2007年2月15日(木)に広島で開催しました、
【企業・市民活動団体の地域市民責任を考えるためのCSR勉強会】のレポートをお送りします!
中間支援組織とIIHOEさんとCANPANのコラボで展開している、このCSR勉強会、地域ごとの状況もよくわかります!
【レポート】■プロローグ 「CSRを考えるということ」川北秀人さん(IIHOE)
○IIHOEとは?
・市民団体のマネジメント支援がメインの活動。
・企業の社会責任・貢献の支援も行っている。
・環境社会報告書に第三者意見を執筆。最初に執筆したのが損保ジャパン(当時安田火災)であった。
○法的責任から社会責任へ
・法律を守るだけでは、顧客の信頼、品質の向上、ブランド価値の向上は得られない。
・法律を超えた取り組みが、持続可能な企業経営には必要。
・シェルの北海への廃棄物投棄の事例。
・リーバイスの途上国での児童労働への対応の事例。
・シェル、リーバイスともに、法的責任の範囲を超え、社会的責任を果たすところまで行動した。
○責任の3次元
・事項×対象×程度
・事項については、各種ガイドラインが整備されたことにより、網羅性は高まっている。
・ガイドラインは法律ではなく、あくまでもガイドラインだが、企業間のライバル意識が推進力になっている。
・法的範囲→日本でさすが→世界ですごい!まで、程度は様々。
○責任の対象
・本社だけ?連結子会社?
・調達先や販売先まで含めていかないと生き残れないという潮流が強くなってきている。
○コミュニケーションからエンゲージメントへ
・単なる報告としての報告書。
・市民との対話のきっかけとしての報告書。
・一過性の対話ではなく、継続的な対話へと発展。
・さらに、対話だけでなく、相手を巻き込んで相手の力を借りる、エンゲージメントまで発展。
・ステークホルダーは利害共有者のこと。
○日本の状況
・ISO9000やISO1401などにより、日本は品質管理や環境に対する企業の取り組みへの関心が高まった。
・アンケート調査によると、CSR、環境報告書を読んだことがあると答えた人が2割も?いた。これは日本の特異な状況。
○CSRの基本はEHS+C
・E=Environment(環境)
・H=Health(健康)+Human Rights(人権)
・S=Safety+Security
・C=Community(地域、テーマ社会)
○CSRからESRへ
・Corporate(トップダウン)からEmployee(ボトムアップ)へ。
・現場とつながるには、一番現場に近い従業員の関わりが必須。
・企業一社だけではなく、業界での取り組み、業界を超えた取り組みなども進みはじめている。
以上
○調査の概要
・東証一部上場企業のCSR報告書を対象に、情報開示度を調査。
・世間良し、売り手良し、買い手よしの3分野にそって、独自に48項目を設定し、各項目について情報開示がされているかどうかを点数化。
■CSR報告書の情報公開度調査から田村太郎さん(IIHOE)
○調査結果の概要
・情報開示度が高いのは世間良しの項目に多い。
・情報開示度が低いのは売り手良しの項目に多い。
・項目に触れてはいるが、肝心な内容の記述がない報告書も多い。
・グラフは掲載しているが数値は掲載していないなど。こういう報告書はむしろ読者の不信感を募る。
○NPOへの期待
・環境以外の分野での情報開示の促進。
・専門性を活かしてCSRでの協働を促進。
・新しい社会問題への関心の喚起。
・NPO自身もSRについて真剣に取り組むことが求められる。
・専門分野ではがんばっていても、その陰で別の問題を引き起こしていることもある。
以上
■ISO26000シドニー総会の報告/損保ジャパンのCSR活動について○環境問題
・MITの調査によると、米国民の環境問題における最重要課題は、2003年は6位、2006年は1位に
・地球温暖化より気候変動という方がふさわしい状況。
・気候安全保障という考え方が広がりつつある。
・大規模自然災害による保険金の支払額は増加傾向。
・損害保険会社にとって、環境問題は深刻な経営問題。
・損害保険会社として、「適応」と「緩和」の努力を行っている。
・自然災害そのものを防ぐことは難しいが、災害発生時の影響を少なくするための取り組みは行える。
○損保ジャパンの取り組みの事例
・廃車を減らすために、時価を超える修理費用を補償する保険商品。
・CSRレポートの作成は、当初は20名の社員で行っていたが、今では100名以上の社員が関わるようになってきた。これも社員のコミットメントが推進されてきたあかし。
○ISO26000の最新情報
・全ての組織に適用。
・第三者認証ではなくガイダンスである。
・マネジメントシステム規格にはしない。
・マルチステークホルダーによる規格づくりはISOでも初めての取り組み。
・マルチステークホルダーのコンセンサス(継続的に反対する人がいない状態)による進め方も特異。
・ステークホルダー間のバランスでは、労働団体からの参加が少ない。
・先進国と途上国の参加は、途上国の方が多くなった。
・発効は2009年後半になる見込み。
○社会的責任を定義する意義
・社会的責任とは、組織の意思決定と活動が社会や環境に及ぼす影響に対する責任。(暫定定義)
・社会的責任の定義が共通言語化されることは、ISO26000の大きな意義の一つ。
・ISOという実績、ブランド、ネットワークの上に、社会的責任が乗っかることの意義は大きい。
○なぜガイダンス文書なのか?
・社会的責任の概念はまだ発展途上なので、かっちりとした規範や規格にするのは?
・今後の取り組みの発展やイノベーションを促進したい。
・アドバイスやヒントとなることを目指す。
○ガイダンス文書が目指すこと
・産業界、政府、労働団体、消費者、NGOなど、各セクターがそれぞれの責任を果たす。
・これに加えて、各セクター単独では難しい課題の解決に協働して取り組む。
○エンゲージメントとは?
・互いに受容できる成果を達成するために、相互に自発的に協力的な関係を構築すること。
以上
■質疑応答○中小企業はどうやってCSRに取り組んでいくのか?
・本業の長期的な基盤に投資することが秘訣。
・中小企業は本業を持続するためにできることは?という視点でCSRを捉えることが重要。
・羊羹のとらやはWWFの会員になっている。これは、シンボルのトラが絶滅したら困るから。
・羊羹のとらやが温暖化問題に取り組むのは、国産大豆を使い続けたいから。
・香川県はうどん屋さんのための水保全マニュアルを作成。これは、うどん屋さんにとって根幹となる水を守ることが、うどん屋さんの持続的経営につながる。
・先行事例が無い場合は、先行投資することが将来的なリターンにつながる。
・従業員が本気で続けやすい課題に取り組むことが重要。社長の趣味では従業員はついてこない。
・専門性のあるNPOと協働すれば、自らの専門性がなくても取り組める。
・エコビジョン沖縄の「くいまーる」プロジェクトの事例。ジャスコだけでは取り組めないが、専門性のあるNPOが呼びかけ、サポートしていることがポイント。
○SRの定義は責任ではなく、社会貢献とした方がよいのでは?
・ISO26000の会議の中では、フィランソロピーや社会貢献はSRではないという意見も多い。
・CSRは社会貢献ではなく、課題解決そのものという意見。
○CSRの意味がはっきり分からない。(どうも素晴らしいことのようだが・・・)
○日本における児童労働廃止のための行動原則の意味は?
・日本国内では児童労働は身近ではないかもしれないが、サプライチェーンまで含めると他人事ではない。
・本社は関係なくても、調達先が途上国であれば、そこでは児童労働により生産されているかもしれない。
・最近は、日本国内でも児童労働の問題が発生している。中部地域の某下請企業。
・北海道でもホタテ加工業者で外国人労働問題が発生。
・サプライチェーンを考えると、中小企業のCSRは非常に重要な問題。
○損保ジャパンのCSRレポートへの株主の反応は?
・CSRレポートは株主に対してだけのレポートではない。
・アニュアルレポートは株主向けの財務状況報告を中心に。
・究極的には、CSRレポートとアニュアルレポートは一つになっていくだろう。
○損保ジャパンにおける社員の意識変化は?
・社員の意識調査を定点観測している。
・知識や理解は深まってきたが、行動につながっているかはまだまだ問題がある。
○他の企業に対してどのように働きかけていけばいいのか?
○最後に(川北さんから)
・ISO26000の動きは、今このタイミングで知ることが重要。
・そして、広島でどんどん広めてもらいたい。
○最後に(主催者より)
・地方の大都市だけでなく、地方の中小都市でも機会を提供してもらいたい。
以上
【企業・市民活動団体の地域市民責任を考えるためのCSR勉強会】■日時:2007年2月15日 (木) 18:00〜21:00
■会場:
広島YMCAホール2号館 4階405会議室 ■講師:
株式会社損害保険ジャパン CSR・環境推進室長
関正雄さん IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表
川北秀人さん IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]研究主幹、ダイバーシティ研究所代表
田村太郎さん■参加費:
企業・自治体/3,000円(お一人につき)
市民活動団体(法人格の有無不問)、個人/会員1,000円(お一人) 非会員2,000円
※会員とは、ひろしまNPOセンターの会員であることを示します。
■対象:
地域に根差した企業の経営者や支社・営業所の責任者の方、また、労働組合の幹部の方、地域に根差した活動を続ける市民団体のリーダーの方が主な対象ですが、自治体、社会起業家、学生の方で、CSRに関心をお持ちの方にもご参加いただけます。
■内容:
*プロローグ 「CSRを考えるということ」 /
川北秀人さん *損保ジャパンの取り組みとISO26000(質疑応答)/
関正雄さん *CSRが日本を変える!
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日本財団公益コミュニティサイトCANPAN CSRプラスのご紹介
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荻上健太郎(日本財団情報グループCANPANチーム)
*意見交換:「広島でCSRを進めるために」 フリップディスカッションなど
■主催:
特定非営利活動法人 ひろしまNPOセンター■共催:
株式会社損害保険ジャパン IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]■協力:
CANPAN(日本財団) EPOちゅうごく(環境省中国環境パートナーシップオフィス) 以上開催要項より引用