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51歳で急逝した海上保安官の歌集 発行 [2018年05月06日(Sun)]

海上保安官の遺歌集.jpg

 51歳で急逝した海上保安官の遺歌(短歌)集が、このほど発行された。本川克幸(かつゆき)さん(元根室保安部「くなしり」航海長)の歌集「羅針盤」(砂子屋書房)で、海上保安官としての業務を詠んだ歌も数多く収録されている。

 本川さんは釧路市出身で、特修科を修了、二管や本庁勤務を経て一管(北海道)での勤務が長かった。「くなしり」航海長をしていた2016年3月、当直勤務中に急に心停止状態となり亡くなった。

 妻の和美さんと、本川さんが師事していた歌人の佐伯裕子さんによって、2012年から16年ごろまでの本川さんの短歌352首をまとめて昨年11月末、「羅針盤」として出版した。
 本川さんの生涯ただ一つ歌集。
 朝日新聞の今年1月22日号の「短歌時評」(大辻隆弘)でも紹介された。
 
 歌集には、北の地や自然の情景を歌ったものが多い。
 東洋の果てなる国の北側の角地のような岬におりぬ
 地に降りて水へと戻る束の間の白きひかりを「雪」と呼び合う
 夕焼けが消えてゆくのを見ておりぬ壊れたアンドロイドのように

 また、海難救助などの現場を詠んだ歌も多い。
 
 沈みゆく船が底(そこい)に刺さるまで何もできずにいたことがある
 距離、時間、速力、体温、心拍数、助けられないから助けたい
 本当は誰かが縋(すが)っていた筈の救命浮環を拾い上げたり
 「飛び乗って取り抑えよ」と指示を出すとりもなおさずわれの声色で
 海鳴りにひれ伏しながら眠る夜に回り続けている羅針盤
 こわれても修理をすればよい船とこわれたままで働く心

 歌集のあとがきで、和美さんは「夫は海上保安官でした。その職業柄、仕事の歌を作ることは意識して避けていましたが、敢えてそれに向き合ったのが、歌集『羅針盤』でした。逃げ場のない海の上で、常に厳しい自然に苛(さいな)まれ、命と向き合う、そんな苛酷な現場に生きていた証です」と記している。

 「羅針盤」は税込み3024円。注文は砂子屋書房のホームページから。
                             (小林利光記者)