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先輩研究者のご紹介 垣本 嘉人さん [2024年06月10日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「平戸根獅子の活性化」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、NPO九州総合研究所の垣本 嘉人さんからのお話をお届けします。

<垣本さんより>
 NPO九州総合研究所の垣本嘉人です。私は2021年度に笹川科学研究助成をいただき、「平戸根獅子の活性化」というテーマで、農山村地域の活性化・まちづくりについて研究を行いました。
 ここで私のこれまでの研究生活に触れますと、私は企業、特に化粧品業界という地域経済とは全く異なる業種、大企業の研究を大学院時代から続けてきました。しかし、化粧品もその製造過程をたどると、椿やオリーブといった地方の特産物を原材料にした多くの商品が作られており、地域発祥のブランドや「佐賀県のコスメティック構想」という化粧品で地域を活性化させようという動きにも注目しはじめていました。
 そんななか、NPOで一緒に研究をしていた先生方から、長崎県平戸市の活性化策を研究してみないかという話がありました。初めは自分の研究分野とは全く異なる点に不安を感じましたが、地方の力や地方の可能性があらゆる産業にもつながっていくのではないかと思い、地方の活性化について研究してみようかと思ったのがはじまりです。
 長崎県平戸市は、長崎県北部の豊かな観光資源に恵まれた街です。海や山などの風光明媚な自然景観に加え、隠れキリシタンの歴史があり教会が点在しており、また平戸城に代表される史跡も多くある魅力ある街です。しかし、日本の他の農山村地域と同様に高齢化が進み人口減少傾向が著しく、活性化が急がれているのが現状です。

283.jpg
(田平教会)


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(平戸城)


 そこで、こうした状況を食い止め、どのような処方箋を探るべきかと考え、実際に先生方と現地でアンケート調査を実施しました。アンケートは、来訪者と特に過疎化が進んでいる地域の住民を対象に実施し、その結果、来訪者と在住者の間ではその土地の認識について隔たりがあり、観光の実態や地域経済に即した活性化策が必要であると感じました。
 その後、本研究の解析をさらに進め、日本商業学会九州部会や亜東経済国際学会で農山村地域の持続可能な街づくりを提案しました。

図.png
図「自治体のSDGsのモデル―未来へ向けた持続可能な街づくり」

 来訪者が求め、在住者が誇る豊かな観光資源のPRや、農業・漁業といった地域産業を生かしたエコツーリズムを実現する「行政」「地元住民」の力に加え、交通インフラやインターネット環境の整備等を可能にする「民間組織・大学等」の地域を支える3つのステークホルダーの連携が「経済」、「社会」、「環境」の3つの好循環を生み出す持続可能な街づくりへとつながると提案しました。
 私が研究に取り組んでいた2021年は、コロナ禍で実地研究が大変難しい時期でしたが、笹川科学研究助成をいただき、新しい領域へと研究を進めることができ、大変感謝いたしております。これから助成の応募を考えているみなさんには、積極的に応募されることをお勧めします。門戸は開かれています!みなさんの研究がさらなる飛躍をとげられるよう応援しています。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※テキスト、画像等の無断転載・無断使用、複製、改変等は禁止いたします。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 11:34 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 浅沼 光吾さん [2024年06月03日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「ナノ多孔体孔内でのガス吸着制御及び化学反応を用いた呼気ガス分析法の研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東北工業大学大学院工学研究科の浅沼 光吾さんからのお話をお届けします。

<浅沼さんより>
 2021年度笹川科学研究助成にてご支援いただきました、浅沼光吾と申します。助成時は東北工業大学大学院工学研究科の博士後期課程2年生で、「多孔質ガラスの孔表面に特定のガスと選択的に反応する固体物質を担持させた化学センサのガス吸着性と反応性の違い」について研究を行っていました。採択通知をいただいた時はとても嬉しく、研究を評価していただけたことを指導教員も心から喜んでいたことを今でも覚えています。

「多孔質ガラス(図1)」というのは多孔体の一種で、身近なもので例えるとスポンジのような無数の小さな穴が空いた物質になります。多孔体が持つ小さな穴の中・空間表面は特異な化学反応を発現する場であるため、多孔体は様々な分野で応用研究が活発に行われるほど注目されている物質です。

ブログ用図1_浅沼_S.jpg
図1 多孔質ガラスの写真と多孔質ガラス表面のTEM画像


 笹川科学研究助成によりご支援いただいた期間では、多孔質ガラス基板上にカルボニル化合物との反応性をもち、反応の前後で色の変化を可視化できる検出試薬(アミン)を穴の空間表面に固定した化学センサを作製し、化学センサとアセトン、アセトアルデヒドとの反応や吸着性の違いを明らかにすることを目的として研究を行っていました。ターゲットガスに選定したアセトンとアセトアルデヒドは類似した分子構造を持っていますが水分子との反応性が異なり、この反応性の違いが多孔質ガラスという水溶媒の反応場をコントロールできる物質を用いることで顕在化できないかとの発想を抱いて研究をすすめました。これら物質はヒトの息にも極微量ながら含まれており、アセトンは糖尿病患者の息にppmオーダー、アセトアルデヒドはがん患者の息にppbオーダーと健常者に比べ、数十から数百倍高い濃度となることが報告されている気体です。当時所属していた研究室では、他にも様々な疾患と関連性のあるガスを簡易的に検出するための化学センサを開発しており(図2)、中でもケトン・アルデヒド類は屋内外で環境基準が設けられていることもあり注目されていましたが、反応の選択性という点で制約がありました。検出試薬に用いたアミンは、ガスクロマトグラフィ質量分析において、ケトン・アルデヒド類を分析する際の前処理法に用いられる物質ですが、意外にもホルムアルデヒドやアセトアルデヒドのような、各々のアルデヒドとの反応性の違いについて研究されている報告は数少なく、助成研究によりアセトンとアセトアルデヒドの反応性や吸着性の違いが明らかになった時は研究時の着想が実証されたこともあり、またガス分析手法における一つの知見ともなり得るため非常に嬉しく感動しました。

ブログ用図2_浅沼_S.jpg
図2 研究室で開発した化学センサの一例


 現在、私はフィールドサービスエンジニアとして研究や分析に携わる人々をサポートする立場として日々研鑽を積んでいます。具体的には、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)という分析機器を担当しており、LC/MSはLC部分でカラムと呼ばれる表面修飾された多孔体などが充填された箇所で、物質の吸着・相互作用の違いを利用してサンプルに含まれる成分を分離し、単離した物質を光学検出器と質量分析計で測定するという装置であり、医薬品系・産業・食品・環境計測など、幅広い分野で用いられています。研究当時は取り扱ったことのない装置ではありましたが、成分を分離し測定するといった部分は当時の研究と共通しており、他にも機器と分析サンプルが接する箇所において特定のサンプルだけが金属吸着する場合があるなど、トラブルに対して物質表面での吸着に関する知識を活かせ、目視で捉えることが困難なミクロな研究を行い培った経験を役立てることができています。

 末筆ではございますが、笹川科学研究助成に採択していただいた日本科学協会に心より感謝申し上げます。笹川科学研究助成では、化学センサの中でも非常に基礎的な研究である私の研究を評価していただき、研究遂行のためのご支援をしていただきました。研究助成への応募を考えている方は是非積極的に、笹川科学研究助成への応募にチャレンジしてほしいと思います。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:40 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)