンを目指しておられるNさんです。
去年、ひょっこり風月庵を訪ねてくださり、不登校・ひきこもり経験者を撮影させてもらっていますとの話に、私も撮影してもらったことがキッカケでした。
先ずは、卒業制作で発表された作品を、スクリーン画面に映し出しながら説明をしてもらいました。
ひきこもり経験者の写真と人物写真の間に、心の中を投影した様な物や風景の写真が映し出されました。
丁寧に感受されていて、素直に表現しようとする姿勢が強く伝わってきました。
ジンワリと心に染入るような作品と、その説明でした。
第1部はNさんの体験談で、不登校・ひきこもり時代からこれまでの経緯を、身近なエピソードを入れながら、言葉を選ばれ、ゆっくりと語りかける様に、お話しが進みました。
ひきこもり初期時代は、起き上がることが出来なくて、一日
中寝ていました。(横になっていた)
お母さんはずっと自分を支えてくれていたと思うのですが、
当時はそれに気付いていませんでした。
お父さんは、兎に角、恐かったです。
恐すぎて、死んだ振りをして、拒否していました。
ある頃から、いい意味で親が諦め、以前の親の雰囲気に戻っ
てきているのを感じ始めました。
買い物に誘われて、行かないといった時も、二人で平然と出
掛けて行き、帰ってきました。
そんな日常が、ゆっくりと、楽にさせてくれました。
カウンセラーさんに出会い、自分の気持ちや考えをそのまま
共感してくださり、誰かを怒る、腹を立てる、攻撃することが出来始めました。
自分の心に余裕が出てきたのでしょうか、お笑い番組を、楽
しめるようになり、第七世代の出現には、驚かされました。
そうこうしている内に、皆も楽しんでいるのだから、自分も
自分の気持ちを優先して、楽しみたいと言う気持ちが積み上げていったようです。
写真と出会い、自分のような者も、個性として「おもしろ
い!」と、明るく、いい意味で評価してくれる体験が増えていきました。
卒業制作の撮影を通して、自分の話で人の気持ちを動かせる
ことも、知りました。
自分は写真で何かが出きるという自己効力感を、はっきりと
感じることが出来たのです。
第二部は、参加者の自己紹介と感想や意見交換をします。
上映された作品の中でも、「2面性を捉えた川面」「防風林の中の草」「タンポポの綿毛」が心に残ったそうです。
感想では、「私は35歳に親に言えたので、20歳代で言えたことは凄い」「静かな、染入るようなお話・口調に引きこまれていました」「お笑いが好きで、お母さんと一緒によく観ていたの話が、印象に残りました」
質問では、あるお母さんから「来年はやりたいと言う言葉を信じても、先延ばしになり、不安になります」には、「今も、今日も頑張っていることを認めてもらいたい気持ちが隠れていますよ」「履歴書を書いたことが大きな一歩と認めてあげてください」との言葉に続けて、外出、仕事に行くことは、ずっと先の段階で、身近な一歩を大切にしてあげてください。
ひきこもることも、ある意味で、親と離れる、距離をもつことがよかったと思います。
今も、考える前に、とりあえず、動いてみよう、外に出てみようと思うようにしています。
小さなことも、自分で決めることが大事な一歩、一歩になっていくと思います。
ご本人の変化・成長が、分かり易い言葉で入ってきて、参加の皆さんも、各々の思いに納得されていました。
今も撮影は続けているので、いつかは「人間ばかりの作品展」を開催出来るように願っていますと、締めくくられました。