ビンラディンとNPOマネジメント [2011年05月03日(Tue)]
ビンラディン容疑者が、 米軍の秘密軍事作戦によって殺害されたというニュースが世界を飛び交って いますね。 今日の新聞もトップ記事でした。 テレビでは、ホワイトハウス前でお祭り騒ぎをするアメリカ人の映像が流れてい ます。 私は、彼が犯人というか首謀者だとして、支持も同情もしませんが、しかし、ホ ワイトハウス前の人々の画像には、割り切れなさを感じます。 ビンラディンを逮捕するという名目で、テロとの戦争という名目で、この10年間 に、どれほど多くの無辜なる人々の命が、アメリカ軍や諜報機関の手によって 奪われたでしょうか。アフガニスタンでは? イラクでは? そのことに思いをは せることができないからこそ、アメリカはますます病んでいくのだろうと思いま す。 アフガニスタンのタリバン政権も、ソ連によるアフガニスタン支配を崩すため、 パキスタンの諜報機関に多額の資金をCIAが提供し、自由の戦士という名の原理 主義者たちを養成した結果であり、その政権がビンラディンの引渡しに応じない からという理由で、アメリカは、空爆から政権を打倒しました。 タリバン政権は、女性に対する抑圧的な政策の強制で非難されましたが、それは なぜか?考えたことがありますか? イスラム原理主義だから? 違います。イ スラム原理主義は、彼らに口実(大義)を与えただけで、彼らの中に育ったものが なければ(あるいは失ったものがなければ)、ああいうことはできません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ タリバンとは、冷戦の反動のなかで、廃墟とヘロインと地雷のるつぼから産まれ てきた鬼子だ。その最年長の指導者だって、四十代の前半。彼らの多くが、目や 腕や足を失った身障者。彼らは、戦争が傷を負わせた共同体、戦いが破壊した社 会のなかで育ってきた。ソ連とアメリカが寄ってたかって、二〇年以上にわたり、 四五〇億ドルに相当する兵器や弾薬をアフガニスタンに注ぎこんできた結果がこ れ。 最新兵器だけが、この中世そのままの世界に侵入してきた近代の断片である、と 言っていい。こうした時代に育った少年たちは――――その多くが孤児です―― ――おもちゃとして銃をもて遊び(弄び)、家庭生活に守られた安らぎも知らず、 女性とともに過ごした経験さえない。そんな彼らが大人になって、支配者タリバ ンとして、女性を殴打し、石打ちにし、レイプし、残酷に迫害する。彼らはそう するほかに、どうやって女性と付き合ったらいいか分からないのだ。戦争に明け 暮れた年月が、彼らから優しさを奪い、人間的同情や親切心とは無縁の存在にし てしまった。周囲にふりそそぐ爆弾の雨という打楽器の音に合わせて踊ることし か知らない若者たち。彼らは自らの奇怪さに対す復讐を、自分の身の回りの者た ちに向けて果たしているのではないだろうか。 アルンダティ・ロイ著『帝国を壊すために』(岩波新書)より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ イラクでも、イランとの対抗上支援してきたサダム・フセインが勝手にクエート に進駐したことでイラク制裁が始まり、その延長上に、サダム経験打倒が、あり もしない大量破壊兵器の存在の示唆によって進められました。 考え方によっては、タリバンも、ビンラディンも、サダム・フセインも、みんな みんなアメリカの手先だった人たちです。暴力と金と陰謀と権力にまみれた人た ちです。だから、実は、アメリカこそが、世界最大のテロ国家なのだということ は、世界中の人々が知っており、なぜかアメリカ国民の多くが知りません。 不思議な国です。 アメリカを含むこれらの人々は、それぞれに、声高に「正義」を叫びます。 しかし、誰一人、「倫理」を語りません。 そのことをもっとも嘆かれているのは、彼らが信仰しているはずの、世界の創造 主であられるお方ではないでしょうか。 NPOのマネジメント専門誌『NPOマネジメント』(隔月刊、発行:人と組織 と地球のための国際研究所/IIHOE)が、この72号で、終刊となりました。創刊 号より、連載コラム「蝸牛点晴」を書かせてもらっていましたが、連載も、これで終 わりになります。難しいとか活字が多いとかいろいろと言われていましたが(私 も言いましたが)、しかし、日本の市民社会の構築のための理論的、実践的な指 針を提示することにおいて、代替の存在はなく、心から、その終刊を惜しむものです。 その終刊号の私の最終コラムのタイトルは、「この世界に倫理をもたらすために」 です。そして、主筆の川北秀人氏との対談「NPOは人と組織を育てられたか」 も、同時掲載していただいています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「「私が先んじて罪を負う」という「私」の名乗りだけが、世界を人間の住むこ とのできる場所に造り上げることができる。そして、世界を人間の住むことので きる場所に造り上げるのは、神の仕事ではなくて、人間の仕事なのである。」と レヴィナスは言う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 他にも、有益な記事が満載です。 ぜひバックナンバーも含めて、一度、購入を検討されることをオススメいたしま す。 ↓ 「NPOマネジメント」IIHOE書籍案内 https://blog.canpan.info/npomanagement/ |