【レポート】多摩大学社会的投資研究所 第3回インパクト・サロン「フィランソロピーの革新〜アジアにおけるベンチャー・フィランソロピーの台頭〜」(2019年1月29日開催) [2019年01月31日(Thu)]
2019年1月29日(火)に多摩大学主催で開催された、「多摩大学社会的投資研究所 第3回インパクト・サロン『フィランソロピーの革新〜アジアにおけるベンチャー・フィランソロピーの台頭〜』」に参加しました。
こちらは、28日に開催された特別ラウンド・テーブルに続き、公開にて開催されたベンチャー・フィランソロピーをテーマにしたサロンです。 2日連続で同じテーマの場に参加することで、濃厚な理解ができました。(という気がしておます) 備忘録的なメモをブログにアップします。 【レポート:多摩大学社会的投資研究所 第3回インパクト・サロン『フィランソロピーの革新〜アジアにおけるベンチャー・フィランソロピーの台頭〜』(2019年1月29日開催)】 ◆講演 ロブ・ジョン氏(セント・アンドリュース大学) ●自己紹介 ・10年ぶりの来日。 ・セント・アンドリュース大学は、英語圏では3番目に古い大学。 ・80年代、ノーベル賞受賞者(ネギシ博士)のもとで化学の研究していた。 ・エチオピアのアジスアベバ大学に転勤した。 ・これが自分自身の大きな転機。 ・これがきっかけで、ベンチャーフィランソロピーにも関わることになった。 ・この20年間、ベンチャーフィランソロピーの分野に関わってきた。 ・自分自身のキャリアを振り返りながら、ベンチャーフィランソロピーについて話をしていきたい。 ![]() ●助成金 ・助成金を得るために申請し、Yes/Noの結果が出る。 ・このやり取りは、銀行ローンの申し込みなどと同じような取り引き。 ●NGOとの出会い ・OPPORTUNITY Internationalに参加。 ・このNGOの理事会は、その大半がドナーから派遣された人たちだった。 ・これが、ベンチャーフィランソロピーに気がついた原点。 ●財団との出会い ・WINという財団。 ・この財団は、Oxfam等のNGOへの支援 ・創業者がなくなる際、WINの傘下に各種事業を置くことで、死後の継続性の確保を図った。 ・OPPORTUNITY InternationalはWINから7年間支援を受けていた。 ・その後、WINへ。 ・金融業界の言葉や手法が、ベンチャーフィランソロピーの世界に次々と導入されていった。 ●ベンチャーキャピタルとの相違 ・共通項は、@優れた運営チーム、Aデューデリジェンス、B合意書、C積極的な投資家。 ・大きな違いは、エグジット戦略における金銭的リターンの有無。 ・ベンチャーキャピタルはIPO等により金銭的リターンを求めるが、ベンチャーフィランソロピーは社会的価値をリターンに求める。 ●事例紹介 ・Speaking Up ・学習障害をもつ成人を支援する団体。 ・小規模慈善団体の典型。初期は非常に緩やかな成長。 ・野心的なスケールアップを実現するには、小口の助成金ではなく、投資とアドバイスが必要となった。 ・成長の第3段階において、Impetus Trustというベンチャーフィランソロピーファンドからの投資を受けた。 ・これにより、いわゆる慈善団体から社会的企業への転換を果たした。 ・成長の第4段階は、合併。 ・BREAK THROUGH Fundというベンチャーフィランソロピーファンドからの投資を受け、合併を果たした。 ・このファンドからは、合併に向けたフィージビリティ調査や資金以外の支援等も受けた。 ●ベンチャーフィランソロピーファンドの提供サービス ・組織の戦略づくりの支援 ・人材に関する支援 ・ファンドレイジングに関する戦略的支援 ・財務や会計に関する支援 ・マーケティングや広報コミュニケーションに関する支援 ・法律関連の支援 ・IT関連の支援 ●ベンチャーフィランソロピーファンドのサービスの提供方法 ・人的サービスによる提供 ・パートナーシップによる提供 ・アソシエイト(会員等)による提供 ・コンサルタント(無償/有償)による提供 ●ベンチャーフィランソロピーの動向 ・2004年にEVPAを設立。 ・EVPAは30カ国275組織からなるネットワークへと発展。 ・個人投資家が限界を感じていたタイミングでEVPAが組成された。 ・AVPNが2010年に設立。 ・アジアの500以上の組織が参加。 ・行動中心のプラットフォームであることが最大の貢献。 ●フィランソロピー ・金融、人材、知見等の資源を社会のために戦略的に活用すること。 ・2004年当時は、助成金が主流だった。インパクト投資という言葉もなかった。 ・エクイティ型の投資を社会的事業者に投入した。 ・ベンチャーフィランソロピーと伝統的な助成の違いは、関与のあり方の違い。 ●アジアにおける動向 ・シンガポール国立大学でアジアに関する研究を行ってきた。 ・Giving Circleの研究。 ・https://robjohn.academia.edu/ ●事例紹介(Edelwise Group) ・上場した際に財団(Edel Give Foundation)も設立。 ・財団を通じ資金支援、本社を通じて社員による人材支援を実施。 ・社員のモチベーションアップにも。 ●ベンチャーフィランソロピーの担い手 ・必ずしも、企業や財団などでなくても、個人でも担い手になることは可能。 ・Giving Circleという方法。 ・Giving Circle. ASIAを参照。 ・この方法の重要な点は、NPOにリソースを提供できるだけでなく、Circleのメンバー自身の学びや成長になる。 ・SVP TOKYOの例。 ・SVP TOKYOのパートナーとソーシャルベンチャーが協働することで、社会的なインパクトを生み出すだけでなく、パートナー自身の成長も実現する。 ●おわりに ・ベンチャーフィランソロピーは参加型のアクティブモデル。 ・エコシステムを有効にするには、仲介役の役割が重要。 ・ベンチャーフィランソロピーへの参画機会は、@フィランソロピスト、A社会起業家、B行政、Cプロフェッショナル、D研究者など、様々な立場とアプローチ方法がある。 ・NETFlixでBillionsを観た。 ・この中で「Venture philanthropy is the future」というセリフが出てきて驚いた。 ![]() ◆質疑応答 Q.インパクト評価について? A. ・2008年に来日した際、SVP TOKYOはすでに活動していた。 ・ベンチャーフィランソロピーのユニークなところは、資金支援だけでなく、あらゆる支援手法を取る。 ・AVPNのサイトに、インパクト評価についても様々な情報が掲載されているので、ぜひ参照してもらいたい。 ・成功事例だけでなく、失敗事例から学ぶことの方が多い。 ・AVPNのサイトには、この失敗事例も載っている。 ・資料を読む、人と会って議論する、Giving Circleを立ち上げるなど、行動を起こしてほしい。 Q.エコシステムと仲介機能に関し、日本の現状やコメントは? A. ・昨日のラウンドテーブルで、簡単なワークショップを行った。 ・4つの立場(需要、供給、政府、仲介者)で議論。 ・みんなでマッピングし、答えられるようにしていくことが重要。 ・日本の現状は分からないが、ぜひ日本での把握を進めてほしい。 Q.日本でも休眠預金がスタートする。助成財団が果たす役割は?ユニークな事例は? A. ・英国では2000年代中頃に、この休眠預金の活用について個人が呼びかけた。 ・Big Society Capital が休眠預金へのアクセスを許可された。 ・2014年にこのBig Society Capitalの活動成果について評価が行われた。 ・2018年に報告書が出て、この仕組みを休眠預金以外の口座(忘れられた口座)についても応用しようという議論が出ている。 ・休眠預金は、将来の大きな資金源になるポテンシャルがある。 ・クリフ・プライヤー氏はBig Society CapitalのCEOをしており、日本の動向にも関心があるだろう。 ![]() Q.ベンチャーフィランソロピーの将来イメージは? A. ・より大きな文脈では、資本主義を見直そうという流れ。 ・グローバルなトレンドは、地球や社会への貢献と企業利益の両立、という流れ。 ・小さなNPOや小さな社会起業家が大きなインパクトを生み出せるようになる。 ・もう一つは、人材(知的資本)という資源をどうやってベンチャーフィランソロピーに活用するか? Q.最近のトレンド(ブロックチェーンなど)に関する関心は? A. ・私の話は大きなトレンドの一端にすぎない。 ・クラウドファンディングなどもある。 ・透明性の欠如が課題の一つ。 ・欧米では財団の情報開示(透明性)は進んでいる。 ・一方で、ベンチャーフィランソロピーファンドの情報開示(透明性)はこれからの課題。 ・若い世代が金融業界などから非営利の世界に入ってきている。 ・この若い世代が、金融業界の文化、言語、ノウハウも非営利に持ち込む役割も果たしていく。 Q.ベンチャーフィランソロピー自体が生み出す価値の評価? A. ・重要な質問。 ・ベンチャーフィランソロピー自体の評価が行われないのは偽善。 ・特に、自分たちを聖域扱いせず評価を試みる、アウトカム志向フィランソロピーと呼ばれる動きはとても大切なこと。 以上 |