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先輩研究者のご紹介 山ア 綾子さん [2025年02月10日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「新たなセラミド1-リン酸産生酵素の同定と生理機能解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、千葉大学大学院医学薬学府(助成時)の山ア 綾子さんからのお話をお届けします。

<山アさんより>
 「セラミド」という単語を、化粧品のパッケージなどで目にしたことのある方もいるのではないでしょうか。セラミドはスフィンゴ脂質とよばれる脂質の一種です。皮膚では角質層を構成する成分として、お肌のうるおい(皮膚のバリア機能)に役立っていますが、実はそれだけでなく、体内では細胞増殖や細胞死、炎症応答など、非常に多様な生理機能を制御しています。
 私は2022年度に笹川科学研究助成にてご支援いただき、この「セラミド」の代謝についての研究を行いました。セラミドは細胞内で、様々な酵素によって様々な形に代謝されます。セラミドにリン酸基を付加して「セラミド1-リン酸」を産生する酵素として、1989年に初めて「セラミドキナーゼ」が発見されました。しかしその後、セラミドキナーゼが存在しなくてもセラミド1-リン酸が産生されることが明らかになり、セラミドキナーゼ以外にも未知の産生経路が存在すると考えられてきました。そこで私は、新たな産生経路の探索を行い、「ジアシルグリセロールキナーゼζ」という酵素が、セラミドをリン酸化してセラミド1-リン酸を産生できることを明らかにしました。この研究成果は以下の論文として国際誌に掲載されています。

文献:A. Yamazaki, A. Kawashima, T. Honda, T. Kohama, C. Murakami, F. Sakane, T. Murayama, H. Nakamura. Identification and characterization of diacylglycerol kinase ζ as a novel enzyme producing ceramide-1-phosphate. BBA-Molecular and Cell Biology of Lipids, 1868, 159307, 2023.


第64回日本脂質生化学会での口頭発表の様子.jpg
(写真)第64回日本脂質生化学会での口頭発表の様子

 実は当初、自分は大学院生のうちには研究助成を受けられないのではないか、と悲観していました。私は6年制薬学部を卒業後に、異なる大学の大学院4年制博士課程に入学しています。そのため実際の研究歴は浅く、申請書を作成した時点での肩書は博士課程3年目、しかしそのじつ、研究生活を学び始めた新人3年目の夏でした。当時、博士課程でありながらほぼ業績なし、研究テーマも少しマイナーな分野の基礎研究。もちろん私にとっては、非常に魅力的で価値の高い研究です。しかし何年もかけて積み重ね、社会貢献に直結するような他の研究課題との競争になると、どうしても不利になってしまいます。そんな本研究を、内容で評価してくださった日本科学協会の皆様には心から感謝しております。
 助成をいただいたことは、金銭的な面ではもちろん、それ以外の多くの面でも大きな助けとなりました。自分の研究費があることで、本当にやりたい実験を妥協することなく進めることができましたし、研究費を一年間でやりくりする経験は、現在の研究生活でも役立っています。なにより採択されたことで、研究への自信と誇りにつながりました。

 現在は大学院を修了して所属が変わり、国立障害者リハビリテーションセンター研究所で研究活動を進めています。大学院時代と比べると、研究所では自分の研究だけに向き合う時間が多くなりました。まだまだ研究者としては、つかまり立ちを始めたところですので、今後とも精進していきたいと思います。
申請時、本助成を研究者としての第一歩としたい、と書いたのですが、笹川科学研究助成にてご支援いただけたことが、本当に私の研究者としての第一歩となりました。
もし応募を検討しているようであれば、皆様もぜひ、チャレンジしてみませんか。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:27 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)