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宮古の活動アーカイブス vol.1:博物館特別企画展 [2008年07月30日(Wed)]
 「宮古の活動アーカイブス」では、これまでに僕が宮古島で行ってきた様々な活動を振り返って行こうと思います。今回は、2005年7月1日〜31日に、平良市総合博物館(現 宮古島市総合博物館)で開催された特別企画展を紹介します。

 2003年に宮古島の湧水でエビ・カニ類の研究を開始して以来、次々に興味深い研究成果を挙げる事ができ、どんどん宮古の魅力にはまっていきました。その一方で、湧水環境の保全の必要を感じるようにもなりました。
 最初は、小規模な講演会や観察会をしていたのですが、もう少し広く宮古の人たちに訴えかける手段はないかと模索していました。それで、企画展「湧水に暮らす甲殻類」の企画を考えて、当時の平良市総合博物館の館長さんに持ち込んでみました。幸いにも、館長さんの了承を得、半年以上の準備期間を経て、2005年7月1日〜31日に特別企画展「湧水に暮らす甲殻類 〜地下水環境,生物,そして人との繋がり〜」の開催にこぎつけました。



 企画展の展示製作などは1度もやったことがありませんでしたが、色々考えて、ほとんど一人で作り上げました。もちろん、解説パネルの貼付けなどは博物館の方々に御願いしてキレイに作り上げていただきました。2005年の6月は、ほとんどこれの作成に時間を取られ、直前は徹夜の連続でとても大変でしたが、とてもよい経験となりました。 
 開催後には、たくさんの方々に博物館に来ていただきました。展示内容を熱心に見たり、メモしたりする様子には、少し感動しました。
 


 企画展の展示スペースの中央には、「体験コーナー」を設けました。顕微鏡(個人のもの)を3台置き、ヌマエビ類やテナガエビ類の標本を見れるようにしました。顕微鏡の使い方の解説シートや、エビ類の体のつくりの解説シートも作成し、机の上において置きました。子供達には人気だったようです。
 僕もそうだったのですが、子供にとって、顕微鏡で見える像はとても新鮮で、面白いものだと思います。安いものでも十分に楽しめます。このような機会を少しでも多く沖縄の子供達に提供して行けたらなと願っています。



 企画展では、湧水に生息するテナガエビ類やカニ類の生体展示も行いました。中でも、注目されたのは、宮古の地下水域から発見された新種、ウリガーテナガエビMacrobrachium miyakoense Komai & Fujita, 2005の生きた個体の公開でした。企画展開始当初は名前のついていなかったエビが、企画展開催期間中に新種記載論文が出版され、新しい名前がついた訳です。地元マスコミから大きな注目を集めました。




 企画展の解説資料も、表紙デザイン、本文執筆、図表作成のすべてを行いました。もうちょっと凝ったデザインにしたかったのですが、とにかく時間がなかったです。ホテルに缶詰状態で書き上げていたのを思い出します。テレビとかで見る小説家みたいでした。
 ただ、実際に入館者に配布されたものはカラー刷りではありません。僕の遅筆により印刷に回すのが間に合わなかったので、博物館の方々の手作業になってしまいました。関係者配布用として、ごく若干数をカラーコピーで作成していただいたものを1部貰いました。




 企画展の開催前には、地元の新聞(宮古毎日新聞と宮古新報)に生物紹介の連載も行いましたし、開催期間中には2度の講演会を実施(2005年7月2日と2005年7月30日に開催)しました。宮古新報には、特集記事も組んでもらいました。宮古の方々に、広く湧水環境と生物の保全を訴えかけるいい機会となったと思っています。
 企画展のタイトルは、「湧水に暮らす甲殻類 〜地下水環境,生物,そして人との繋がり〜」でしたが、この企画展をきっかけとして、まさに宮古の人と繋がりが出来始めました。企画展の内容をつめていく中では、当然、宮古の湧水にまつわる文化や歴史について学び、地元の方々にお話を聞く機会がありました。そうした中で、「保全」に対して自分なりの考えが固まっていったように思えます。「学術的稀少性」あるいは「学術的価値」だけでは多くの人々に訴えかけることはできないんだなあと...。まず「暮らし」ありきだということ。あたり前のこのことに、その当時は気づいていませんでした。この企画展は、今の僕の原点ともいうべきものでした。
 なお、この企画展の準備を含めて、宮古島での様々な研究および保全活動資金は、財団法人トヨタ財団からの助成を活用させていただきました。ありがとうございました。
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