【レポート】CSRセミナーin名古屋「地域を育てる企業に変わる!〜ISO26000を経営戦略に活かすために〜」(2009年2月4日開催) [2009年02月05日(Thu)]
昨日、愛知県名古屋市で、地域の未来・志援センターさん、参画プラネットさんの主催により、
CSRセミナーin名古屋 「地域を育てる企業に変わる!」 〜ISO26000を経営戦略に活かすために〜 が開催されました。 このセミナーには、69名(荻上カウントで)の方にご参加いただきました。 みなさま、どうもありがとうございました! 【一言】 今回のセミナーは豪華なキャストになりました。 ISO26000策定の日本メンバーの中心人物である関さん、世界でも最高水準でCSRに取り組むデンソーのCSR推進室長の岩原さんをはじめ、地域を代表する中間支援組織のみなさんやマネジメント支援の第一人者である川北さん、さらには「天然CSR」という言葉生みの親である村田さんなどなど、まさに名古屋に集結!という感じでした。 ともすると、メンバーが豪華になると通り一遍のコメントだけで時間が終わってしまうことが多いパネルディスカッションですが、今回は、コーディネーターの方がしっかりとマネジメントしていただいたので、短い時間でしたが濃縮された中身になったと思います。 たくさんの話が出たので、ちょっと頭がウニ状態ですが・・・・自分なりに印象に残ったことは、 ・結局は人づくりなんだ!(社員として、家族として、親として、子として、市民としてなどなど) ・CSRって突き詰めると一人一人の市民としての責任なんだ! ってことです。 【レポート】 CSRセミナーin名古屋 「地域を育てる企業に変わる!」 〜ISO26000を経営戦略に活かすために〜 ■基調講演「地域企業の社会的責任への取り組みについて〜ISO26000最新動向説明会〜」 関正雄さん(株式会社損害保険ジャパン) ![]() ○CSRとは? ・欧州委員会の定義から。 ・キーワードは、「持続的なビジネスの成功」「ステークホルダーとの交流」「自主的」「本業への統合」。 ○ISO26000の動向 ・2010年9月に発効予定。 ・認証基準ではなく手引き(ガイダンス)である。 ・社会的責任は企業だけでなくすべての組織が果たすべきことであるという考え方のもとに検討がスタート。 ・2008年9月のサンチアゴ会議で、ワーキングドラフトからコミッティードラフトへとステージが上がった。 ○ISO26000における社会的責任 ・「持続可能な発展」「ステークホルダーへの期待」「国際的な行動規範の尊重」「統合」「関係の中で」というキーワード。 ・社会的責任に関する課題は大項目で7項目に整理されている。 ・社会的責任に取り組むことによるメリットや中小企業向けのアドバイスも盛り込まれている。 ・大企業には大企業なりのメリット/デメリットが、中小企業には中小企業なりのメリット/デメリットが。 ○社会的責任における消費者行動の重要性 ・消費者の行動が及ぼす影響の大きさ、重要性。 ・ISO26000においても消費者というステークホルダーの重要性への認識が高まっている。 ○ISO26000の策定プロセス ・ISOでマルチスークホルダープロセスを採用したのはISO26000が初めて。 ・先進国よりも途上国からの参加者の方が多いのも特徴の一つ。(当初は先進国の方が多かったが途中で逆転した。) ・委員における男女比率もほぼ1:1になってきた。 ○ステークホルダーエンゲージメント ・CSR時代のエンゲージメントは企業とその他ステークホルダーのエンゲージメントが中心。 ・SR時代のエンゲージメントは、企業だけでなく、様々なステークホルダーと様々なステークホルダーどうしのエンゲージメントへと多様化する。 ○CSRからSRの時代へ ・ISO26000は「競争力」と「協働力」をつけるためのツール。 ・世界におけるグローバルな競争力を身につける。 ・地域におけるローカルな協働力を身につける。 ○SRI ・従来のSRIは社会的責任投資(Social Responsibility Investment)。 ・最近は持続性と責任の投資()Sustainable and Responsible Investment) ■話題提供「日本財団公益コミュニティサイトCANPAN CSRプラスの紹介」 荻上健太郎(日本財団) ■パネルディスカッション「なせ企業戦略として攻めのCSRを行うのか?」 岩原明彦さん(株式会社デンソー) 関正雄さん(株式会社損害保険ジャパン) 横井暢彦さん(有限会社ワッツビジョン) 村田元夫さん(サステナブル経営研究会) ![]() ○デンソーの取り組みの紹介 ・CSRを始めるきっかけは? ・トップダウンかボトムアップかでいえば、ボトムアップ。 ・2002年に課長クラスが集まって話し合いを始め、デンソーの状況を点数化したりした。 ・2005年に「デンソーグループ企業行動宣言」を策定した。 ・課題:サプライチェーンのどこまで? ・課題:社員の巻き込みをどうするか? ・CSRレポートは社員もあまり読まないので、漫画によるCSR社員便りをつくった。 ・CSRへの理解と促進のために、外部評価の結果も活用している。 ○川北さんからコメント ・デンソーのCSRは世界のトップレベル。 ・その秘訣は「ボトムアップ」にある。 ・社員自身が「自分たちにはもっとできることがあるはずだ」と取り組んでいる。(やらされている感がない) ○関さんからコメント ・CSR(企業の社会的責任)とESR(従業員の社会的責任)。 ・従業員一人一人が取り組むCSR。 ・日本の企業にも「従業員」が頑張っている取り組みは多い。 ○ワッツビジョンの取り組みの紹介 ・従業員10名ほどの会社。 ・経営理念は「ものづくり・ひとづくり・まちづくり」 ・従業員との3つの約束「フリータイム就業」「完全能率給」「託児制度」 ・CSRの取り組みによる効果:いわゆる3Kの職場にも関わらず人材確保が簡単に。 ○村田さんからのコメント ・20000票の投票のうち、2000票を獲得してワッツビジョンがCSR大賞のグランプリを受賞。 ・女性が働きやすい会社というCSRの内容への共感。 ・投票者も、環境や安全という視点ではなく、働き方という視点への共感の広がりが背景にある。 ○関さんからコメント ・CSRでいちばんだいじなことの一つは人を育てること。 ・経営者が判断すればすぐに実行できることはうらやましい。 ・大企業の取り組みの場合、意志決定にも時間がかかるし、無難なものに収斂してしまうことが多い。 ・足もとがしっかり地域に根ざしているのはすばらしいし、うらやましい。 ○岩原さんからのコメント ・デンソーの強み、弱みを調べたら、「女性の活躍」はデンソーの弱点(女性の管理職比率は1%未満)であることが分かった。 ・もともと女性が少ない職場であった上に、途中でやめてしまう人が多い。 ・女性をターゲットに女性のための施策を考える前に、大多数である男性をターゲットに施策を考え、風土を変えていかなければいけない。 ○関さんからのコメント ・SRIの話をすると女性からの共感が高い。 ・ISO26000は完成形ではない。社会はどんどん変化していくものである。 ○横井さんからのコメント ・CSR大賞のグランプリを受賞したからといって業績が良くなる、悪くなるとかいう変化は特にはない。 ・ワッツビジョンは利益を追求する会社ではないから。(でもこれは零細企業だからできることでもある) ・こういう会社と取り組みがあることをもっと伝えて欲しいというエールをたくさんもらった。 ○岩原さんからコメント ・経営状態が悪化してくると、社員のモチベーションやモラルに不安が出てくる。 ・デンソーは製造業で地域密着型企業である。このことを忘れてはいけない。 ○関さんからのコメント ・本業の中に不可分なものとして組み込んでしまえば、景気の善し悪しに左右されることも少なくなる。 ・CSRレポートをつくることでヘトヘトになってきている傾向があるのが少し心配。 ・CSRで本当に大事なのはレポーティングではなく、コミュニケーションやエンゲージメント。 まだまだ続きがありますよ! |
■パネルディスカッション「産・官・学で考える”C”SRから地域のSRへ」
岩原明彦さん(株式会社デンソー) 関正雄さん(株式会社損害保険ジャパン) 渋谷典子さん(参画プラネット) 萩原喜之さん(地域の未来・志援センター) 藤井栄史さん(名古屋市立大学) 横井暢彦さん(有限会社ワッツビジョン) 川北秀人さん(IIHOE) ![]() ○川北さんから ・日本のものづくりの現場では、多様性よりもシンプルさを追求してきた。多元的より単元的。 ○ここまでの感想(萩原さん) ・CSRが近い、近づいてきたという感想。 ・NPOの取り組みと企業の取り組みがシンクロしてきている。 ○ここまでの感想(渋谷さん) ・労働法とCSRの関係は? ・市民運動とCSRの関係は? ・行動に結びつけるには? ○ここまでの感想(藤田さん) ・労働CSRが日本では弱いのでは? ・ステークホルダーエンゲージメントというのは良い考え方。 ○地域に落とし込むために(横井さん) ・教育と子育て。 ・少子化の時代だからこそ、教育と子育てのあり方がとても大事になる。 ○地域に落とし込むために(岩原さん) ・社員一人一人が地域と接点をもつこと。 ・残業ゼロにすると、早く帰ってもなにしていいか分からない社員も多い。 ・地域の本当の課題に目を向けること。 ・外国人労働者の問題は大きな問題だが、企業としてどこまで踏み込めるのか? ○地域に落とし込むために(藤田さん) ・労働CSRと働き方は地域にとっても非常に重要。 ・社会の公器よりも株主利益を優先する企業観の広がり。 ○地域に落とすために(萩原さん) ・地域に落とすための阻害要因は市民にある。 ・市民の当事者意識の欠落がはなはだしい。 ○地域に落とすために(渋谷さん) ・「私にとって良いこと=CSR」となれば地域でももっと広がる。 ・一人一人にとって良いことであることが分かれば、CSRに関わる人も増えてくるのでは。 ・そのためにももっと見える化の努力が必要。 ○川北さんから ・Social=社会という概念が入るとついつい複雑に考えてしまう。 ・もっと細分化する、単純化することが必要ではないか? ○藤田さんからコメント ・雇用をできるだけ維持すること ・賃金シェアではなく労働シェア。労働者、経営者、株主が相互に譲歩しあって。 ・法を守ることの重要性をもう一度確認してほしい。 ○岩原さんからコメント ・「雇い止め」は契約期間満了後に契約更新しないこと。 ・「雇い止め」と「派遣切り」の区別はもう少し理解してもらいたい。 ○渋谷さんからコメント ・指定管理者制度は行政の経費削減という側面もあるので、給料は安い。 ・また、4年間での「雇い止め」という条件かつ労働条件的には制約が多い。 ○川北さんからコメント ・限界集落と呼ばれる地域の行政職員は週に5日も勤務する必要はない。週に1日は農地を耕やしてもよい。 ・ワークシェアの前にデュアルワークの検討も必要。地域にとって最適な時間の使い方を。 ○萩原さんからコメント ・デュアルワークは理想だけど、現実の厳しさにも目を向けないと。 ・企業単体で抱えられない事態を地域でカバーするという発想と力がない。 ○横井さんからのコメント ・ワッツビジョンは会議はしない。お昼をみんなで食べる。 ・仕事の話だけでなく、家庭の話などもつっこんで話をする。 ○岩原さんから最後に一言 ・見学会で終わるのではなく、対話をしていく機会をもっと。 ・一年前までは働け働けと言っておきながら、今度はワークシェアで働くなって言ってもすぐにはむずかしい。 ○藤田さんから最後に一言 ・働き方の見直しと子育て支援の関わりはこれから。 ○横井さんから最後に一言 ・地域を中心にとらえ、自分たちが主体者であることをもう一度考え直す。 ・究極は自給自足のできる地域。 ・日本人が感性を失ってきている。 ○萩原さんから最後に一言 ・マルチステークホルダーのエンゲージメントは現実にはかなり難しい。 ・違いを受け容れ、受け容れて乗り越えていくことが必要だが、現実はまだ対立 ○渋谷さんから最後に一言 ・地域には公共施設がたくさんある。 ・公共施設をもっと活用し、自分を磨き、地域で活動する時間をつくってほしい。 ・ポータルプロジェクトを通じた学び、出会い、機会に感謝。 ・こういう仕掛けをもっと地域でも展開していくと良い。 ○川北さんからコメント ・生物多様性はつかみどころが分かりにくい議論。 ・各社が生態系から受けている恩恵を数字にしてみる、と考えれば分かりやすくなる。 ・形式論のやりとりよりも数字化、可視化した上での議論をもっと盛んに。 ■開催要項 開催要項はこちら 以上
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