以下は、震災1ヶ月目にあたり、スタッフと理事・監事・顧問の皆さん宛に出した、
加藤のメッセージです。
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せんだい・みやぎNPOセンター
スタッフの皆様
cc 理事・監事・顧問の皆様
◆加藤です。
毎日、ご苦労様です。
あっという間に、大震災発生から1ヶ月が経ちますね。
下手をすると記憶もないというほどの忙しさだったのではないでしょうか。
以前に、朝日新聞の仙台支局にいて、HIV訴訟支援でたくさん記事を書いてい
ただいたMさんという女性記者さんは、そのあと和歌山支局に転勤となり、例の
和歌山カレー事件の取材にあたります。後にお会いしたときに聞いた話ですが、
その1年間の記憶がほとんどないと言っていました。怒涛のような取材合戦に巻
き込まれ翻弄されたとき、人は記憶も封印して自分の身を守ろうとするのかもし
れませんね。
今日の朝日新聞の池澤夏樹さんのコラム「終わりと始まり」は、とても良い文章
でした。その一部です。池澤夏樹さんは、紅邑さんが大ファンの文学者でもあり
ます。私も信頼している文学者の一人です。知っていますか?
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■正直に言えば、ぼくは今の事態に対して言うべき言葉を持たない。
被災地の惨状について、避難所で暮らす人たちの苦労について、暴れる原子力
発電所を鎮めようと(文字どおり)懸命に働いている人々の努力について、いっ
たい何が言えるだろう。
自分の中にいろいろな言葉が去来するけれど、その大半は敢えて発語するには
及ばないものだ。それは最初の段階でわかった。ぼくは「なじらない」と「あお
らない」を当面の方針とした。
政府や東電に対してみんな言いたいことはたくさんあるだろう。しかし、現場
にいるのは彼らであるし、不器用で混乱しているように見えても今は彼らに任せ
ておくしかない。事前に彼らを選んでおいたのはわれわれだから。
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加藤の書いた「NPOマネジメント」(4月末発行予定)の連載「蝸牛点晴」の最終回
原稿をみなさんにも読んでいただきたいと思い添付します。池澤さんとほぼ同じ
ことを別の言葉で書きました。(→ これは、『NPOマネジメント』誌が、4月末には
発行されますので、その後にアップします。)
◆さて、「震災躁の後で震災鬱がやってくる」と言います。そんなとき、私たち
は、自身の精神の安定を図りながら、的確に被災者への救援活動を広げて
いかなければなりません。小さくても、具体的に動いて、何かをすることが
一番いいと池澤さんも言っています。
センターの仕事は、救援活動としてはなかなか見えにくいものです。つなプロや
れんぷく、宮城のNPOのメーリングリストなどを見ているものには、センターが
さまざまな支援と地元団体と自治体と現場のつなぎ役として、大きな役割を果た
していることがわかりますが、スタッフによっては、そこが見えていない人たち
も多いと思います。
各施設と大町の幹部スタッフは、そのあたりのフォローをしっかりお願いします。
そして日常業務をしっかり進めると同時に、自分たちでも、小さなことでいいの
で、自発的な取り組みを進め、地域の被災者支援のコーディネートをすることが、
震災欝や業務に対する虚無の心からのもっともいい処方箋になることでしょう。
先は長いです。
隊伍を整え、持ち場を守り、足りないところは互いに補い合い、外からの力も大
いに借りて、ひとり一人の創意工夫が輝くセンターになりましょう。
◆紅邑さんの代表理事就任についてですが、今までの加藤、大滝代表理事体制は、
外部からの監視役としての意味もある理事会のトップが大滝代表理事。内部の執
行は、加藤−紅邑のラインで、現場の執行理事体制というものでした。従って現
場のCEO(最高執行責任者)は、意志決定は二人の合議で担い、外の顔としての
仕事、自治体コンサル、講演他の仕事の多くを加藤が、内部的な実務の多くは紅
邑さんが担っていたわけです。
しかし、加藤の病気と、この大震災の現場の指揮ということを考えたとき、CEOの
役割は、紅邑さんに一元化した方がいいとの理事会判断で、代表理事に就任
いただきました。また、昨年の入院以来、加藤の外部的な仕事の多くも、紅邑さ
んと幹部スタッフにお渡ししてきました。加藤は、ベッドの上からでのアドバイ
スはし続けますし、体外的には代表理事の肩書きで行動しますが、基本的な組織
の執行部分の意志決定は、紅邑代表理事以下、幹部のスタッフの皆さんによって
担われることになったと理解してください。もちろん紅邑さんには紅邑さんの得
意不得意があります。皆さんで補いつつ、センターを支えてください。
◆加藤の治療経過です。
抗がん剤治療の第一クール(週一回×3週点滴+一週間休み)の3回目点滴が終わり
ました。大きな副作用もなく、白血球も上昇に転じ、第二クールの治療に来来週
から入れる予定です。第二クールに入れれば、通院治療も可能なので、退院も視
野に入れます。(自宅のガスが復旧しないと風呂に入れませんが・・・)
以上、大震災、1ヶ月目を前にして、加藤から皆さんへのお願いです。
加藤哲夫