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「街場のメディア論」を読みながら・・・(3) [2010年12月02日(Thu)]
蝸牛随想(4)

「街場のメディア論」を読みながら・・・(3)

 さて、内田樹は、「街場のメディア論」第二講で、情報を評価するときの最優
先の基準を、「その情報を得ることによって、世界の成り立ちについての理解が
深まるかどうか」だと繰り返し書いています。そういう基準から言うと、メディ
アの価値が、もっぱらビジネス価値や利便性ベースで語られていることに危機感
を持っていると。一般的には「情報とは、その人や社会にとって有用な報せ」の
ことです。ただ、この有用性が単なる利便性やビジネス価値だけでは、根本的な
ことが欠落している言うのです。

 従って市民活動が扱う情報は、危機耐性のことも含めて、自前のメディアを必
要としてきました。マスメディアによる報道だけに頼るのでは、「場合によって
は、人の命や共同体の運命にかかわること」を伝えることはできません。だから
自分たちの手で管理できるメディアをつくることが重要でした。どんな運動体も
どんな市民の活動も、その視点から新しい世界の成り立ちを垣間見させ、人の命
や共同体の運命にかかわる情報を、自らの手でメディアをつくり、読者を創造し、
届けてきたのです。

 だから、フィリピンのミンダナオ島における戒厳令下でも、1976年、人々はマ
イクロメディア運動を起こし、「小さなメディアのあたらしいつかいかたをさぐ
り、だれもがそれをつかいこなせるような訓練のしくみをつくる」努力をしたの
です。

・黒板新聞
・ガリ版によるニュースレター
・調査と記録
・スライド
・自分たちでつくる演劇
・写真
・マンガ
・ポスター
・詩とソング
                    (「小さなメディアの必要」p74)

 このようなものがマイクロメディアとして例示されています。ひょっとすると
インターネットも印刷機もないような時代と地域の人々の想像力の方が、私たち
の想像力より豊かだったりします。メディアがインターネットへ収斂していくと
平行して、上記のような多様なメディア観は次第に薄れ、その潮流は枝分かれし
てワークショップ運動とでも呼べるような別の流れを形作ってきたのが、わが国
の現在ではないでしょうか。


 「街場のメディア論」第八講に、「拡がる「中規模」メディア」という節があ
ります。パーソナルメディアとマスメディアの間に広がる「特定の企業や業界、
特定の分野、特定の趣味の人たちなど、数千人から数十万人規模の特定層へ向け
て発信される情報」(佐々木俊尚著「2011年 新聞・テレビ消滅」文春新書)の
ことです。そのような規模のミドルメディアが拡がっているといいます。意見も
感覚も違う不特定多数の人々を対象とするマスメディアはどうしても「当たり障
りのないこと」を伝えることになってしまうわけです。その点、特定層へ向けた
発信が可能なミドルメディアは性質が違い、別の可能性があるという視点から、
内田のマスメディアに対する厳しい批判が展開されています。

 もともとNPOは、大きな社会と孤立した個人の間の中間集団です。問題解決
のための機能型組織であると同時に、ある属性やある困難を抱えた当事者を中心
としたコミュニティでもあります。存在自体がミドルメディアというの機能を持っ
ています。もうひとつ大事なことは、佐々木俊尚氏や内田樹氏の論では、読者数
がマスかミドルかの基準ですが、NPOの場合、読者ではなく、そのコミュニティ
の中に多様な当事者を含んでいることが特性として挙げられます。つまり情報を
制作し発信していく側の性質をどう活かすかということが重要ということです。

 そんなことを考え考え「街場のメディア論」を読んでいるところに、久米信
行さんがやってきました。11月28日に仙台市市民活動サポートセンターで開催し
た「市民活動カラフルフェスタ」のゲストトークのお客様として来仙していただ
きました。講演タイトルは、「そのつぶやきが社会を変えるチカラになる−国産
Tシャツメーカー社長に学ぶ情報発信術−」というものです。
 久米さんとは、日本財団CANPANの仕事をしていて紹介されましたが、まさにネッ
トワーカーという言葉にふさわしい活躍をされている方です。
http://kume.keikai.topblog.jp/index.html 
http://www.keikai.topblog.jp/indv/kume/sub_03.html

 その久米さんはソーシャルメディアの活用をお話されました。ソーシャルメディ
アとは、インターネット上のほぼ無償で提供されている種々のメディアで、
YouTube(ユーチューブ)、USTOREAM(ユーストリーム)、Blog(ブログ)、
Twitter(ツイッター)、Mail magazine(メルマガ)などを指しています。もちろ
んこれら以外にも、SNSや売買サイト、検索サイト、ファイル管理など、最近
のクラウドとスマートフォンブームを見ていると、メチャメチャ多様なサービス
が開発され提供されています。
 久米さんは、このようなサービスを大いに活用して、NPOの情報発信や地域
活性化に役立てようという主張と実践をされています。

 小生はソーシャルメディアについても、ある程度の知識がある方ですが、実践
は保守的です。しかし、久米さんが言うように、これからのNPOはもっとソー
シャルメディアを使いこなしていくべきだと考えています。日本財団の公益コミュ
ニティサイトCANPANの運営について協力してきたり、NPO情報ライブラリーを
CANPANのデータベースに乗り入れ情報開示の全国的な機運を作り出したり、地域
公益ポータルサイトみんみんを開発して、CANPANによる無料のブログサービスの
活用を強く推進したりしたのは、どれも、ソーシャルメディア時代にNPOが対
応していくための第一歩だからでした。

 そろそろセンターとしても、地域としても、第二歩目の時期がやってきている
というのが、久米さんの講演を聴いた感想です。

                                     続く                            
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