10月17日午後9時10分ごろ、福島県いわき市の塩屋埼から約9`沖合で、2隻の台船を曳航(えいこう)し石巻に向け北上していた引き船(19d)の曳航索を、同じく室蘭に向け北上していた油タンカーが引っ掛け、切断した。
引き船は転覆し、引き船の乗組員3人が一時行方不明となった。
事故の第1報は、海に投げ出された引き船の船長が、生きる望みを託して携帯電話から行った「118番」通報。
通報を受けた二管本部運用司令センターと福島保安部は、直ちに巡視船と航空機を現場に急行させた。
司令センターからの無線の呼びかけで、付近を航行していたタンカーが転覆した引き船と船底にしがみつく乗組員2人を発見したが、荒天により救助不能とのこと。
午後10時40分ごろ、巡視船「あぶくま」(福島保安部)が現場に到着、同搭載警救艇が、寒さに震える2人を救助した。
残りの1人は、巡視船「おしか」(宮城保安部)の警救艇乗組員が船底を叩いたところ、船内から叩き返す音が確認されたため、特殊救難隊と仙台航空基地機動救難士の到着を待つこととした。
この後、仙台航空基地のMH965で機動救難士2人が到着。救助された船長から船内形状を確認し、深夜の海に潜り、18日午前1時50分ごろ、船内から3人目の甲板員を無事救助した。
救助された乗組員は、船室の中に残った空気をたよりに、船内にあった作業用ウェットスーツを着て待っており、救助された3人のなかで一番元気であった。(写真は、転覆船=上=の救助に向かう警救艇)
巡視船「なつい」(福島保安部)で運ばれた特殊救難隊の現場到着とほぼ同時のことであり、遭難した3人全員を奇跡的に迅速に救助できたことに皆、ほっと胸をなでおろした。
なお、17日午後10時ころ、司令センターからの無線で海難情報を聞きつけた加害船である油タンカーが、福島保安部に「もしかしたら本船かもしれない」と名乗り出てきた。(福島)
(「海上保安新聞」11月20日)