テルモスバエナが危機 [2010年12月23日(Thu)]
2010年12月19〜20日の日程で、南大東島に行っていました。
目的は、テルモスバエナの近況を調査するためです。 最近、テルモスバエナのタイプ産地の洞窟に、大雨で近くの貯水池からティラピアなどが入り込んでしまったという報告が、島まるごと館の東さんからありました。その洞窟は、昨年新種記載されたテルモスバエナのタイプ産地なのです。かなりショッキングなことでしたので、北九州市立 いのちのたび博物館の下村さんと、緊急調査を行なうことになったのです。 現場の洞窟のすぐ側には最近できた貯水池がありますが、なんと、水量が増えたときにオーバーフローする水が洞窟内に排水されるように設計されていたのです。驚きの設計です。 とりあえず洞窟に入って見渡すと、ティラピア類のものと思われる屍骸がいくつか見つかりました。鍾乳石の間に横たわる屍骸。相当な違和感です。ただごとではありませんね。 今回は1日(1泊)しか滞在できなかったのですが、たったそれだけの間にもティラピア類とフナ(ギンブナか?)を捕獲できました。捕獲した魚は解剖して、胃と消化管の内容物を調べるために全摘出しました。後に顕微鏡下で観察したいと思います。テルモスバエナでてきたらショックだなぁ。 魚は結構採取できたのですが、テルモスバエナが見つかりません。例年、今の時期は個体数も多い時なのに今回は結局1個体も採集できませんでした。他のテルモスバエナがいる洞窟では複数個体がとれたのでやはりなんらかの影響があるのかもしれません。 テルモスバエナは、南大東島の固有種で、今のところ限られた洞窟地下水でしか確認されていません。「高次ランク(絶滅危惧 I 類とか)」に含むべき状態ですが、新種記載がごく最近ということもあって、環境省や沖縄県のレッドデータブックにも掲載されていないのです。もっとも、レッドデータブックに掲載されたところで、何か対策が進むわけでもないでしょうが。とにかくそういう状態なので、有効な対策が打てない状況です(調査にも援助がないまま、自分たちでやらないといけない状況だし....)。今流入してしまっている魚を取り除くのも根気のいる難しい作業になるでしょうし、また台風や大雨で同じように洞窟への流入が続くことが予想されるので、なかり厳しい状況であるといわざるをえません。この洞窟地下水には、環境省や沖縄県のレッドデータブックで高次にランクされているドウクツヌマエビやオハグロッテッポウエビが生息していますが、それらへの影響も心配です。いったい誰が対応するのでしょうか?また僕らがやるのか? 最近いろんな人が「保全、保全」言ってるけど、沖縄の自然、何ら守られていない! |