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乳房杉と自動販売機 [2006年10月20日(Fri)]

乳房杉
隠岐の島
800年

隠岐の島にある乳房杉は、私が粘って粘って描けなかった数少ない巨樹のひとつだ。
正確には、描かせてもらえなかった。

理由はわからないが、当時の日記にはこう書いてある。

「絵を描いていると森全体がざわめいている。何を言っているのかは分からないが、ひどく不安定なメッセージで絵を描くことに集中できない。昨日からずっと木の前に座っていたが、その間森のざわめきが止むことがない」

帰り際、新しいダムが完成間近だったので、それと関連付けてもみたが、正確にはわからない。ただ、巨樹とひとりで対峙していると、そういうこともある。

「ブログで離島応援計画」なるプロジェクトがマイクロソフトではじまった。ブログを立ち上げ、島を活性化するアイディアを募るそうな。
3つの島のうち、隠岐の島がトップを切ってブログを開設した。

「子供たちが日本中に友達を作れるような仕組みを」

というテーマでシステム案を募集する。
島の人が導入したいと思う提案をした人には「1トン級の牛のオーナー」権利が貰えるそうな。
うーん、闘牛のオーナーかぁ、ぜひなりたいが、アイディアが浮かばん(涙)。

実は、私は隠岐の島と関わりが深い。
親父の親友が境港にいて、小さい頃から家族づきあいをしている。境港と隠岐の島までは、フェリーですぐのところだ。
はじめて隠岐を訪ねたのは、20年以上前の話だ。
私、姉、よっちゃん、ヒデちゃんは、親父につれられて『魔天崖』という島の絶景ポイントまで歩いて行った。「足が痛い」とヒデちゃんが泣きべそをかきながら汗だらだらになって摩天崖についた。
「ジュースが飲みたい、自動販売機はないんか?」
と鳥取弁でつぶやくヒデちゃん。
(あるわけねーだろ!)
全員が無言のツッコミをいれた。
牛と馬しかいない風景は、当時の私にはとてもしんどく見えた。

それから15年。巨樹を訪ねて私は再び魔天崖に立っていた。
風景はちっともかわらないのに、時間はすぎて、私は当時の親父とそう変わらない歳になった。
あれほどジュースが飲みたいといっていた、その自動販売機があるではないか。
思わず苦笑してしまった。

「いいこと教えようか?いまなら自動販売機あるよ、ヒデちゃんに教えなきゃ」

私は自動販売機の横にある公衆電話から、東京の親父に電話をした。
電話の向こうで、親父は笑っていた。
こういう会話って、なんかいいなと思った。

ブログを書きながら、隠岐の応援提案を思いついた。
題して
『とって隠岐(おき)のふるさとヒミツ・交換しない?』
これは島のひとしかしらない、もしくは自分しか知らない島のヒミツを、教えあうヒミツ交換プロジェクト。

「シーカヤックで魔天崖の裏に行くと、サザエが採り放題の場所があるんだよ」
「乳房杉には伝説があって、おばあちゃんがそっと教えてくれたんだ」
「島にめちゃめちゃ民謡のうまいおじさんがいる」

それぞれヒミツの頭出しをブログなどでしておく。
秘密を詳しく知りたい人が、その人のふるさとヒミツを同じように頭だしして、お互いのヒミツの詳細を教えあうことを条件に、手紙で詳細を知らせる。
秘密の手紙の内容は、家族以外には3人までにしか知らせてはいけない。またヒミツを知って、共有したいと思った場合は、お互いを訪ねることができる。ヒミツを共有した人は、ヒミツを知った感想などは述べてもよいが、内容については他言してはいけない。

このプロジェクトのポイントは
1、自分しか知らないヒミツをもつことが、ふるさとを愛する基盤となる
2、最終的にネットではなく手紙というアナログなツールでヒミツを交換することで、隠岐に対する親近感がつよくなり、ぬくもりと価値の高いヒミツ交換となる
3、ヒミツを教えてくれた人との交流が、絆を深めていく
4、基本的にヒミツにすることで、大切な場所が、荒らされてしまうようなことを防ぐ

これは私が魔天崖で聞いた「自動販売機ないんか?」というヒデちゃんの言葉と隠岐の島が、なぜか強烈にリンクしていたという実体験に基づいている。
私が「いま魔天崖に自動販売機がある」というヒミツを親父に教えたことで、親父も当時の旅を鮮明に思い出しただろう。いずれそれを確かめにくるかもしれない。そして私に「なるほど、こうなってるのか」と電話してくるかもしれない。
ふたりはヒミツを共有しているのだ。

つながりって、なんかこういう何気ないことであったほうが良いような気がする。
こういうのってなんか良いな、と思いつきなのに自画自賛。

この思い付きをシステムにするほどの構成力はないが、隠岐の人々がこのプロジェクトで元気になってくれればいいと思う。

さらにできれば、闘牛のオーナーになって、ヒデちゃんに自慢したいものだ。
Posted by 平田裕之 at 18:39