先日、規則改正に関する職員への説明会がありました。
今回の改正は、
1.育児休暇制度
2.職員寮制度
の2つについてでした。
説明会の趣旨は、
1.職員への説明
2.職員の意思確認(制度の改正には過半数以上の職員の同意が必要)
です。
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さて、2の職員寮については、
・元々「住宅に窮余する職員への福利厚生」である寮が、現状は「住宅に窮余していない職員」による利用が多い。
・独身寮のニーズに比べ、独身寮の部屋数が不足している。
・採用職員の高学歴化、多様化に伴い、採用時の職員年齢が高齢化している。
など、一言で言えば、当初の目的と現状のミスマッチが生じており、このミスマッチを改善することが目的の制度改正でした。
私自身は、そもそも、現在の寮そのものに問題があるのだから、寮のありかたそのものを改善しないと、問題解決にはつながらないと思いましたが、総務から「この改正は最初の一手であり、今後、寮の抜本的な見直しにも取り組む。」との説明がありましたので、私は、この制度改正に同意しました。
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問題は、1の育児休暇制度です。
今回の改正の内容の主なポイントは、
1.育児休暇を最長で小学校入学時まで約6年間取得できる。
2.時短勤務、時差勤務の制度は廃止する。
ということです。
では、この育児休暇制度の改正の目的はなにか?ということですが、説明によると、
・職員の育児支援
・財団の戦力確保
の2点ということです。
もう少し詳しくいいますと、
<職員の育児支援とは?>
親の存在がとても大切となる、出生から小学校入学までに時期に、親が子どもそばにいて、しっかりと子育てに取り組むことができるようにする。そのために、最長で小学校入学時までの6年間、育児休暇を取得することができるようにするということです。
つまり、日本財団の考える子育てとは、親性を尊重し、重要と考える「子育て」ということです。
<財団の戦力確保とは?>
日本財団には、職員数に定員があります。これは制度に決められているもので、好き勝手に変えられるものではありません。この定員というものがある一方で、近年は、業務の幅、量、質ともに、ますます大きくなってきており、今後も大きくなっていくことが予想されています。
そのため、財団経営としては、いかにして、増大する業務に対応できる戦力を確保していくか、ということが大きな命題となります。この命題に沿って考えた場合、時短勤務や時差勤務をする職員は、一人前の戦力として計算することができません。
つまり、財団としては、一人前の戦力として計算することのできない職員を雇用している余裕はもうない、ということです。
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私は、育児休暇制度については、不同意としました。
この説明会のあった夜、なんとなく心の中がもやもやしているので、ご飯を食べながら妻と話し合いました。またまた、妻との「語り場」です。そして、自分がなぜ不同意としたのか、なにが問題なのか、ということを自分なりに整理することができました。
私は、常々笹川会長がおっしゃっている、
・子は国の宝
・国の将来のためにもたくさん子どもをつくりなさい
・親の役割は子育てが第一である
という考え方にはすごく共感しています。
私自身、三人兄弟であり、母親が専業主婦でいつも家にいてくれました。
小学生のころ、家にファミコンやラジコンがいっぱいある友人がいました。すごくうらやましかったのですが、その彼の家は、いつ遊びにいっても誰もいず、その彼が玄関の鍵をあけて家に帰るのです。いわゆる鍵っ子ですね。
冬なんかは、家が冷え切ってて寒いんですよ。それに比べたら、うちにはファミコンもラジコンもありませんでしたが、家に帰れば必ず母親が出迎えてくれて、お菓子を用意してくれました。ま、とかいいつつ、そういう母親がいやで反抗してる時期もありましたけど。
話をもとに戻しますと、私自身は、「職員の育児支援」について、
日本財団の考える子育てとは、親性を尊重し、重要と考える「子育て」ということです。
ということには共感しています。
ですので、今回の制度改正の理由が、
・日本財団の考える子育ての価値観とは、親性を尊重し、重要と考える「子育て」である。
・この価値観においては、仕事と子育ては両立しない。
・職員にもこの価値観を理解してもらい、この価値観に沿って子育てをしてもらいたい。
・だから、この価値観を実現できる制度に改正する。
というものであれば、私としては同意ができました。もちろん、この価値観そのものに同意できない人にとっては、話は別だと思います。
こういうたとえが適切かどうか分かりませんが、
トヨタ自動車が会社の経営戦略として「今後は環境第一でいくので、そのイメージとそぐわないスポーツカーはもうつくらない」と決めたとします。ある職員が「おれはスポーツカーこそトヨタのイメージだと思って入社したのに、もうスポーツカーをつくらないとはなにごとだ」と言っても、「それが会社の経営方針なのだから、スポーツカーをつくりたければ、日産にいってください」と言われておしまいですよね。
価値観という意味で言えば、今回の話も同じことなんでしょう。
もちろん、労働者の権利やらなんやらがありますので、この話はもっと複雑だとは思いますが。
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さて、話を戻します。私がなぜ不同意だったのか?その理由探しの旅の続きです。
今回の説明では、もうひとつの目的として、「財団の戦力確保」があげられていました。
私は妻と一緒にあれこれと考えてみました。でも、考えた結果でた結論は、
財団の戦力確保と今回の育児休暇制度の改正を結びつけると必ず矛盾が生じる
というものでした。
どういうことか?
「財団の戦力確保」を掲げながら、今回の制度改正で、時短勤務や時差勤務を廃止するということは、時短勤務や時差勤務をする職員は戦力不足職員であるとみなす、ということです。
一方で、長期育児休暇を取得できる制度を新設しましたが、長期休暇取得後の処遇については、休暇中のキャリアを認めないことを前提としています。つまり、長期休暇取得後の職員は、休暇を取得しなかった場合に比べ、戦力不足であると位置づけていることになります。
時短勤務や時差勤務をする職員がいなくなることで、その戦力不足職員はいなくなります。しかし、長期休暇取得後の職員は戦力不足職員なのですから、やっぱり戦力不足職員が残ります。
さらには、この育児休暇制度の改正により、価値観に同意できない職員が出産を機に退職することがふえるかもしれません。そうすると、それまでその職員にたいして行ってた投資も無駄となてしまい、やはり、財団の戦力確保にはマイナスとなってしまいます。
ということはつまり、今回の育児休暇制度の改正を行っても、「財団の戦力確保」の問題解決にはつながらないということです。
したがって、「財団の戦力確保」を目的としてかかげ、今回の育児休暇制度の改正と結びつけてしまうと矛盾が生じるのです。
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説明会でも、総務より、「財団の戦力確保」の問題は、業務の改善や組織の改善など、他の手法とも併せて総合的に取り組んでいきます。その第一歩として今回の育児休暇制度の改正があるとの説明がありました。
総合的に取り組んでいくということには同意できますが、私の考えでは、育児休暇制度の改正は、「財団の戦力確保」の問題解決にはつながりません。問題解決につながらない制度改正は、残念ながら制度改悪になってしまう危険性があります。
私は、今回の制度改正に取り組んでいる総務チームとは同じ総務グループです。総務のみなさんが夜遅くまで残って一生懸命考えていたことはよく知っています。それに、規則の改正がどれだけ大変かということも、他のプロジェクトで経験しているので、とてもよく分かります。
ですので、正直いえば、今回育児休暇制度の改正に不同意するのは心が痛みました。同意しちゃおうかなとも思いました。でも、自分なりに信念をもたないと、総務のみなさんの努力をかえって裏切ることになる、そう思い直しました。
今回の規則改正がどういう結論になるのかは分かりません。
でも、自分なりに真剣に考え、そして自分の信念に基づいて行動したことは、自分の誇りだと思っています。
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ここまで記事を書いていたところ、総務から、就業規則の改正の趣旨に関するディスカッションの開催案内がきました。
どういう説明がなされるのかわかりませんが、もう一度話しを聞きにいこうと思います!