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2021年07月07日

特例貸付に関する緊急アンケート報告書を公表

新型コロナウイルス感染症特例貸付に関する社協職員アンケート報告書について

はじめに
 新型コロナウイルス感染拡大による影響から2020年3月25日から始まった新型コロナウイルス感染症特例貸付(以下、特例貸付)は、期間延長を繰り返し、運用開始から2021年8月末までの運用となっています(2021年6月末時点)
 わたしたち、社会福祉協議会(以下、社協)職員は、コロナ禍により生活困窮に陥った方の生活を支えるため、スピード感をもった迅速な貸付に取り組んできました。特例貸付の開始から約1年の期間を通じて、感染症対策や相談者の急増、運用の度重なる変更や貸付種類の増加等で特に都市部の社協の相談現場は、今まで経験したことのない混乱を経験し、多くの職員は葛藤に苦しみ、大きなジレンマを抱えています。
 2020年3月31日に関西社協コミュニティワーカー協会(以下、関コミ)会員を中心とした有志によるSNSを使った「特例貸付を通じて社協についての情報交換グループ」を立ち上げ、特例貸付に関する情報交換、意見交換を行ってきました。グループでの交流を通じて、現場職員の疲弊、ジレンマ、繰り返される期間延長からくる出口が見えない不安感が社協全体に蔓延している状況を感じ、「全国の現場の職員も同じではないか」という想いから、アンケートを取り組むプロジェクト(社協現場の声をつむぐ1000人プロジェクト)を立ち上げました。同プロジェクトには、生活福祉資金貸付事業をはじめとする低所得者への貸付制度の研究者にもアドバイザーとして参加していただき、業務後の夜間、週末などの時間を使ってSNSとオンライン会議を繰り返し、アンケートを完成しました。
 「特例貸付に関する緊急アンケート」は、1月15日から2月20日までの期間で実施しました。「関コミ」という自主研究会からの呼びかけにも関わらず、全社協のメールニュース、広域社協からの市区町村社協への情報提供、関コミ会員からの口コミ、SNSからの拡散などにより全国47の都道府県から1,184人からの回答を得ることができました。今回の報告書発表まで、アンケート期間中の「中間報告」、「速報」と2回公表し、このたび最終報告書を作成しました。
 アンケートには、特例貸付の最前線で奮闘する全国の社協職員の疲弊感、切実な声、未来への願いが続々と寄せられ、より良い困窮者支援につなげたいという社協職員の声が詰まっています。アンケート公表後の反響は大きく、テレビ、新聞などのマスメディアによる報道に加え国会の委員会でも引用していただくなど、コロナ禍での困窮者の実情、それを支える現場の社協職員の状況などを伝えていただいています。
 確実に、1,184人の声が各方面に届いています。アンケートに協力していただいた社協職員、アンケートを拡散していただいた関係者のみなさまの想いが、「大河の一滴」となって大きな流れをつくり出しています。今回のアンケートに回答していただきましたみなさま、さまざまな形でご協力していただきましたみなさまに感謝申し上げます。
 特例貸付に関する緊急アンケート報告書は、報告することがゴールではありません。本報告書が特例貸付、生活福祉資金のあり方の議論のきっかけになることを願って、はじめにの言葉とさせていただきます。

2021年7月7日
関西社協コミュニティワーカー協会・社協現場の声をつむぐ1000人プロジェクト 
                               高橋 俊行

【1,184人の社協職員からの提言
「特例貸付に関する緊急アンケート」をとりまとめた結果、社協現場の声をつむぐ1,000人プロジェクトとして、次の8点を国ならびに全国の自治体、福祉関係機関に提言します。

1.「自助」の名のもとに公的責任を後退させないでください
 約1年以上にわたり、生活に困窮する住民への主たる生活支援策が特例貸付だったことに、現場で相談者の苦しい窮状に触れる社協職員は大いなる疑問と憤りを感じていました。
 「自助」の名のもとに生活に苦しむ人々に債務を押し付け、本来国が果たすべき公的責任を後退させることは絶対にやめてください。

2.すべての困窮する人に支援が届く生活困窮者支援金制度の拡充を
 特例貸付開始から1年以上が過ぎ、貸付を中心とした困窮者支援に生活困窮者自立支援金(以下、支援金)が創設されたことは、生活に苦しむ人々にこれ以上の負債を負わさない政策として一定の評価ができると考えます。
 しかし、支援金の対象はすべての特例貸付を借りきった世帯で、貸付利用世帯のごく一部であり、申請受付期間も短期間です。これまで貸付を利用せずにやりくりしてきた世帯、長期化する新型コロナウイルスの影響で今まさに困窮している世帯は支援金の対象外です。特例貸付を重ねて負債額を増やすほど、相談者の自立再建は遠のきます。償還が難しい世帯に貸付を延々と続けるのは、私たち社協職員の仕事ではありません。
 生活に困窮する世帯が負債を増やすことなく給付が受けられるよう、支援金制度の対象拡大と期間の延長を提言します。

3.入りやすく出やすい生活保護の弾力的運用を
 生活保護制度について、弾力的運用を求める通知が出されていますが、浸透しているとは言い難いのが現実です。各福祉事務所の運用状況を把握した上で、一層の弾力運用の徹底を指導されるようお願いします。
 また、生活保護を躊躇する人がまだまだ非常に多いことから、「生活保護が権利」であることの継続的かつ強力なキャンペーン実施を提言します。

4.包括的で継続的な生活困窮者支援ができる生活困窮者自立支援の制度を
 新型コロナウイルス感染拡大の暮らしに与える打撃は深刻であり、生活困窮が長期的問題となることは必然です。社会や地域からの「孤立」がより問題を深刻化・潜在化させることも過去の経験から明らかになっています。社会福祉法の改正により創設された「重層的支援体制整備事業」の理念を真に実現する上で、誰ひとり取り残されない重層的かつ伴走的な支援体制づくりは不可欠です。
 支援体制の内実化には、住民主体の地域づくりと生活福祉資金貸付をはじめとする困窮者支援を担う社会福祉協議会及び自立相談支援機関が鍵となります。
生活福祉資金貸付については5で述べますが、自立相談支援機関についても、専門性を有した常勤の相談支援員配置ができるよう補助基準額、国庫補助率の増を図り、各自治体での重層的な支援体制整備の基盤を強化するよう提言します。

5.「相談支援付き貸付制度」として生活福祉資金貸付の体制強化を
 調査では、特例貸付において迅速性を優先しつつも、可能な限り貸付以外のニーズへの対応に腐心し、貸付の向こうにある住民の生活や地域の状況に思いを馳せた社協職員の姿が浮かび上がっています。
 本来の生活福祉資金は単なる貸付事業ではなく、生活相談、生活支援の入り口です。緊急事態に増幅される生活困難・ニーズを捉え、早期に支援につなげることができる体制が必要不可欠です。
 生活福祉資金が「相談支援付き貸付制度」として機能できるよう、相談業務に従事する職員の雇用の安定と身分保障ができる財政措置を強く求めます。また、特例貸付の長期にわたる償還管理に対しても、体制整備に向けた財政措置を別途図る必要があります。

6.現場の声に向き合い実態を反映させる政策と運用を
調査では、約86%が「ストレス・危険を感じた」と回答し、9割以上の社協職員が、「貸付制度の有効性に疑問を感じた」「制度内容の頻繁な変更や現場への周知方法へ疑問を感じた」と回答しています。
 私たち社協職員が疲弊した要因は、相談支援を骨抜きにした膨大な貸付事務だけではなく、長期化する中で制度の有効性に疑問を感じる現場実態が反映されることなく、頻繁に繰り返された制度の変更です。詳細が現場に明かされないまま公表される運用変更に対し、相談者から回答できないことへの罵声を浴び、体制整備に追われ、こころと身体に影響を受けるのは現場の職員です。社協の現場が疲弊し、職員が病気になり、退職している現状を把握してください。
日夜、貸付を必要とする方々の対応をおこなう社協の現場の声に向き合い、貸付を通してみえる住民の課題を把握するとともに、有効な現場支援を講じていただくよう求めます。

7.社会福祉の相談援助職の処遇を適正化
 私たち社協職員は、新型コロナウイルス感染リスクと背中合わせで貸付相談に立ち続けました。時には、生活不安から暴言や理不尽な言葉を投げかける相談者に共に傷つきながら、最前線で貸付相談を続けています。
 医療・介護職員同様、私たち社協職員は人々の暮らしの基盤を支える 「エッセンシャルワーカー」であると認識していただき、慰労金の適用やワクチン接種の優先等の措置を図ってください。

8.貸付現場と協働した制度検証とそれに基づく改善を
 特例貸付終了後、速やかにその有効性と課題に関する検証をおこない、災害等を含めた緊急時と平常時の生活福祉資金制度と国民の生活基盤を守るセーフティネット策の強化につなげることを提言します。
 検証に際しては、私たち貸付現場の声を聴いてください。すべての都道府県と市区町村社協を対象に調査を実施し、検証過程に現場職員の声を反映し、一緒に考えさせてください。
地域福祉の推進を使命とする社協が取組む生活福祉資金貸付制度の意義を再度認識し、今日的な課題に対応する制度運用を共に考え、福祉活動やまちづくりに関わる住民、関係機関、行政と協働により重層的支援体制整備事業の具体を創る実践の機会であると考えます。

○報告書公表から始まるストーリー
プロジェクトが描くビジョン 〜調査から次のアクションへ〜
 私達、プロジェクトメンバーは調査(報告書公表)によってどのような状態・変化をめざすのかについても話し合いをおこないました。
 その結果、大目標は次の3点です。調査はゴールではなく、これらのビジョン達成のための礎であり、次につながるアクションのひとつと考えています

1.全国レベルで、現場の実態を反映し、生活福祉資金貸付制度の意義と課題の整理がおこなわれる。
 国と全社協だけで検証するのではなく、最前線の現場職員の想いと経験を絶対に無駄にしない評価をしようという動きになる。
 私たちの調査や全国での公式な調査結果に基づき、都道府県・市区町村社協への情報開示と意見徴収を重視した検証がスタートする。

2.生活困窮者支援として生活福祉資金貸付制度をより良い制度に改革・改善する動きがつくられる
 生活福祉資金の社会的意義と位置づけの整理に基づく抜本的な見直し、調査分析に基づく制度改善が図られる(現在・未来に必要な生活福祉資金貸付へ)。

3.生活福祉資金貸付制度における実施体制の強化が図られる
生活福祉資金貸付制度が、相談支援として位置づけられ、チームで「相談付き貸付」が実施できる体制づくりが進む。
(報告書より抜粋、一部ブログ投稿用に編集)

新型コロナウイルス感染症特例貸付に関する社協職員アンケート報告書
特例貸付に関する緊急アンケート報告書0707(web).pdf
※今回の公表データにつきまして7月7日時点での編集状況のものです。


「報告書」の内容は、関西社協コミュニティワーカー協会に帰属いたします。PDFのダウンロードにつきましては、個人使用に限ります。研究会等で使用する際は下記メールアドレスまでご連絡願います。

「報告書」の公表内容についての問い合わせ、取材、ご意見、感想は、関コミまで連絡をお願いします。
連絡先: kansaishakyo@yahoo.co.jp

実施主体
関西社協コミュニティワーカー協会「社協現場の声をつむぐ1000人プロジェクト」

【今後の予定】

○報告書の冊子作製を行う予定です。 
私達は、全国の社協職員の1,184人の声を報告書にまとめる中で、web上だけの公開だけではなく冊子製作をすることになりました。その理由は、報告書が今後の特例貸付、生活福祉資金制度の検証、検討の為、歴史的記録冊子として後世に伝える意義があると判断し製本した報告書発刊に向けて準備をしています。詳細は、後日、本ブログ等でご案内します。

○報告書公表に関するフォーラムを企画しています
今回の報告書公表に関するオンライン型のフォーラムを2021年8月7日(土)開催予定で、準備をしています。
フォーラムに関するホームページ(期間限定)
href="https://www.koe-miraiforum2021.com/" target="_blank">
posted by たっかん at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | プロジェクトの動き
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