【レポート】soar conference 2018「語り」(2018年12月8日開催) [2018年12月10日(Mon)]
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2018年12月8日(土)にNPO法人soar主催で開催された「soar conference 2018「語り」」に参加しました。
浦河べてるの家と日本財団は長いお付き合いがありますが、私個人は今までご縁がなく、向谷地さんのお話は初めて聞きました。 統合失調症のことはまったく分かりませんが、「ある意味では、ディズニーの世界が見える、感じることができる人たち」という表現はとても分かりやすかったです。 毎年何千人という人たちと40年以上に渡り向き合ってきた向谷地さん。次世代にバトンタッチしていくことに、静かな炎を燃やされているのが印象的でした。 ドミニク・チェンさんも、しっかりとお話を聞くのは初めて。文章の生成過程を可視化するタイプトレースの紹介はとても興味深かったです。 最後に対話と共話の話を駆け足でしてくれましたが、主語を共有しながら会話が進むという、極めて日本人的な世界。この日本人的な「あいづちの環」の世界が、インターネットの対話的世界による喪失していくのではという問題提起には考えさせられました。 備忘録的なメモをアップします。 【レポート:soar conference 2018「語り」(2018年12月8日開催)】 ◆session1「当事者と語り」 向谷地生良氏(浦河べてるの家 理事/ソーシャルワーカー/北海道医療大学教授) 鈴木悠平氏(NPO法人soar理事/LITALICO発達ナビ・LITALICO仕事ナビ編集長) ●向谷地氏 ・べてるの家の妄想祭りの紹介。 ・「部屋でペガサスを飼っている」と思っている人など。 ・統合失調症という、様々な幻覚、幻聴、妄想、心の難しさを持つ人たちが一緒に暮らしていくにはどうしたらよいのか? ・発見したのが「語ること」だった。 ・統合失調症の人は、社会や世界の現実を鋭く感じ取り、イメージすることができる人たち。 ・ある意味では、ディズニーの世界が見える、感じることができる人たち。 ・統合失調症とはと問うたら、「五感が幻になる体験」と答えた。 ・日本の精神医療は、専ら薬による治療。 ・結果として、世界中で日本だけは精神病床が増え続けている。 ・子どもの虐待をしてしまう母親に、人の前で話をしてもらう場を設けた。 ・その方は「黒い男のささやきが聞こえる」とのこと。 ・会場で、「みなさん、せっかく黒い男の人が会場に来てくれましたので、拍手でお迎えしましょう」とみんなで拍手したところ、「黒い男が笑った。笑っているところは初めてみた」とのこと。 ・「消えたくない。寂しい」と黒い男が言ってきた。 ・それからしばらくして、その方が訪ねてきた。 ・「幼少期の寂しい自分がしてもらいたかったことを、黒い男が連れてきてくれていたと思ったら、気持ちがスッと楽になり、受け入れることができるようになった。」とのこと。 ・語れないで生きてきた人たちが、自分たちのことを語ること、語れるようになること、することが「当事者研究」。 ・相模原事件の容疑者は「ヒトラーの思想が降りてきた」と話していた。 ・2016年3月、米マイクロソフトが人工知能の実験を中止。人工知能がヒトラーを礼賛する発言を繰り返すようになってしまった。 ・メルロ・ポンティの知覚の現象学。身体化。 ・語ることをやめない、あきらめないことが大切。 ・対話は社会の濾過機能を持つ。 ・対話を通じ、対話を重ねることで、汚れや不純物が濾過されていく。 ・ネット社会の浸透により、この濾過機能が喪失されてきている。 ●鈴木氏 ・当事者が感じていることを、周りの人がどう受け止めていくのか? ・本日が現実のものとして感じていることを、馬鹿にせずに受け入れる文化がどのように培われていったのか? ●向谷地氏 ・ねらいや目標をさだめていたわけではなく、一緒に生き、そしてありのままに発信してきた。 ・病気の質も変わってくる。 ・受け入れられない社会にストレスを感じ、病気になっていく、病気が悪化していく。 ・「うつ」もうつになる力を持たされている。 ・人間は本来、一定以上のストレスがかかると体がブレーキをかけてくれる機能で守られている。 ・それを社会は病気とレッテルしてしまう。 ●鈴木氏 ・「病気になる力」という話が印象的。 ・幻覚や幻聴まではいかなくても心のつらさを抱えている人、べてるの家にいない人たちも、コツのようなものは? ●向谷地氏 ・ソクラテスは、対話を中心に社会をつくると、暮らしやすい、生きやすい社会ができると気がついた。 ・2000年代に入り、ビジネス領域で対話が重視されるようになった。 ・会話と対話の違い。 ・「一緒に研究しようか」と言えた瞬間に、自分も相手も楽になれた。 ・まずは自分と対話すること。他人行儀に自分と対話する。 ・その際には、研究という意識で向き合うと対話しやすい。 ・対話を意識して自分の暮らしを立て直してみること。 ●鈴木氏 ・研究ということが、成功と失敗に限らず続けていけることになる。 ●向谷地氏 ・ここ10年くらいのノーベル賞受賞者を調べると、計画通りではなく、失敗から想定外の結果が生まれ、世紀の大発見につながっている。 ●鈴木氏 ・研究という発想がないと、当事者と支援者、支援する側とされる側というような関係性になってしまいがち。 ●質疑応答 Q.強い言葉やトゲのある言葉に、自分や周りの人が傷ついてしまうこともある。そういう時はどうしたらよいか? A.(向谷地氏) ・傷ついた時は、素直に「今の言葉に傷ついた」と言うようにしている。 ・その人自信も聞いており、本人が一番傷ついている。自分以上にその人の方が傷ついている。 ・「そんな厳しい言葉を吐くことで、つらくないの?良いことがあるの?」と問い返すようにしている。 ・「周りに吐くことで、リストカットする下ごしらえしている」と答えた人もいた。 ・問い返すことで対話が生まれ、発見につながる。 Q.良い対話とは?良い対話が生まれる場をつくるには? A.(向谷地氏) ・対話はこれから始めるものではなく、対話の中に生きている。対話的関係の中に生きている。 ・人間の体も、脳が命令しているのではなく、全ての臓器が対等に情報交換し、対話をしている。 ・まずは、対話のネットワークの中に存在し、対話の中に生きていることを意識すること。 ・べてるの家も「あんたたちのようなおかしな人たちが会社つくったって上手くいくわけないでしょ」と言う口の悪い人に触発され、みんな燃えたから。 ・全ての会話は、なんらかの糸口につながると、半ばやけくそに思うこと。 ・コツとしては、嫌いな人のことこそ、裏で陰口を叩かず、意地になって良いことを言い続ける。 Q.環境は良くなってきているにも関わらず、虚しさがとまらない。回復するとなぜ虚しくなるのか? A.(向谷地氏) ・回復する時、夢から覚めたように現実が見えてしまう。 ・仕事ができ、友だちができ、夢も持てるようになると、虚しさもやってくる。 ・虚しくなるということは、ある意味では大成功ということ。 ・虚しさは人が本来持っていることだから、それをごまかさない。 ・虚しさは人間の本来的テーマでもある。 ・思想、哲学、宗教も、ある意味ではその虚しさを見つめるために生まれたもの。 ・仕事を得る、お金をもらえるということは、ちゃんと虚しくなれるということ。おめでとうと言いたい。 Q.言葉は命。命のやり取りとも言えるが、傷つくようなやり取りについてどのようにしているのか? A.(向谷地氏) ・たしかに命のやり取りではある。 ・サラッと傷ついたと言うようにしている。 ・鷲田きよかつ氏「対話の可能性」は読んでみてほしい。 ●鈴木氏 ・ミニワーク:自分が好きなことを共有する。 ●最後に一言(向谷地氏) ・若い人が多くてワクワクする。 ・40年分の経験のエッセンスを次の世代にバトンタッチしていく。 ・毎年何千人という人たちと出会い、向き合い、そこから生まれた経験と言葉。 ・循環していくためにも、あきらめない、やめないことが大事。 ・これまでの医学では、健康寿命は食事と運動。 ・AIが導き出したのは、図書館に通い、本を読む人。 ・これは、好奇心や関心、調べることに起因しているのだろう。 ・デザイン思考の次はリサーチ思考ではないかと思う。 ・当事者研究ネットワーク。 ●鈴木氏 ・自分も受け継いでいく一人である。 ・「当事者の語りは獣道」 ・べてるの家のみなさんの活動も、獣道をかきわける中で見えてきたもの。 ・べてるの家の当事者研究ノートに出てくる「いつでも、どこでも、どこまでも」が好き。 以上 ◆session2「インターネットと語り」 ドミニク・チェン氏(早稲田大学文学学術院 准教授/NPOコモンスフィア 理事/株式会社ディヴィデュアル共同事業者) モリジュンヤ氏(NPO法人soar理事/株式会社インクワイア代表取締役) ●自己紹介 ・研究者をしていると、自分がやっている研究の楽しさを分かってもらえないことが多い。 ・分かち合えた時の喜びが半端じゃない。 ・人類がみんな研究者になったらよいのにと思ったりもする。 ・対話のろ過装置が失われているという向谷地さんのコメントに共感。 ●インターネットやテクノロジー ・風刺画のSeve Cutts氏。 ・テクノロジーが進化する中で、新しいテクノロジーとの向き合い方、新しい文法を見出さないといけない。 ・学生と話をしていると、自分が歳を取っていることを感じる。 ・自分の粒度と学生の粒度が違う。 ・自分の価値観を押し付けることになってしまうという恐れ。 ・違いと本質を考えていこうということを研究している。 ・「読むことは書くこと」 ・読むという行為のうちに、すでに書くという行為が頭の中で始まっている。 ・ドナルド・ショーンの「reflection in action」 ・「聴くことは話すこと」 ・聴くという行為のうちに、すでに話すという行為が始まっている。 ・初めてメールを送った時の感動は今でも忘れない。 ・ツイッターのアラブの春。一方でフェイクニュースも。 ・黎明期から、良いことだけではなく、ろくでもない事もたくさん起きている。 ・あきらめるのはヤダ。 ・リスクを批判するだけでなく、創っていくこと。 ・10年前にインターネット企業を設立した。 ・riguretoという匿名掲示板サービスを2008年9月に始めた。 ・凹んだことを打ち明け、みんなで共感しあうサイト。 ・ブレストで出たアイデアを5日間くらいでつくったが、Yahooトピックスに取り上げられ、一気にブレイクした。 ・その時に、インターネットの可能性を感じた出来事があった。 ・話題になると荒らしユーザーがやってくる。 ・荒らしユーザーの行為に、riguretoのユーザーが「どうしたの?」「大丈夫?」と声をかけ始めたら、荒らしユーザーが更生し始めた。 ・コミュニティが生き物であることを感じたのが、原体験。 ・悩みは、生きている限り発生し続けるもの。 ・悩みをなくすのではなく、向き合っていくこと。 ・2015年にはpicseeというチャットサービスをローンチ。 ・言葉ではなく、イメージや写真を相手に送るというサービス。 ・当時、Lineでのやり取りに事務的な虚しさを感じていた。 ・2016年にはシンクルという、匿名で趣味(偏愛)を語ることができるアプリをローンチ。 ・今はCampfireに事業譲渡した。 ・様々な偏愛(ドアノブが好き、素数が好きなど)の存在に驚いた。 ・タイプトレースというソフト。 ・文書が出来上がるタイピングプロセスを記録する。 ・2016年12月に文学の触覚展を開催。 ・研究論文にもなった。 ・息遣いが画面越しに感じれれる。自分に話しかけられているような感覚。 ・テキストの再生を通じて、書き手の存在感を感じられるということを発見した。 ・ウェブ版のタイプトレースもリリース。 ・書いたプロセスを再生すると、ポジティブな感情反応が大きくなる傾向が見られた。 ・相手の存在感を感知することが、コミュニケーションの広がり、深まりに影響を及ぼす。 ・視覚的コミュニケーションだけでなく、触覚的コミュニケーションを伴うことで、より存在感を感知できる。 ●モリジュンヤ氏 ・インターネットの匿名性について? ●チェン氏 ・フランスの教育を子どもの頃から受けてきた。 ・フランスの場合、匿名性に逃げ込むなという価値観。 ・匿名と顕名という2次元の構図ではない。 ・居心地の良いBarのような感じ。ほどほどの顕名性(紹介)はありつつも、無理には深入りしあわない。 ・極一部の有名ユーザーだけが発信し、一般の人たちはクローズした中だけで発信している。 ・あいちトリエンナーレ2019「情の時代」by津田大介氏に新作のタイプトレースを出展。 ・匿名の伝言をタイプトレースで見える化し、展示する。 ・情報と書きつつ、情けも報いもない状況になっている。 ・「Webでも考える人」というサイトで「未来を思い出すために」というタイトルで連載。 ・その中で、娘への遺言(死後の共話)を書いてみた。 ・友人と2人で書き、10分以内で、誰か一人に対して書くというるーるの中でやってみた。 ・初めは悲しいトーンだったが、書いているうちにポジティブな内容に変わっていった。 ●モリジュンヤ氏 ・インターネットの登場により、誰もが発信者になれ、誰もが思想を語れるようになった。 ・インターネットで社会は優しくできるか?というテーマでイベントをした。 ・みんな役割やレッテルがある。 ・その際に、家入一真氏と役割から時には逃げられることの必要性について話し合った。 ・肩書きやレッテルから変えていくというのも面白いこと。 ●チェン氏 ・ウェルビーイングについて。 ・ポジティブコンピューティング=人がより良く生きるための情報技術。 ・「幸福」は背後の要因を分解するのが難しい。1次元的。 ・「ウェルビーイング」は独立した構成要素に分解する。要素に分解することで評価ができる。 ・例:セリグマン氏は、人間関係、達成感、ポジティブ感情、没頭などの要素に分けた。 ・「芝の家」プロジェクト。 ・あなたにとってのウェルビーイングを3つの要素で教えてと聞く。 ・同じ人でも、一月後に同じ質問をすると、全く違う答えが返ってくる。 ・誰かの定義に従うのではなく、自分なりの、自分の心に素直に向き合って答えることが大事。 ・日本的なウェルビーイングの構成要素は、@個(自律性(autonomy))、A他者(思い遣り(compassion))、B整合(受け容れ(acceptance))の3つ。 ・@自ら選択肢を作り出し、A他者のウェルビーイングを意図し、B世界との関係性を受容するための整合性を生むこと。 ・日本的とは、良くもなるし、悪くもなる、振り子的。 ・セリグマン氏のポジティブ心理学は、日本に来て、日蓮宗のお坊さんたちと話をしているときにインスピレーションを受けた。 ・「相手が嬉しかったことについて話す時に、その時の状況を思い出せるような質問をする」これが秘訣。 ・「そうなんだ」と相槌を打つのはNG。 ・表象と喚起は異なる。 ・一番喚起的なメディアは俳句や短歌。 ・soarの良いところは、18,000字であること。これは論文並みのボリューム。 ●質疑応答 Q.ウェルビーイングにおいて、@自律性について、福祉の現場への展開は? A.(チェン氏) ・予定はない。 ・心理と法務のプロにも参画してもらいながら、慎重に。 Q.タイプトレースは面白い。書き直しなものが本音であるとは限らない。布団の中で浮かぶことも多い。それをどうやって変換していけるか? A.(チェン氏) ・削除した文章にこそ、面白さがある。 ・削除した文章を切り出す機能を実装してみたこともある。 ・関係性に起因する。 ・誰に向けて書くのか、自分のため?読者のため?それによっても異なる。 ・関係性の中で、失敗してもよい、つまんなくてもよい、という関係性をつくれるかどうかが大切。 ・安心して実験し、失敗できる関係性。大学でも職場でも。 ●共話について ・対話(Dialogue)と共話(Cologue) ・水谷信子氏(言語学者)が研究した概念。 ・二人以上の話者が、主語を共有しながら、会話が進んでいく。 ・Aさん「今日天気いいね」B「気持ちいいね」 ・日本語は「あいづちの環」の世界。 ・英語や仏語では通じない、成り立たない世界。 ・全部を言わなくてもわかってくれる相手がいることの気楽さ、心の温かさ。コタツのような感じ。 ・インターネットは、この共話的な世界を喪失させることにつながっているのではないか?という問題提起もある。 以上 |







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