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先輩研究者のご紹介 小山 悠太さん [2026年07月30日(Thu)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2024年度「海洋の摸擬生態系を用いた物質循環の定量化と環境変動が生物に与える影響の検証」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、浅野中学・高等学校の小山悠太さんからのお話をお届けします。

<小山さんより>
[助成研究の内容]
 本研究では、海洋の模擬生態系を製作して内部の物質循環を定量化し、中高生に対してその仕組みを分かりやすく伝えることを目的としました。さらに、本研究を基盤として生徒の発案による実践研究へと発展させ、学会発表や他校の生徒・研究者との交流の機会を創出することで、生徒の視野や知見を広げることを目指しました。

 海洋生態系を模した水槽の製作にあたっては、生徒と共に城ケ島にて生物採集を行うとともに、現地での環境調査や生息環境の観察を実施しました。また、海水水槽にとどまらず、河川・湖沼(琵琶湖水槽)や亜熱帯地域のマングローブ生態系を模した水槽も製作し、栄養塩類や溶存酸素量の変化を測定・比較することで各生態系の特性を明らかにしました。さらに、同一の模擬生態系を複数構築し、水温や塩分濃度といった環境要因を制御・変化させることで、地球温暖化の進行が生息生物に及ぼす影響についての検証も行いました。

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【写真1】採集の様子 

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【写真2】製作した水槽の展示(文化祭)

 水温を上昇させた水槽で飼育したクビレズタ(海ブドウ)は、通常区と比較して個体が小型化し、多くの個体で葉緑素量の減少が確認されました。また、塩分濃度を変化させたマングローブ生態系(オヒルギ)においては、高塩分化に伴う落葉の促進や各器官の生育不良が観察され、地球温暖化が生態系やそこに生息する生物に及ぼす負の影響の大きさが示唆される結果となりました。

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【写真3】クビレズタの比較
 
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【写真4】オヒルギの比較

 本研究に参加していた生徒の中には、海洋の模擬生態系水槽を活用し、アオザメの尾鰭が発生させる水流が他のサメと異なることを発見し、多くの学会で表彰される機会にもつながりました。

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【写真5】学会発表の様子

 本研究を軸として生徒考案による研究活動が活発化したことで、本校では初となる「学内研究発表会」の開催へとつながりました。自ら研究発表を行った生徒はもちろんのこと、これから研究を始めたいと考えている生徒にとっても、大変貴重で刺激的な機会になったと感じております。

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【写真6】学内研究発表会

[学会発表での受賞歴]
・サイエンスキャッスル関東大会2024 最優秀賞受賞
・第11回高校生国際シンポジウム 全国大会優秀賞受賞
・2025年度日本魚類学会(中高生発表) 最優秀賞受賞
・第73回日本生態学会(中高生発表) 最優秀賞受賞

[申請を検討されている先生方へ]
 現在、中学校や高等学校において探究活動への取り組みが活発化しており、指導にあたる先生方の中にもご苦労されている方が多いとお伺いしております。そうした中、本助成を活用させていただいたことで、測定機器の購入にとどまらず、生徒の学会発表にかかる交通費の補助や、生徒が考案した新規研究への初期投資にも充てることができました。探究活動の過程そのものも重要ですが、生徒が成果を発表する機会を得られたことは、生徒一人ひとりにとっても大変貴重な経験になったと感じております。多くの生徒が研究の楽しさや探究の面白さを実感するためには、教員自身も一緒になって研究活動に取り組み、共に楽しむ姿を見せることが大切だと実感いたしました。本助成の活用を通じ、生徒と有意義な時間(青春)を過ごす先生方がさらに増えていくことを願っております。

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※テキスト、画像等の無断転載・無断使用、複製、改変等は禁止いたします。

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:30 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 中嶋 梨花さん [2026年07月06日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2023年度「細胞質雄性不稔性ジャガイモ品種の稔性回復」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、筑波大学大学院理工情報生命学術院生命地球科学研究群生物資源学科学学位プログラム(助成時)の中嶋梨花さんからのお話をお届けします。

<中嶋さんより>
 この度はこのような執筆の機会をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。私は現在、東京大学大学院生命科学研究科の博士後期課程に在籍し、植物のミトコンドリアについて研究しています。
 ミトコンドリアは真核生物(動物、植物、菌類などすべての多細胞生物と多くの単細胞生物)の細胞内にある細胞小器官です。ミトコンドリアは生物の生存に必要なエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を生産する重要な存在です。遺伝情報であるDNAは多くが細胞の核にありますが、ミトコンドリアは独自のDNA、ミトコンドリアDNAを保持しています。ミトコンドリアDNAは核DNAに比べてDNA量は少ないですが、ATP生産に関わる重要な遺伝情報です。ミトコンドリアDNAに変異(塩基の置換や挿入、欠損)が生じると、動物ではミトコンドリア病と呼ばれる疾患につながることもあります。植物も同様で、ミトコンドリアDNAが植物の成長や生育に様々な影響を与えています。私は2023年度の笹川科学研究助成をいただき「細胞質雄性不稔ジャガイモ品種の稔性回復」について研究しました。細胞質雄性不稔とは植物のミトコンドリアDNAにコードされている遺伝子が原因で異常な花や花粉ができる現象です。ジャガイモでは多くの品種が細胞質雄性不稔であるため、植物が花を咲かせても受粉ができず種子ができません、そのため育種が困難で種イモによる繁殖が必要です。私はこの問題を解決するため、いただいた助成金で花粉や原因となる遺伝子の解析を行いました。研究の成果は2026年に論文として発表することができました。
写真1 ジャガイモの花(左)と果実(右).png   図1細胞質雄性不稔の概念図.png
写真1: ジャガイモの花(左)と果実(右)           図1:細胞質雄性不稔の概念図

【申請を検討している方へ】
 私が笹川科学研究助成に申請したのは学部4年生の時で、翌年の修士1年生の時に助成をいただきました。今振り返ると、当時は研究を始めたばかりで、もちろん業績もありませんでした。ただ、この研究はとても面白いし、将来的になにか大きな発見につながっているのではないかと思っていました。笹川科学研究助成は私のように業績や経験がなくても研究テーマの面白さや斬新さを評価してもらえます。良いアイデアがあるけれど研究をする予算がない、研究実績がないといった方にはぜひチャレンジしていただきたいです。

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写真2:日々の研究の様子

論文情報
Nakajima R, Sanetomo R, Shirasawa K, Ariizumi T, Kuwabara K. Relationship between open reading frame 320, a gene causing male sterility in tomatoes, and cytoplasmic male sterility in potatoes. Plant Cell Physiol. 2026 Apr 14;67(3):289-300. doi: 10.1093/pcp/pcaf157. PMID: 41288592.

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:12 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)