海上保安庁は1月5日、境保安部の1000d級巡視船「おき」(PL01)と釧路保安部の同「えりも」(PL02)を今月中に解役した後、両船をマレーシア海上法令執行庁(MMEA)に供与することを明らかにした。
マレーシア政府からの要請を日本政府が受けたもので、海上保安庁が所有していた巡視船が外国の海上保安機関に供与されるのは初めてとなる。
巡視船「おき」
巡視船「えりも」
巡視船の供与については、マラッカ・シンガポール海峡や南シナ海などの海上交通の要衝を抱えるマレーシア政府が、自国の海上保安能力の増強のために日本側に要請。昨年11月に来日したマレーシアのナジブ首相との首脳会談で安倍晋三総理が大型巡視船2隻の贈与を表明し、日本の駐マレーシア大使とMMEA長官との間で巡視船や資機材資金などの贈与を約束する書簡を取り交わした。
日本政府はこれまでも政府間援助(ODA)としてアジアの主な国に「巡視船」を贈与しているが、いずれも水産庁の漁業監視船や民間の漁船などを巡視船仕様に改修したもの、「巡視艇」の場合は新造して贈与していた。
海上保安庁もアジア諸国の海上保安機関の能力向上を支援し、MMEAに対しても技能強化や人材育成などで協力してきたが、所有していた巡視船艇を外国に供与したことはなかった。
供与が決まった「おき」(全長87b、993総d)は平成元(1989)年9月に竣工し、「のじま」の船名で横浜保安部に配属。9年11月に境保安部に配置替えして「おき」となった。「えりも」(全長91・5b、1268総d)は3年10月に竣工して塩釜保安部の「おじか」として就役。12年10月から釧路保安部「えりも」として活躍してきた。両船ともヘリコプター発着甲板付き。
2隻は今月下旬から日本国内の造船所で改修工事が行われ、並行して海保職員によるMMEA職員への各種訓練や引継ぎなどを実施。「えりも」は3月上旬ごろ、「おき」は4〜6月に「第二の活躍の場」をマレーシアに移す。(小野信彦記者)