【レポート】2009年・企業とNPOがともに考えるCSRセミナーin札幌(2009年2月23日開催) [2009年02月24日(Tue)]
昨日、北海道札幌市で、北海道NPOサポートセンターさん主催により、
2009年・企業とNPOがともに考えるCSRセミナーin札幌 〜世界一簡単なCSR報告書の作り方〜 が開催されました。 このセミナーには、40名(荻上カウントで)の方にご参加いただきました。 みなさま、どうもありがとうございました! 【一言】 札幌のセミナーには、神戸から16時間の移動でようやくたどり着けたこともあり、特別な感慨がありました! 今回は、地元札幌を中心に多くの企業の方にもご参加いただきましたので、苦労した甲斐があったなぁと、自分勝手な都合ながらしみじみ感じました。 【レポート】 2009年・企業とNPOがともに考えるCSRセミナーin札幌 〜世界一簡単なCSR報告書の作り方〜 ■講義「地域の会社が本気でCSRしなきゃいけない10の理由」 川北秀人さん(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]) ![]() ○IIHOEとは? ・市民団体の運営のお手伝いをしている。特定の地域ではなく、各地を飛び回っている(流しの支援センター)。 ・年間の予算規模は約5500万円。そのうちの6割は市民団体の運営サポートから。2割は行政の協働、2割は企業のCSRなど。 ○CSRレポートについて ・日本の企業でCSRレポートを出しているのは1000社くらい。 ・CSRレポートを読むときには、まずは目次に目を通してほしい。その企業がレポートで何を伝えようとしているのかが分かる。 ・パンフとレポートの違いは何か?パンフは自分たちに都合が良いことだけ書けばよいが、レポートは不都合なことも書く必要がある。 ・CSRレポートの末尾には第三者意見がある場合がある。 ・監査と第三者意見の違いは何か?監査は報告内容の正否を問うが、第三者意見は取り組みそのものについて問うもの。 ・前年度の第三者意見に対して、翌年度にどう取り組めたのかの回答も求めている。 ○CSRとは? ・CSRは社会責任全般のことで社会貢献活動ではない。 ・CSR活動は×(頭痛が痛いというの一緒)、CSRの取り組みが○。 ・CSRは企業の社会における全ての責任のこと。社会的(っぽい)責任ではない。 ・大きな会社には大きな期待と責任が、小さな会社にも小さな期待と責任が。すべての会社に責任があるということであり、できるできないという話ではない。 ・CSRは、地域の企業が地域で生き残るために必要な、すべてのこと。 ・船場吉兆や赤福も、法律違反が問題だったのではなく、消費者の信頼を裏切ったことが社会問題になった。 ・なぜ障害者を雇用するのか?社会貢献のためではなく、それが自社の利益につながり、生き残ることに必要だと判断したため。 ・リーバイスは途上国で児童労働の問題が起きたときに、法律を超えた対応(教育機会の提供)をした。 ・一方でナイキは、児童労働しない宣言をしたが、翌年に監査を行ったらまだそのままだったので、不買運動が広がった。 ・ユニクロの障害者雇用率は7.3%。これは法律を超えた取り組みだが、あくまでも本業の売り上げを考えてのこと。 ○法律を超えた社会責任を果たす ・法律の変化よりも社会の変化の方が早い。 ・安全と安心は異なる。 ・安全であることを主張しても安心に結びつくとは限らない。安心はお互いの関係性に基づくもの。 ・原発で事故があった後に、企業側が安全です安全ですと言っても、地域住民は安心と重うとは限らない。 ・白い恋人も事件後に品質管理を徹底しているからこそ消費者の信頼を回復してきた。 ・対話を通じて責任範囲を確認し、期待に応えていく。 ・お互いの関係性を築くためにも、不都合なことも含めて日頃から情報開示していくことが必要。 ・社会変化の激しい時代だからこそ、まずはしっかりと守りのCSR(華やかさがないが大事なこと)に取り組む。 ○CSRからSRへ(ISO26000) ・ISO26000が2010年に発効予定。 ・CSRからSR(すべての組織の社会責任)へ。 ・産業界、NPO、消費者、労働者の代表が策定に参加している。 ・自主目標設定、自主取り組み、自主開示して社会に評価、という自主性を基本とするガイドライン。 ・この自主性という考え方は、日本の産業界が提案したこと。だからこそ、自信を持って、責任を持って向き合ってもらいたい。 ・NPO自身も社会責任を果たしているのか?が問われる時代がやってくる。 ・ISOの範囲はとてつもなく広い。 ・ネスレは以前にアフリカで粉ミルク販売の大キャンペーンを展開したが、不衛生な水しか入手できない人たちへの配慮がなかった。 ○本気でCSRしなきゃいけない10の理由 ・守りのCSR(それをしないと会社の持続が危うくなる)と攻めのCSR(それをすることで会社の強みを高めることができる)。 ・CSRで大事なことの一つが関係者の関係性を良い状態で維持すること。そして、この関係性は中小企業ほどCSRは取り組みやすい。 ・自治体も本気でSRに取り組まないと生き残れない。(暮らしやすい、働きやすい、育ちやすいまちとそうでないまちの差が大きくなる) ・コンプライアンスは法令遵守だけでなく、法令と期待にきちんと応えること。 ○どう始めるか?どう進めるか? ・CSRは小さな会社ほど関係者が少ないので取り組みを始めやすい。 ・まずは本業の基盤の強化、持続性向上につながるところに目を向ける。 ・日本でもっとも進んだ取り組みをしているのはデンソー。デンソーは現場で小集団活動がきちんと機能しているから。 ・CSRは伊達や酔狂で取り組むものではなく、本業を守り抜くために取り組むもの。 ・千葉県の大里綜合管理の取り組みや山口県のミチガミ医院の取り組み。 ・朝日酒造(久保田)の取り組みも社員自らが始めみんなで取り組んでいる。 ・ただし、これは自然保護が目的ではなく、久保田というブランドを存続していくために自然保護が必要だったから。 ・運送会社でのエコ安全ドライブの取り組み。エコドライブに取り組んだら、結果的に事故が半分に減った。そして事故が減ったので保険料が大幅に下がった。 ・本業をいかに生きながらえさせるかが柱になり、そのために従業員が本気で取り組める。 ・同業他社と一緒に取り組むこと、あるいは地域の他者と一緒に取り組むことで、結果的にお互いの利益や存続につながることもある。 ・企業は地域のNPOのユーザーになってもらいたい。 ■事例報告その1「北海道内でのCSR事例」 加納尚明さん(札幌市市民自治推進室) ![]() ・NPO法人札幌チャレンジドから市役所に出向中。 ・地元企業71企業を訪問しマーケティング調査を実施。 ・札幌企業市民活動研究会(通称:さっぽろまちづくり研究会)を設立。 ・企業にも無理なく企業市民として活動に参加してもらいたいが、そのためにはアイデアが勝負。 ・元気ショップの応援団に企業にもなってもらいたいと考え、元気ショップの存在を知ってらもうための説明をしてチラシを置いてもらうように働きかけた。 ・明治安田生命とイオン北海道の2社が協力してくれた。 ・札幌市役所の13階南側に市民自治推進室があるので気軽に連絡してほしい。 ■事例報告その2「北海道内でのCSR事例」 石井さん(合資会社neeth) ・網走の株式会社丸力朝倉商店の事例。 ・産業廃棄物になった魚(ほっけ)を加工食品化(「雪ぼっけ」という商品名)。 ・社会貢献ではなく本業の経営課題に対する思いから取り組みを開始した。 ・小ぼっけは食用としては活用されないという状況に対するもったいという認識。 ・海洋環境を守らないと水産資源が消えてしまうということへの認識。 ・地元に雇用の場がなく若者が去っていく、障害をもっている人が働けないという状況。 ・産地偽装疑惑などで業界全体に激震が走っていた。 ・雪ぼっけの売り上げの1%を海洋資源の保護への寄付へ。 ・初年度の取り組みのコストは1500万円。次年度にはコスト回収できそうな状況。 ・スタートしてはうまくいってるが、まだ認知度が低く、ムーブメントにもなっていないのが課題。 ○川北さんから ・業種別の取り組みをまとめるような動きがあってもよいのでは。 ・札幌市も発注者側の強みをうまく活用するとよい。 ■話題提供「地域の企業のCSR推進を応援するウェブサイトのご紹介」 荻上健太郎(日本財団CANPAN運営事務局) ■ワークショップ(身の丈からCSRを実践するために世界一簡単なSRレポートをつくってみよう!) ○個人ワーク ・A3用紙を二つ折りし、1枚目の上半分「社名(団体名)、企業理念・行動原則、事業概要、事業の経緯」、2枚目の下半分に「安全に関する、これまでの取り組み、今後の取り組み」、裏の上半分に「人権・健康に関する、これまでの取り組み、今後の取り組み」、裏の下半分に「環境に関する、これまでの取り組み、今後の取り組み」を書いてみる。 ○グループワーク ・他社・他者のつくったレポートを読んで、第三者意見を書いてみよう。 ・付箋(企業の方:緑、市民団体の方:ピンク、行政の方:黄色)に「助言・提案」「気付きを与える質問」を書く。 ・もらった付箋をもとに意見交換(=ステークホルダーダイアローグ)。 ○川北さんからコメント ・せっかくなので課題も記載するようにした方がよい。 ・出来てることも出来てないことも書くことが次につながる。 ![]() ■質疑応答 Q.大企業には様々な経営資源があると思うが、どうアプローチすればよいのか? A.NPOは私たちを応援してくださいというアプローチはだめ。これは恵んでくれというのと変わらない。 経団連も協働という考え方を重視している。どちらかからの一方的な関係ではなく、ともに課題を解決するために手を結ぶという考え方。 日産がワークライフバランスに取り組むのは、車の購入時の意志決定に助成が関わるのは6割もあるから。販売店にも助成の社員が必要だということに気がついた。 Q.協働といいつつ行政はNPOを下請け化しているこの状況は? A.個別の事象ではなく、手続きそのものを事前に合意することで対抗していく。 合意は紙にすること、記録が残る形式(文書やメール)でのやり取りをすることなど。 ■開催要項 開催要項はこちら 以上 |