NPOメッセin関西2007の二日目は「市民活動フォーラム」です。
午後は分科会です。
分科会3
市民によるアドボカシーにNPOが果たせる役割とは〜その現代的可能性を探る〜をテーマに、
コーディネーター:仲川元庸さん(
奈良NPOセンター)
パネリスト:
・岩附由佳さん(
ACE)
・小林幸治さん(
市民がつくる政策調査会)
・山口祐子さん(
浜松NPOネットワークセンター)
以上のメンバーの方々でディスカッションが行われました。
浜松の山口さんとは、私がボランティア支援部時代に一緒にお仕事をして以来、8年ぶりの再会となりました。
それでは、分科会の内容について私なりのメモをお送りします。
【レポート】
NPOメッセin関西2007
市民活動フォーラム
分科会3「市民によるアドボカシーにNPOが果たせる役割とは〜その現代的可能性を探る〜」■分科会のテーマの確認
・アドボカシー=政策提言の3段階。
(1)ニーズを掘り起こす
市民一人ひとりの課題と提案の掘り起こし
(2)政策化する
課題解決に向けた政策化の取り組み
(3)政策を実行する
政策の実行・実現に向けて
■事例紹介
○その1(市民がつくる政策調査会)
・市民による政策提言のプロセス。
(1)円卓会議などによる問題提起
(2)ヒアリング・視察等による調査活動
(3)政策提言(提言書)の作成
(4)国会議員・政党への投げかけ(ロビーイング)
(5)シンポジウムの開催
(6)法案化
・「社会をつくり直す人びと」による10万人による提案を目指す運動。
・海外の事例:フランス大統領選挙における「パクト運動」
・NPOの役割:個々の日常活動を通じて、市民ニーズ(課題)の掘り起こしを行う。これが数年先の政策課題
・中間支援組織の役割:個々の市民団体の「市民ニーズ(課題)の掘り起こし」を、政策化・実現化する取り組み。
・課題:NPOによる政治への関与をどう考えるか?
・政策化して実現しないと意味がない。そのためには決定権をもつ政治家との関与も必要。
○その2(ACE)
・アドボカシー活動と国際協力活動
・事例:児童労働に反対するグローバルマーチ。
・「最悪の形態の児童労働」条約の制定と批准に影響。
・「これから」に対してアドボカシーは意味と強い力をもっている。
・事例:「世界中の子どもに教育を」キャンペーン。
・当事者性の担保をどう確保するか?南北格差、南の中のエリート層とそれ以外。
・政策提言できるだけの専門性が必要。
・「構造の中での政策提言」と「構造変化」のどちらを成果と考えるか?
・G8などの会議における議題設定の及ぼす影響が大きい。
・様々な違いを乗り越えて透明性を確保することの難しさ。
○その3(浜松NPOネットワークセンター)
・浜松NPOネットワークセンターの代表を10年と勤め、後任にゆずった後、これまでの活動を次につなげていくためには、政策実現できる立場にならなければと思い市議になった。
・NPOが地方議会から変えていく。政策提言といっても議会を変えなければ実現できない。
・当事者が中心になり、当事者から問題提起をしていかなければ、を掲げて活動してきた。
・政策提言できるようになるには、自分たちの活動の棚卸しも必要。棚卸しをすることで、比較対象を提供でき、提言の説得力が高まる。
・政策提言から政策連携へと発展。
・もともと行政を変えたいという意識がはっきりしていたので、行政とは積極的に組んできた。
・行政の下請けになってしまうと思う人は行政との協働に手を出してはいけない。
・行政との協働事業においては、事業に関係する委員の選定にも口を出す。いいなりにならないために。
■質疑応答
○市民の声をどう拾うのか?当事者意識を市民にもってもらうには?
・(岩附さん)つながりをどのように見せるのかに工夫をしている。
・(岩附さん)自分たちのこととして想像しやすい課題設定をする。チョコレートとその原産国、ODAは税金など。
・(山口さん)声は拾うのではなく、自分たちでつくっていく。
・(山口さん)当事者意識のない人たちに対しては、とにかく「見える」ようにすること。
・(山口さん)「楽しく・美しく・見える」ようにすることが市民活動では大切。
・(山口さん)自分たちの使命感を支えてくれる人たちは必ずいる。
・(山口さん)小さな成功例を出し続けること。成功例を出すことが「見える」ことにつながる。
・(山口さん)事業の中に学びの仕組みがあることも大事なポイント。自分たちも情報公開しながら学んでいく、事業は自分たちの学びのプロセスでもある。
・(小林さん)政策づくりには興味がない人の参加は難しい。
・(小林さん)正統性は大きな課題。声の大きな人の意見に左右されることも多い。
・(小林さん)期限を区切る、特に年度で区切る行政のやり方は問題がある。特に、最初は言いたいことが言い合える場(ガス抜き)が必要。
・(岩附さん)弱い人の声をどう拾うのか?アドボカシーは権力への挑戦でもある。
・(岩附さん)工夫と機転、既存の活動や仕組みを活用する。全部自前でやろうとしない。
○その声をどう伝え、どう実現するのか?
・(岩附さん)伝えたいことが伝わらないジレンマは、ホワイトバンドのときに痛感した。伝え方が足りず、お金が子どもたちに行くと誤解を与えてしまった。
・(岩附さん)NGOは自分たちが言いたいこと、伝えたいことだけにしか眼がいかないことが多い。相手の思いや立場、状況を想い、その声を伝えることが大切。
・(山口さん)障害者や在住外国人などの場合、当事者にはなれない。当事者意識をどうとらえるかよりも、事態をどうやって変えるかに注力する。
・(小林さん)社会をつくり直す人びとの10万人提案については、今のままではとても10万人を達成できないので、やり方は検討したい。
○NPOや中間支援の役割は?現場を知っているのか?
・(小林さん)正直、中間支援組織のメンバーはほとんど現場を知らない。
・(小林さん)多くの中間支援組織は体制が脆弱でいっぱいいっぱいのところが多い。
・(小林さん)特定非営利活動促進法のもと、とにかく法人数を増やすことが中心に進んできた10年。そして、そんな状況の中、ボトムアップではなくトップダウン的につくられた中間支援組織が多いのが原因の一つ。
・(山口さん)浜松の場合「現場」を知っている。地域デザインをしたいという思いで民設民営で立ち上げた。個々の課題ではなく、地域をデザインすることを自分たちの「現場」として課題設定し、問題解決型の中間支援組織として活動。
・(横田さん)制度が出来てきた一方で、制度と行政に振り回される現場がある。
・(長井さん)NPOの課題は経営力。経営力は実践の中で磨いていくしかない。中間支援組織は自らの経営力を問い直す必要がある。
・(山口さん)まさに経営力が必要なのはそのとおり。ただ、対価をもらえるサービスがつくりにくいのも実態。
・(山口さん)企業から学ぶことも多い一方で、公的なお金が循環する仕組みをつくっていくことが必要。
・(小林さん)NPO法人も法人である以上は経営が必要。
○活動を支える資源は?
・(小林さん)地方議員には政務調査費が出るので、議員と連携することで資金源として活用することも可能。また、日本財団等の助成金も上手に活用する。
・(岩附さん)アドボカシーには資金支援が出にくいので、仕組みだけはつくった。(ビジョンサポーター会員制度(一口10万円))
・(小林さん)未来バンクから融資を受けて事業を実施したときに、人からお金を借りて事業をすることの責任(返済責務)を実感した。
○パートナーシップ、連携の仕方?
・(山口さん)パートナーシップのためにはNPOも成果をきちんと明示していくことが必要。
・(山口さん)行政は予算と組織の枠の中でしか動けない。枠をつないであげるのがNPOの役割の一つ。
・(小林さん)愛知県の事例。NPOと自治体の協約をつくる。
・(小林さん)自治体ではお達しとして随意契約ができなくなってきている。このあおりがNPOにも及んでいる。
・(岩附さん)アメリカでは、政府の方針として、児童労働の疑いがある製品は調達しないというものがある。これがNGOの活動も後押ししている。
・(岩附さん)CSR調達に企業が取り組むためのサポートを行う。企業とNGOが対立するのではなく、サポートする関係の構築。
・(山口さん)予算・決算委員会を市議会でどのように取り組んでいるかを調べてみてほしい。その市議会の姿勢や実力が分かる。
○どのような成果が生まれるのか?その評価は?
・(岩附さん)評価をするには、事業を始める前に成果と指標を定義しなければいけない。
・(岩附さん)最初は計画どおりに実行できたかどうかを中心に評価していたが、アドボカシーについてはそもそも成果を何と定義するのかが難しい。
・(岩附さん)評価をしようとすることで、自分たちの活動を振り返る指標やきっかけにもなる。
・(岩附さん)行動が変わらないと意識が変わったことにはならない。行動の変化が評価の指標にもなる。
○市民への伝え方、巻き込み方?、無関心層への働きかけ。
○易しくなりすぎるリスク
○マスコミの扇動、マスコミとの良い関係は?
・(山口さん)マスコミといっても多様(日本のマスコミは個性が少ないが)。同じ新聞でも記者によって全然異なる。
■最後に一言
・(岩附さん)キャンペーンだけではアドボカシーではない。変化が起こせないとだめ。
・(岩附さん)アドボカシーの関わるグループをつくることも一つの手法。教育協力NGOネットワークもその事例。
・(山口さん)地域の中で多くの人が変えたいと思っている課題を取り上げ、それを政策化し実現する。
・(小林さん)市民社会をどうやって強くするか?が自分の根底課題。常にこの根底を振り返りながら取り組んでいきたい。
以上