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先輩研究者のご紹介 近藤 湧生さん [2025年10月28日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2023年度「メダカの学校はどうやってできる?ミナミメダカにおける「群れ」の形成過程の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、大阪公立大学理学研究科動物社会学研究室の近藤 湧生さんからのお話をお届けします。

<近藤さんより>
 日本で育った方でしたら、多くの方が「メダカの学校」という童謡をご存知なのではないでしょうか?「めだかの学校は川の中…♪」という歌詞で始まるこの曲のように、メダカは群れで泳ぐ姿がよく知られています。でも、この「群れ」はどのようにして形成されるのでしょうか?そして、メダカは「なわばり」を持つとも言われていますが、それはいつ、どのように作られるのでしょうか?私はこれらの疑問に答えるため、メダカの行動を野外と水槽の両方で観察するアプローチから研究を展開しています。助成期間に取り組んだのが、野外での観察です。世界中でモデル生物として実験室で研究材料として用いられているメダカですが、実は野外での生態観察はほとんど行われておらず、実際のメダカの生活、つまり「メダカの学校」の様子を調べた報告はありませんでした。野生のメダカが実際にどのような生活を過ごしているのかを観察するため、長時間の撮影手法を開発しました。GoProカメラに大容量SDカードとモバイルバッテリーやモバイル電源を組み合わせることで、24時間以上の連続撮影を可能にしました。日中は高温でカメラが停止してしまうこともありましたが、最も観察したかった夜間から早朝にかけての撮影には成功しました(図1)。

図1修正.png


 そこで見えてきたのは、実験室で観察されてきたメダカの生態とは異なる実際のメダカの生態でした。野外観察では、岐阜県岐阜市の川で2023年7月〜8月に、午後9時〜翌朝午前5時までのメダカの行動を水面上からビデオカメラで赤色光ライトを使用して撮影しました。まず、撮影した映像を解析し、産卵開始時刻の特定を行いました。メスは産卵後の数時間、お腹に数個〜20個程度の卵をぶら下げて泳ぎます。3日間分の動画において、お腹に卵をぶら下げたメスが午前0時頃から見られたことにより、深夜に産卵が開始することが分かりました。撮影期間中の日の出時刻は午前5時頃であったため、従来考えられていたよりもはるかに早い時間帯に産卵が始まることが分かりました。次に、夜間の活動パターンの解析を行いました。午後9時〜午後11時は活動量が少なく、多くの個体が休息していると考えられました。活発な行動の指標である「1個体で遊泳」の頻度は、午前0時以降に増加し、午前1時〜午前3時に高くなりました(図2a)。対して、ほとんど動かない状態である「定位行動」の頻度は、午後9時〜午後10時が最も高いことが分かりました(図2b)。また、オスの求愛行動である、メスを追いかける「したがい」と、メスの前で素早く回転する「求愛円舞」については、午前0時以降に顕著に増加し、特に午前2時〜午前3時に多いことが明らかになりました(図2c、d)。

図2修正.png


 笹川科学研究助成をいただき、本当に助かりました。特に、野外での撮影機材や個体識別用の蛍光マーカーなど、新しい研究プロジェクトを立ち上げるために必要な物品を柔軟に購入できたことが、研究をスムーズに進める上で非常に助かりました。この助成により、野外と室内を組み合わせたアプローチが可能になったことが大きかったです。現在は、引き続きメダカの生態解明に向けた野外と実験室の統合アプローチを大きく展開できました。
 笹川科学研究助成は、大学院生や若手研究者が申請できる貴重な研究助成の一つです。申請書を書くという作業は確かに大変で時間のかかる作業です。しかし、それ自体が自身の研究を見つめ直し、計画を練り直す良い機会になります。仮に不採択になってしまっても、修士論文、博士論文または論文を書く際に考えたロジックは必ず生きてくるはずです。また、専門外の方にも分かるように説明する練習にもなりました。実際の研究でも、学会発表や論文執筆、または就職活動でもその時と場合に応じて、専門外の方に研究を伝える機会は多いので、この経験は非常に役立つはずです。もし研究に必要な機材や調査費用に悩んでいる方がいらっしゃれば、ぜひ挑戦してみてください。基礎研究であっても、萌芽的な研究であっても、研究の面白さと重要性をしっかりと伝えられれば、チャンスは十分にあります。

 最後になりましたが、本研究をご支援くださった日本科学協会の皆様、そして研究にご協力いただいた全ての方々に、心より感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:24 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)