自衛隊がすでに文民統制を逸脱して行っている違法な情報収集を調査・解明し、違法行為を容認助長する秘密保護法案を廃案にすることを求める声明
[2013年11月29日(Fri)]
自衛隊がすでに文民統制を逸脱して行っている違法な情報収集を調査・解明し、違法行為を容認助長する秘密保護法案を廃案にすることを求める声明
2013年11月29日 自衛隊の国民監視差止訴訟原告団 自衛隊の国民監視差止訴訟弁護団 自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会 1、昨日(11月28日)の新聞各社は、共同通信が、陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、首相や防衛大臣(防衛庁長官)に知らせずに、海外に拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報収集活動をさせてきたことを報じた。このような自衛隊制服組の諜報活動は、明らかに文民統制(シビリアンコントロール)に反する違法な行為であり、自衛隊はこのような違法行為を長年にわたって行ってきたことになる。 私たちは自衛隊情報保全隊の違法な国民監視の差し止めを求めて国を相手取って裁判を起こしているが、自衛隊の情報収集活動についてはすでに昨年3月26日、仙台地方裁判所が、陸上自衛隊情報保全隊による違法な国民監視活動の存在を認定し、個人情報をコントロールする権利(人格権)を侵害したとして5人の原告に対する慰謝料の支払いを国に命じている。 2、これら一連の事実は、自衛隊が長年にわたって国内外を問わず日常的に違法行為を行っている組織であることを明確に示している。原告ら国民に対する監視活動も、これら違法行為の一環としてなされてきたのである。しかも、別班に至っては首相や防衛相に秘密裏に違法行為を行っていたのである。 重要なことは、情報保全隊と別班の活動が、いずれも陸上幕僚監部運用支援・情報部の指示に基づいて行われていること、教育・訓練がいずれも小平学校で行われていることである(情報保全隊については元隊長の鈴木健氏が仙台高裁で証言した)。今、日本社会に求められていることは、自衛隊による違法な情報収集活動の実態を徹底解明することである。 私たちは、すでに自衛隊情報保全隊の現指令を証人採用して尋問することを仙台高裁に要求している。 国権の最高機関である国会は、国政調査権等を行使して自衛隊の違法な情報収集活動の実態を解明すべきである。とくに、陸上幕僚部運用支援・情報部の指示とその内容、小平学校における教育・訓練の内容を審議の中で明らかにすべきである。 私たちは、自衛隊に対して強い憤りを新たにし、防衛省に対して、自衛隊の違法行為の実態を明らかにし、関係者の厳正な処分及び厳格な再発防止措置を講ずることを求めるものである。 3、ところが、現在参議院で審議されている秘密保護法案は、このような自衛隊の違法な情報収集を抑止するどころか、逆に、違法行為を容認・助長するという極めて不当な法案である。自衛隊に「防衛」という名目で、違法な情報収集に関する情報を「特定秘密」とすることを認め、特定秘密とされた違法活動情報は国民への公開が禁止される。また、違法な情報収集行為を内部告発した自衛隊員等は懲役10年の厳罰を処せられ、これを探知しようとした報道機関は5年の懲役に処せられるおそれがある。さらに、特定秘密に関しては裁判で争うことも事実上不可能である。 同法案は、特別秘密の指定を大臣が行うとしているが、防衛相の秘密の指定は実際には自衛隊の部隊と官僚が行い、大臣は追認しているだけであることが浮かび上がっている(赤嶺政賢議員の質疑)。仙台地裁が、情報保全隊が作成したと認定した「内部資料」を見ると、自衛隊情報保全隊は国民の自主的な活動に「反自衛隊活動」と勝手にレッテルを張って敵視して違法な情報収集行為を行っている。 政府は、秘密保護法案について、知る権利や報道の自由に配慮したと言っているが、元情報保全隊長の鈴木健氏は、「広報を通したものだけが取材だ」と証言しており、通常の取材が国会答弁とはかけ離れて違法とされる危険が濃厚である。 私たちは国会は、監視差止訴訟で浮かび上がっている事実に目を向けた審議と判断を求めるものである。 4、逆に、自衛隊にとっては、防衛秘密を探知する行為は犯罪とされるから、情報保全隊や別班による違法な情報収集は野放しになる。過去の違法な情報収集も永久に闇に葬られてしまうことになりかねない。 自衛隊による国民監視は強化され、国民の思想信条の自由・プライバシー権、表現活動の自由、取材・報道の自由はないがしろにされる。法的救済も図られないから自衛隊の違法行為が増長してゆくことは必然である。シビリアンコントロールの働かない違法組織を容認することは民主主義の否定である。 5、国会は、秘密保護法案の強行採決などはすべきではない。 われわれは、参議院に対して、自衛隊の違法な情報収集を容認助長する秘密保護法案を廃案にするともに、違法な活動を徹底的に究明することを求めるものである。 以上 |