関西社協コミュニティワーカー協会は、社会福祉協議会職員による主体的、自主性な任意団体です。
2020年3月25日から2022年9月30日まで全国の都道府県及び市区町村社協が、新型コロナウイルス感染症の影響により、失業、減少などの世帯に対して、特例貸付(緊急小口資金・総合支援資金)の貸付を行ってきました。
私たち、関コミはこの間、特例貸付の現場の状況を、困窮者の生活実態などについて「特例貸付に関する社協職員アンケート」を実施し、報告書にまとめて、公表し、また特例貸付に関するフォーラムをオンライン開催、コロナ禍に生まれた地域福祉実践共有アンケートなどを取り組み、社会に発信してきました。
今回、特例貸付に関わった「当事者」である社協職員として、関西社協コミュニティワーカー協会役員一同として、「特例貸付の受付期間終了に伴う意見表明」を取りまとめ、公表いたします。
特例貸付の受付期間終了に伴う意見表明
2020年3月25日以降、これまで2年半にわたり、全国の市区町村及び都道府県の社会福祉協議会(以下、「社協」という。)は、新型コロナウイルス感染症の影響で失業、減収等により生活費不足に陥った市民への生活福祉資金の特例貸付(以下、「特例貸付」という。)を実施してきました。
私たち、関西圏の社会福祉協議会有志で組織している「関西社協コミュニティワーカー協会(以下、「関コミ」という。)は、特例貸付実施中に「新型コロナウイルス感染症特例貸付に関する社協職員アンケート報告書」(以下、「報告書」という。)、オンラインによる「フォーラムの開催」、「コロナ禍で生まれた社協活動・地域福祉実践共有アンケート」を実施してきました。これら一連のアクションを通じて、現場の社協職員の状況を明らかにするとともに、特例貸付を利用したひとり親世帯、外国籍住民、フリーランス、個人事業主、非正規雇用などの市民の生活問題に基づいて実施してきた食料・生活物資支援や相談会、調査活動など、社協が地域の関係機関や住民と協働して企画し、展開している実践を把握し発信してきました。私たちが「報告書」をとりまとめる過程において、特例貸付の実施にあたり見えてきた課題を集約し、相談現場を担った社協職員1,184人の声から生み出した提言を改めてお伝えします。
1. 「自助」の名のもとに公的責任を後退させないでください
2. すべての困窮する人に支援が届く生活困窮者支援金制度の拡充を
3. 入りやすく出やすい生活保護の弾力的運用を
4. 包括的で継続的な生活困窮者支援ができる生活困窮者自立支援の制度を
5. 「相談支援付き貸付制度」として生活福祉資金貸付の体制強化を
6. 現場の声に向き合い実態を反映させる政策と運用を
7. 社会福祉の相談援助職の処遇を適正化
8. 貸付現場と協働した制度検証とそれに基づく改善を
特例貸付の累計貸付件数は、2年半で実に、貸付件数は令和4年10月1日時点で335万件、貸付決定額は1兆4268億円を超えています。
貸付開始の当初は、新型コロナウイルス感染症の影響がどこまで広がるか未知数であり、かつ緊急事態宣言、まん延防止等重点措置なども含めた対応が国民生活に与える影響も不透明な状況下において、政府の生活支援・経済対策による資金供給が浸透する前の段階に、特例貸付によりコロナの影響で減収した世帯に全国で迅速に資金供給できたことは、「命をつなぐ」「生活維持」につながったと、関コミとして評価しています。
しかし、残念ながら、長期化するコロナ禍での国民の生活を支える手段として、政府がこれまで、そして現時点において抜本的な対策を講じたとは言い難く、さらにはセーフティネット、権利としての生活保護は、「弾力の運用の徹底」であって、制度改正、見直しとまで至っていないのが現状です。これは、政府によって市民生活、経済生活を制限した結果を「自己責任」として貸付という形で最大200万円という債務を背負わせていることを意味しています。住民税非課税によって償還免除を受ける人もいますが、引き続き厳しい困窮した生活が続くことになります。長期化するコロナ禍から回復をする前に、今日の物価高による市民生活への影響により、2023年1月からの償還開始によって厳しい生活に追い込まれる人が大勢いるのではないかと懸念します。
このため関コミは、2022年9月30日をもって受付期終了が決まったことを受け、政府に対し、以下の充実を図ることを求めます。
1)緊急小口貸付などで債務を増やすだけでなく、生活再建の目途が立つ方に対応できるスピード感と柔軟性のある生活保護制度の運用を求めます。(例:医療扶助の単給のように、生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の単給を実施するなど)
2) 現行の生活保護制度は、車の所有は認められていませんが、交通空白地域や山間部、都市部においても、障害や病気、子育て等で、公共交通機関などの利用が出来ない等の理由でどうしても車の所有が必要な場合には車の所有が認められています。特例貸付の利用者の中にも、これらの理由で車の所有が必要な方々がいます。あらためて、生活保護制度において必要な場合には車の所有を認めることが出来るということの徹底を求めます。
3) 本人希望で生活保護を受けたくない方、基準に該当せず生活保護受給ができない方に対して、生活保護制度から生活困窮者自立支援制度へ確実につなぎ、返済負担を抱えながらも生活の立て直しができるよう、必要に応じて家計改善支援事業による「本人を真ん中にして、本人の生きる希望」に寄り添うなど、丁寧な支援の仕組みを求めます。生活保護制度と生活困窮者自立支援制度を含む支援が連携し合い、本人の生きる希望を本人中心のチームで支えていくための仕組みの構築を求めます。
4) 特例貸付が終了し、その償還が開始される今、多重債務による自己破産や、緊急小口貸付を必要とする方などが増加し弁護士等との連携も必要となっています。こうした相談に対応するため、生活保護や生活困窮者支援の現場の体制強化を求めます。私たち社協職員は、特例貸付を通して表面化した生活困窮課題を決して置き去りにしません。
2022年9月末をもって特例貸付の受付期間は終了しましたが、引き続き相談者一人ひとりの声に耳を傾け、コロナ禍でつらい生活状態にある方々へのエンパワメント支援を関係機関と進めていきます。また、個別的な課題としてだけでなく、新型コロナウイルス感染症がもたらした地域の生活課題として捉え、社協として福祉に限らない幅広い地域の関係機関や民生委員・児童委員、ボランタリー活動家等が連携・協働して、だれもがどのような状況にあっても地域社会の一員として「自分らしく生きられる地域づくり」を進めます。
私たち関コミは、引き続き特例貸付を通じて見えた「現場の社協職員の状況」、「困窮されている住民への支援のあり方」、「様々な課題に対応する地域福祉実践の広がり」などを把握し、発信し続け、地域の福祉に係る社会課題への問題提起(自覚)に努めるとともに、「住民主体の原則」に則った社会課題の解決に挑む地域福祉実践者(責任者)として、「自覚ある責任者」を実践する社協職員集団であることを表明します。
2022年10月22日
関西社協コミュニティワーカー協会役員一同
特例貸付受付期間終了に伴う意見表明.pdf賛同していただけます社協職員、関係者のみなさまは、このブログ、「意見表明」の拡散をお願いいたします。
意見表明についての問合せ先
関西社協コミュニティワーカー協会
kancomi1994@yahoo.co.jp
※関コミのメールアドレスについて、セキュリティ対策強化の関係で、メールアドレスを変更することになりました。