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先輩研究者のご紹介 花�ア 拓人さん [2026年09月30日(Wed)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2024年度「持続的Ia線維活動抑制のIa線維興奮性入力と運動機能への影響について-新規痙縮治療法確立を目指して-」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、名古屋大学大学院(助成時)の花�ア拓人さんからのお話をお届けします。

<花�アさんより>
【助成内容】
 私は修士課程から博士課程にかけて、脳梗塞や脊髄損傷後に生じる痙縮という運動機能障害について研究をしてきました。痙縮は、自分の意思とは関係なく筋肉が過剰に収縮し、痛みや関節可動域の制限を引き起こすことで、運動機能の回復を妨げる要因となります。痙縮には、筋肉の長さの変化を感知する固有感覚神経(Ia線維)、筋肉を収縮させる運動神経(α運動神経)、などから構成される脊髄の伸張反射の過剰な活動が関係しています(図)。私は、Ia線維の活動を抑制することで痙縮が軽減されることを確認し【1】、この知見を新たな治療法の確立につなげたいと考え、本助成に応募しました。
助成期間中は、三次元動作解析装置を用いて、Ia線維の活動抑制による基本的な運動機能への影響や、痙縮発症後の運動機能回復を解析しました。さらに、Ia線維の神経活動や、Ia線維とα運動神経細胞との接続(シナプス)の数を解析しました。

笹川ブログ_図.png
図: 脊髄伸張反射の概要

【申請を検討されている方へ】
 私が博士課程へ進学し、初めて獲得した研究助成が笹川科学研究助成でした。当時は学生で論文を発表した経験もありませんでしたが、「まずは挑戦してみよう」と申請を決意しました。申請書を何度も推敲する中で、自分が何を明らかにしたいのかを改めて考え、研究そのものをブラッシュアップすることができました。採択決定のメールを受け取った際は、これまで取り組んできたことや、これから実現したい研究を評価していただけたことがとても嬉しかったです。
また、助成金のおかげで、念願だった国際学会への参加も叶えることができました。この経験をきっかけに、国際的な環境で研究に取り組みたいという思いが強くなり、現在は、国内でも特に国際色豊かな沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、感覚神経と発達に関する神経科学研究に取り組んでいます。OISTでは公用語として英語が使われていることに加え、学内シンポジウムやセミナーなどを通して、国内外の研究者と交流しながら日々刺激を受けています。
本助成に挑戦し、自分の研究を評価していただけた経験は、今も私の背中を押してくれています。申請を検討している方にも、まずは一度挑戦してみていただければと思います。
最後になりますが、このような貴重な機会とご縁をいただき、研究活動を支えてくださった日本科学協会の皆様に、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

笹川ブログ_写真1.jpg
写真1: ウィーンでの国際会議

笹川ブログ_写真2.jpg
写真2: OISTラボ棟からの風景

【1】Hanasaki, T., Hanaki, K., Sako, Y. et al. Effect of continuous Ia fibre activity suppression on hyperreflexia-related spasticity and maladaptive synaptic connections in the spinal cord after injury. Sci Rep 15, 23764 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-09397-x


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:30 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 酒嶋 恭平さん [2026年09月16日(Wed)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2024年度「前期ローマ帝国におけるペルシア人イメージに関する研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、千葉大学の酒嶋 恭平さんからのお話をお届けします。

<酒嶋さんより>
 2024年度に笹川科学研究助成に採択いただいた、酒嶋恭平と申します。この度は執筆の機会をいただきまして、誠に感謝申し上げます。
 私は本助成採択まで、古代ギリシアにおいて形成された「ペルシア人」のイメージが、その後どのように受け継がれていったのかを研究してきました。博士論文では、とくにヘレニズム時代(前323-30年)を対象に、前5世紀に起きたペルシア戦争(アカイメネス朝ペルシアによるギリシア本土への侵攻)の記憶が、後世の古代ギリシア世界でどのように語り直されたのかを検討しました。そのなかで、〈ペルシア=東方=野蛮〉という古典期以来のイメージが、戦争の記憶を通じて繰り返し再生産される一方、ペルシア戦争をめぐる〈ギリシア対野蛮人〉〈ヨーロッパ対アジア〉〈文明対野蛮〉という三つの対立軸は、必ずしも互いに一致するものではないことが見えてきました。こうした差異は、古代を〈西洋対東洋〉という後世の二項対立から理解するなかで、見えにくくなってきた可能性があります。
 そこで本助成の採択時には、ギリシア文化を広く受容したローマ帝国に目を移し、紀元後1〜2世紀を中心に、ローマ人がこうしたペルシア人イメージをどのように受け継ぎ、作り変えたのかを調べていました。本助成では、とくに、将軍や皇帝が東方での戦争や支配を正当化する際に、ペルシア人や「東方」のイメージをどのように利用したのかという問題に取り組みました。たとえば初代皇帝アウグストゥスは、現在のイラン・イラクを中心に、西アジアの広い範囲を支配したアルシャク朝パルティアからローマ軍旗の返還を実現したことを記念し、アテナイにペルシア人を表したモニュメントを奉納したと考えられてきました。そこでは、ギリシア人に馴染み深い過去の「ペルシア」と、ローマが実際に対峙していたパルティアとが重ね合わされていた可能性があるのです。
 ローマは多民族からなる帝国であり、しかも自らの祖先をアナトリア半島北西部(つまり、古代の「アジア」の一部)のトロイアに結びつけてもいました。そうした社会で「アジア」や「ペルシア」は何を意味したのでしょうか。私の研究は、古代の他者認識をたどることで、今日しばしば自明視される「西洋」と「東洋」という枠組みそのものの歴史性についても考察する試みでもありました。

 私が本助成に申請したのは、ちょうど博士号を取得することになった一方で、学振PDに不採用となった時期でした。当時は留学を終えて日本に帰国したばかりで、西洋古代史を教えられる大都市圏に生活の基盤を置くことができず、平日は関西で非常勤として講義を行い、休日は実家のある鳥取で過ごすという二重生活を送っていました。経済的にも苦しい状況にあるなかで、本助成をいただけたことは、2024年度における研究活動継続を可能にしてくれただけでなく、その後も研究者として生きていくための大きなモチベーションになりました。

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[写真1 史資料調査を行ったエディンバラ大学。]
 
 本助成の担当の方々に柔軟に対応していただいたことにも触れておく必要があります。研究計画書で予定していたイギリスでの研究報告を取りやめ、ガーナで3年おきに開催される大規模な学会で研究報告を行うことに決めた際にも、迅速に対応していただき、無事に報告を行うことができました。日本やヨーロッパにいるとなかなか気づきにくいのですが、アフリカでは植民地支配の歴史とも関わって、西洋古典・西洋古代に関する研究が盛んに行われています。その一方で、ヨーロッパ中心的な古代史研究を相対化しようとする試みも進められており、それはちょうど、私自身の研究の方向性とも重なるものでした。この研究報告と、そこで得られた研究者との交流は、その後の私の研究を考えるうえで極めて大きな意味を持つものとなりました。その機会を快く認め、送り出してくださった本助成の担当の方々には、改めて深く感謝申し上げます。

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[写真2 ガーナで参加した学会(3rd International Classics Conference in Ghana)の様子。]

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[写真3 学会後に立ち寄った、ガーナ初代大統領クワメ・ンクルマの記念公園。訪問した日はちょうどンクルマの生誕を記念する催しが行われており、多くの人々で賑わっていました。]

 本助成による研究成果の一部は、来年にも論文として公刊される予定です。また、そこで得られた成果は、現在出版を目指している博士論文を基にした書籍にも取り入れる予定です。本助成によって進めることのできた研究は、2024年度だけに留まらず、それ以降の研究の展開に、非常に大きな意味を持っています。

 これまでのブログの記事でもたびたび言及されていますが、本助成は非常に幅広い研究者を対象としており、研究テーマについても多様なものが採択されています。ぜひ一度、申請を検討なさってください。

【本助成による研究論文】
酒嶋恭平「プルタルコス『アリステイデス伝』におけるプラタイアの位置付け」『西洋古典学研究』72、40-52頁、2025年3月
酒嶋恭平「勇敢なペルシア王――ユスティヌス『ピリッポス史抄録』におけるダレイオス 3 世――」『西洋古典学研究』74、頁数未定、2027年3月刊行予定

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 16:00 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 飯塚 夕夏さん [2026年09月11日(Fri)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2024年度「ヘテロアレーンアミド基を活用した触媒創製による、四置換不斉炭素を有する非天然α-アミノ酸構築」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、名古屋工業大学・スタートアップ助教/博士後期課程(現所属)の飯塚夕夏さんからのお話をお届けします。

<飯塚夕夏さんより>
 この度、このような執筆の機会をいただきましたこと非常に光栄に思います。関係者の皆様に心より御礼申し上げます。本執筆が笹川科学研究助成をこれから受けられる方、申請を検討している方への一助になれれば幸いです。

 私は有機合成化学を専門に研究しており、天然には存在しない非天然型アミノ酸の合成に取り組んでいます。創薬分野では、天然アミノ酸では実現できない機能を付与する手段として、非天然型アミノ酸を組み込んだ中分子ペプチドが次世代医薬品として注目されており、非天然アミノ酸の効率的合成法の開発が精力的に行われています。本申請研究で私は、[非天然アミノ酸のライブラリ−拡充を志向した新規触媒の創製]を研究テーマに設定し、ご支援いただきました。笹川助成金の使用用途は柔軟で、私は本研究の鍵である触媒の創製に多くの試薬を購入する必要があったため、主にこの費用に充てさせていただきました。本研究は全く結果のない段階から始めましたが、笹川助成金のおかげで、初期段階から円滑に研究を進めることができました。その結果、反応基質の協働的な活性化を可能にする二金属触媒の開発およびこの設計した新規触媒を用いることで、従来合成困難であった非天然型アミノ酸の合成が可能となることを明らかにすることができました(図1)。
図1本申請研究の概要.png

(図1:本申請研究の概要)

助成期間終了後も本研究に引き続き取り組み、2026年に化学系論文の最高峰の一つである、JACS誌への論文投稿に至りました[1]。本学のプレスリリースおよびカバーピクチャーへの選定や、国際学会での招待講演で本研究成果を発表させていただき、研究成果を広く発信することができました。

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(写真1:本申請研究は論文投稿に至り、カバーピクチャーに選定していただきました)

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(写真2:国際学会で招待講演する機会をいただきました)

笹川科学研究助成に私は、博士前期課程2年時に申請しました。本研究助成は、実績がまだ十分に積めていない修士学生にも採択をいただけるチャンスがある点が本当に魅力的だと思います。また自身の研究テーマを採択頂けたことは研究を遂行する上で経済面だけでなく、精神面においても大きな励みとなり、研究活動を邁進することができました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

[1]Yuka Iizuka, Sayuri Okajima, Yamato Ueno, Tsunayoshi Takehara, Takeyuki Suzuki, Satoshi Maeda, Shuichi Nakamura. J. Am. Chem. Soc. 2026, 148, 2600–2608.
https://doi.org/10.1021/acsphotonics.6c00724

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:30 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)