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練習船「こじま」出港にあたって船長手記 [2015年05月13日(Wed)]

●いざ激動の世界へ

 「無事、帰ったあぁ…、やっぱり日本はイイー!」昨年の夏、私が身にしみて思ったことです。
 さてさて、今年も世界一周遠洋航海実習に行って参ります。今後は海上保安新聞の紙面をお借りし定期的にその様子を皆様へお伝えしたいと思いますが、差し当たり次の3点についてお話しさせて頂きます。

1 今回の実習概要
 今年の目玉は、中米コスタリカへの初寄港と国際水路機関(IHO)のあるモナコへの寄港。
航海概要は4月28日に呉を出港、途中、各種訓練等を実施しながらホノルル、コスタリカの順に寄港、パナマ運河を経由しニューヨークへ寄港、そして大西洋を渡りフランスのマルセイユとモナコへ寄港、スエズ運河を通りインド洋に出て、シンガポールに寄港し、8月6日に呉へ戻る計画です。
 また、寄港地では海上保安関係機関等の各種施設や国連関係施設の見学、業務講話、スポーツ交流、本船でのレセプションや一般公開などを計画している他、ホノルル〜ニューヨーク間とシンガポール〜日本間の航海では他国の海上保安関係機関職員も乗船し、共同生活しながら各種実習や訓練も行います。

2 世界を一周する実習の意義

 遠洋航海の本来の目的は、実習生が船艇初級幹部として必要な知識、技能を習得することや精神力、実践力、統率力、国際感覚を養うこと等ですが、これらとは別に世界を一周することにより期待できることとしては、アジア、太平洋に限らず世界中で人脈作りのきっかけを得られることやグローバルな視点を持つ職業人として自己研鑽を強く動機付けられるということが挙げられます。
 これらのことは、主に「海洋法に関する国際連合条約」という国際ルールに則りながら世界共有の職場「海」で協調しながら働く者にとって極めて有効であり、海洋国家「日本」の国益に適う人材育成という観点から捉えると付加価値の高い有意義なものと言えるでしょう。

 3 ご支援のお願い
 
 本船は就役23年目を迎え老朽化が進み、故障件数が年々増加傾向にあり、昨年はスエズ運河入航前に航海の継続が危ぶまれる故障も発生しました。

 加えて今年の最大の懸念は治安です。具体的には@世界各地におけるIS構成員やその共感者等による自爆テロ、銃撃テロ、拉致、A初寄港のコスタリカで多発する銃器犯罪、Bエジプトからソマリア、イエメンに至る政情不安定な国家に沿ってスエズ運河〜紅海〜アデン湾を進む航路であり、単船、自力のみで世界一周することは決して容易なことではありません。
 従って、これら懸念については各種最新情報に基づき十分に備え、突発事象に際しては最適判断を誤らず、乗組員一致団結、臨機応変に対処して参る所存ですが、引き続き関係各位の手厚いご支援をよろしくお願い致します。
                        (こじま船長 三矢哲司)
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