犬と私の共通体験 [2006年06月16日(Fri)]
口大屋のあべまき 兵庫県大屋町 樹齢400年 飼っている犬が台所にあった生卵を食べて体調を壊している。 怒ろうにも、現行犯でない限り、本人は怒られる原因が分からないらしいし、自業自得で苦しんでいるので、許してやろう。 そもそもそんな場所に卵を放置した飼い主の責任と言う負い目もある。 犬はトイレと水を飲む以外は静かに眠っている。 動物は体調が崩れると飯も食わず、ひたすら眠って体力を回復させる。 旅先で私も同じような経験が何度かある。 口大屋あべまきを描いているときも、高熱を出して数日テントの中でうなっていた。 近くに沢の水を引いた水道があったが、水源がイノシシのぬた場(発情期になるとイノシシがドロ遊びをする場所)になっていた。濁った水をペットボトルに手ぬぐいを摘めてろ過してみるも、飲んだら腹を下して、症状はさらに悪化した。 動くに動けず、丸2日、寝袋に包まって寝た。 山ビルが足の指にしがみついて、弱った私をいじめるように血を吸った。 3日目にようやく起き上がり、ろ過装置の精度を上げて、まずい水でおかゆを作った。おかずはなく、熊野でもらった梅干を白いおかゆにぽとりと落とした。 たきばあちゃんが作った塩辛い梅干を口にしたら、ぽろりと涙が出た。 私はどれだけ人の情けに生かされているのだろうか? 93才のばばあが、しわくちゃの手で揉んだ辛い梅干に、自分は生かされている。 400歳の老木が私の話し相手をしてくれる。 自分の小ささ、自然の大きさ、人の情の深さ・・・。 そんなことを思いながらおかゆを食べ、あべまきを描いた。 「だからお前の気持ち、わかるよ」 そういって犬の頭をなでてみるが、まったく通じている様子はない。 ・・・、なんかないの?もっと、こう哲学的な交流みたいな。 おい、こんどやったら表に出すよ。 犬は耳を下げて上目遣いに私を見るのであった。 |
Posted by
平田裕之
at 17:48