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Y幼生 [2008年05月30日(Fri)]
 
 今回は厳密にはエビ・カニ類ではありませんが、「Y(わい)幼生」という甲殻類について紹介します。
 沖縄の海に住む水生動物の多くは、幼生(子供)時代には水中に漂う「プランクトン」として生活しています。「Y幼生」はそんな幼生プランクトンの一つなのですが、このY幼生、なんと最初の発見から100年以上経った今も「この子、誰の子?」と世界中の甲殻類研究者を悩ませている「謎の幼生」なんです。Y幼生は、世界中のあちこちの海域から報告されていますが、沖縄のサンゴ礁域での種多様性はとても高く、一つの調査地点で40種以上(幼生形態を基に分類した場合)が見つかっています。
 僕は、数年前から、デンマーク・コペンハーゲン大学のHoegさんとGlennerさん、琵琶湖博物館のグライガーさん達のY幼生研究チームに参加させていただいています。そして、つい先日、これまでの研究成果の一部が、2008年5月20日付けの英国のオンライン学術雑誌「BMC Biology」に掲載されました。
 今回の研究では、沖縄の瀬底島周辺で採集したY幼生を「キプリスY」と呼ばれる最終期幼生まで飼育し、甲殻類脱皮ホルモンを与えて幼生の次のステージへの変態させる実験を行いました。その結果、とても甲殻類とは思えないようなナメクジ様の形態を持つ幼体に変態させることに世界で初めて成功しました。このナメクジ様の生物をキプリスY幼生の次のステージの幼体「イプシゴン(ypsigon)」と名付けました。このイプシゴンの形態や行動は、Y幼生の成体が何かしらの海洋生物に内部寄生することの強い証拠であると考えています。
 まだ100年来の謎が解けた訳ではないのですが、とても大きな一歩になったと思います。謎の解明に向けた次の研究もすでに始まっています。ご期待ください。

 あ、そうそう。Y幼生の「Y」ですけど、これは、昔の研究者(Hansen)が大西洋のプランクトン中に出現する甲殻類の幼生を研究して、その中で同定できなかったものについてα,β,x,yなどという記号を与えて報告したことに由来してます。その後、幼生研究が進んで、多くの幼生の正体(成体)は何かが分かったんですが「y-larvae」はまだ実体不明ということです。

<参考文献> Glenner, H., Hoeg, J.T., Grygier, M.J., & Fujita, Y., 2008. Induced metamorphosis in crustacean y-larvae: Towards a solution to a 100-year-old riddle. BMC Biology, 6: 21.
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