• もっと見る
«サンゴ礁年特別企画展がいよいよ始まります! | Main | イノー実習まとめ»
プロフィール

藤田喜久さんの画像
メニュー
<< 2023年01月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
リンク集
最新コメント
宮脇文子
海のクリスマスツリー:イバラカンザシ (01/25) 橋本
論文紹介 (05/24) 吉村圭世
安部オール島 (10/19) 井村
オキナワクダヒゲガニ (09/17) 藤田喜久
沖縄のエビ・カニ類 (07/07) 高江洲カオリ
沖縄のエビ・カニ類 (07/06) ryoko.h
海藻押し葉 (06/11) Calappa
ホソメドクロカシパン (04/01) 赤サンゴで健康に@よしの
首里城など (10/26) 藤田喜久
タガヤサンミナシのお食事 (10/02)
絶滅寸前?ミヤコチスジノリ [2008年07月23日(Wed)]
 僕は、2003年から毎月宮古に通っています。目的は、宮古の湧水に生息するエビ・カニ類の研究をするためです。その過程で、宮古の湧水には、エビ・カニ類以外にも様々な魅力的な生物がいることが分かってきました。そのうちの一つが「ミヤコチスジノリ」です。このミヤコチスジノリは、淡水中に生育する紅藻類です。ごく近い仲間に、沖縄島と宮城島のみで生育が確認されているシマチスジノリがあり、国・沖縄県の天然記念物および環境省・沖縄県版のレッドデータブックに「絶滅危惧 I 類」として指定されています。ミヤコチスジノリは、宮古島のヌグスクガー(野城泉)というただ一カ所の湧水に生育していて、近年の形態やDNAの分析結果などの詳細な研究によって、シマチスジノリとは若干異なる宮古島固有の変種であることが明らかになりました。
 エビ・カニ類調査のために毎月宮古の湧水に通っているついでに、ミヤコチスジノリの生育状況の観察をしているのですが、一昨年あたりから、ミヤコチスジノリの生育状況が極めて悪くなってきていることがとても気になっています。



 右の写真は、2005年の状態です。初めて宮古で見たときよりも大分減ってはいたものの、まだ10cmを超す藻体が沢山ありました。この年の夏を境に大型の藻体はほとんど見られなくなりました。一昨年と昨年では、冬場には、数ミリ程度のほとんど「点」のような状態(上の写真のような状態)になっていて、夏場に湧水量が増えた時だけ少し藻体が伸びるだけになっていました。そして、ついに今年は、「点のような状態」のものすら見つけるのが困難になりました。原因は良く分かりませんが、湧水中に堆積している土砂の量が明らかに以前より増えていることと、藍藻が繁茂していることは確かだと思います。藻類の専門家でないため、この状況がどの程度危機的なのかが今イチ分かりません(なんせ藻類なので、何か環境が悪化しても耐える仕組みがあるかもしれないし)。それでも、とても安心して見ていられる状況ではないとは思います。
 数年前から、このヌグスクガーにて、観察会をしたり、琉大名誉教授(藻類研究の大家)を招いて講演会をしていただいたりして、保全の必要性をマスコミなどに取り上げてもらっていたのですが、現時点で全く効果はありません。もちろん行政側から特にこれといった取り組みもありません(ヌグスクガーの立て看板は新しくなってミヤコチスジノリが生育している旨記述はされていましたが)し、研究者に話してもヤバそうだとは思ってもらえますが具体的に何か動いてもらえるという状況にはなりません。
 宮古の湧水に関わってきて、現状を知ってしまった以上、なんとかしたいという思いや研究者としての責任はあり、実際にかなりの努力はしていると思うのですが、そもそも僕個人でどうにかなるような問題ではないです。また、他にも、ミヤコサワガニや地下水性エビ類など、生息環境の悪化が懸念される問題は山積みです(ミヤコサワガニや地下水性エビ類についてはまた別の機会に....)。
 世界中で宮古島のただ一カ所の湧水にのみ生育する「ミヤコチスジノリ」。今後いったいどうなってしまうのでしょうか?宮古に通える限り見守っていこうとは思っています。目の前からいなくなってしまう瞬間に立ち会うことだけは避けたいのですが......
【宮古カニある記の最新記事】
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント