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荒天時に関空周辺の航行禁止 [2019年01月28日(Mon)]

▼検討会報告を受け海保が法規制

 昨年9月、台風21号による強風で大阪湾内に停泊中のタンカーが走錨し関西空港の連絡橋に衝突した事故で、再発防止策を検討していた海上保安庁は、荒天時には関空から3海里(約5・5`)以内の船舶航行を現行の海上交通安全法に基づき規制(禁止)することを決めた。
 これまでも荒天時には五管本部や大阪湾海交センターなどが付近での錨泊や走錨への注意を呼びかけていたが、法的な強制力はなかった。今回の法的規制は有識者の協議を経て決定したもので、この1月中にも地元関係団体との調整や説明を行い、官報やホームページでの「海の安全情報」などで周知を図る。
 
 今回の衝突事故で同庁は、大学や海事関係者などの16人をメンバーとする「荒天時の走錨等に起因する事故の再発防止に係る有識者検討会」(座長、河野真理子・早稲田大学法学学術院教授)を昨年10月に設置した。
 
 同検討会は全国での過去の走錨起因の事故例をも分析し、さらに関係者からヒアリングを行うなどして、関空周辺海域における再発防止策を検討。12月25日に中間報告を取りまとめた。
 走錨事故は過去に、必要な長さのある錨鎖を使った錨泊でも、さらに2本の鎖を使って錨泊していた船舶でも起きていることから、中間報告では「走錨は起こりうる」との前提に立っての、法的規制を含めた対応を取ることの必要性を指摘。
 その上で海上交通安全法第26条1項にある危険防止のための交通制限(「海上保安庁長官は、船舶交通の危険が生ずるおそれがある海域について、告示により期間を定めて、航行する船舶または時間を制限することができる」)の規定を適用することなどを提言した。
 
 さらに具体的には、荒天時には関空周囲の3海里までを規制海域とし、その海域を危険回避のためにやむを得ず航行する船舶を除く、すべての船舶の航行を禁止する。
 規制を発するタイミングについては、気象庁による関空周辺での暴風雨(雪)などの予想(警報、特別警報)を踏まえて「告示」するという。
 
 日本国内には現在、関空のような海上空港が6カ所、海に面している空港が5カ所あり、他に海上設置のエネルギー施設も増えている。
 同検討会は、関空周辺以外の海域での走錨事故の防止策のあり方についても今年度内に取りまとめる予定だ。  (小野信彦記者)