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先輩研究者のご紹介 山田 智子さん [2024年04月25日(Thu)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「複合イオン照射によるSiO2ガラス内ナノ構造体の合金化における構造制御」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、大阪府立大学大学院 工学研究科の山田 智子さんからのお話をお届けします。

<山田さんより>
 2021年度笹川科学研究助成でご支援いただきました、関西大学URAの山田智子と申します。助成時は大阪府立大学に所属しており、「アモルファスガラス(非晶質)の中に直接、イオン照射で金属ナノ粒子を合成する」という研究をしておりました。
金属がナノサイズになると特異な性質を発現します。たとえば、金は通常、磁石にくっつかないのですが、ナノサイズになると磁性を発現するようになります。このように、ナノサイズの金属を合成すると、今までにはなかった、新しい材料の開発に繋がります。

 採択通知をいただいたときは、研究費を獲得できたこと、研究内容が認められたことに対し、私自身とても嬉しく、メールを読む手が震えておりました。
 周りの反応は、両親は特に反応がありませんでしたが、父方、母方の両方の祖母がとても喜んでくれました。

 研究費を獲得し、実験を行い、研究成果の報告をする、という一連の流れを笹川科学研究助成で学ぶことができました。
 笹川科学研究助成は科研費(特別研究員奨励費)と比較しても、活用しやすく、研究費の獲得が初めての人にとっても研究費の使用方法など、とても勉強になると思います。

 私は、現在URAとして申請書作成支援をしています。具体的には、教員や学生の申請書の添削、アドバイスを行っています。笹川科学研究助成に支援いただいた経験を通して、現在の職に就くことができたため、笹川科学研究助成に採択されたことは間違いなく人生の転機でした。

 研究費を獲得するということは、アカデミックの世界ではいつまでも必要になってきます。学生で申請できる研究費は多くありませんが、1つでも多く申請してください。学会発表や論文投稿だけでなく、研究費に申請するということも、自身の研究を他の人に伝えるという重要な機会の1つです。チャンスは掴みにいきましょう!

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※テキスト、画像等の無断転載・無断使用、複製、改変等は禁止いたします。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:50 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 大西 康平さん [2024年04月22日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「線虫の温度馴化における温度受容体GPCRの分子生理学的解析」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、広島大学大学院医系科学研究科 研究員の大西 康平さんからのお話をお届けします。

<大西さんより>
 温度は常に存在して、すべての生体反応に影響を与えるため、生命には温度を感じ、生存するための機構が備わっています。例えば、私たちは体温を保つために寒いときに震え、暑いときに汗をかき、また心地よい場所に移動します。これらには核酸やタンパク質などの生体分子が温度センサーとして働いて環境温度を知る必要があります。よく研究されているのが、細胞膜に存在するタンパク質型温度センサーであり、2021年に「温度感受性TRPチャネル」の発見に対してノーベル医学・生理学賞が授与され、最近注目されました。

 学部生時代からお世話になっていた研究室ではモデル生物「線虫C. elegans」の温度馴化を用いて解析を行っていました。私はその中で、線虫の感覚神経がどのように温度を感じるかに興味を持ちました。まず、線虫のTRPチャネルが温度センサーとして機能することを確認しました。一方で、従来のTRPチャネルと比べて温度に対する反応性が弱かったことから、TRPチャネル以外の温度センサーも存在しているのではないかと予想し、一般に味覚や視覚の感覚応答にかかわることが知られるGタンパク質共役型受容体「GPCR」が温度センサーとして機能している可能性を考えました。そこで私は、線虫の温度馴化を指標に、線虫にある約1000個のGPCRの中から温度受容体を同定して解析を行いました。笹川科学研究助成金はこの解析を進めるための試薬購入などに使用させていただき、しっかりと研究を進めることができました。

 現在は広島大学医学部に移って研究をしており、新たな環境で大きな刺激を受けながら日々楽しく研究を行っています。私はこれまで動物の温度受容に関して、個体・組織・細胞レベルの研究を行ってきました。一方で、現在の研究室では膜タンパク質などの分子レベルの研究を行っていて、電気生理学や最新の生物物理学解析の技術を用いて解析を行っています。センサータンパク質自体の機能ももちろん大事ですが、実はその周りにある細胞膜などの生体分子との関係も大変重要であり、ミクロな世界で何が起こっているかを調べることは大変興味深いと感じています。

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図:温度感覚研究の例。
例えば線虫は神経などで温度を感じて行動などを変化させる。神経の先端の膜上に存在する温度感受性タンパク質が温度によって活性化され(分子レベル)、先端で受け取られた温度情報が細胞体に伝えられて(組織・細胞レベル)、神経細胞が次の神経細胞や他の組織に情報を送る(個体レベル)ことで個体が制御される。

 笹川科学研究助成より助成いただいたのは学位取得後すぐで、私にとっては初めての研究助成でした。研究者としてまだまだ未熟で、研究計画書作成などに不安がありましたが、助成をいただくことができて自信にもなりましたし、研究者としての成長の第一歩を大きく助けていただいたと感じています。また、現在の楽しい研究生活はいろいろな縁によって成り立っていて、周りの方々や笹川科学研究助成のおかげで研究が続けられたことが大変大きかったと感じています。研究に協力くださった皆様や日本科学協会の皆様に深く感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※テキスト、画像等の無断転載・無断使用、複製、改変等は禁止いたします。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:59 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 ZHANG Xuanさん [2024年04月15日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「微環境汚染の測定により中国典型的な都市における住民の大気汚染曝露レベル推測モデルの構築」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、金沢大学大学院医薬保健総合研究科所属の、ZHANG Xuanさんからのお話をお届けします。

<ZHANGさんより>
 大気汚染物質はヒトの呼吸器や循環器に悪影響を与えることが知られています。私の所属研究室(金沢大学 薬学系環日連携研究G)では,発がん性物質である多環芳香族炭化水素類化合物(PAHs)を中心に,アジア地域におけるそれらの大気内挙動(発生源,濃度,組成,大気反応)とヒトへの健康影響を研究しています。PAHsは石油や石炭などの不完全燃焼によって生じ,都市地域では主に工場や自動車から排出されています。
 本研究では,大気汚染が深刻化している中国の北京と保定において,事務職員を対象に個人ばく露PAHsによるヒト肺機能への影響を評価し,さらに最寄り大気環境測定局の公表データを参考に,室内外の大気中PAHs実測値と建物特徴を用いて個人ばく露PAHsの濃度と組成を推測するモデルの構築を目的としました。個人ばく露PAHsの調査では,強い発がん性を持つベンゾ[a]ピレンのばく露濃度は中国の大気環境基準値(1 ng/m3)を超えており,長期ばく露による健康リスクが高いことを判明しました。さらに、4環構造をもつベンズ[a]アントラセンとクリセンの短期ばく露により,事務職員の肺機能の低下を引き起す恐れがあることも初めて分かりました(Zhang et al., 2023a, 2023b)。
 個人ばく露調査はより正確なデータが得られますが,調査対象に大気試料を捕集するサンプラーを携帯させるため,サンプラーの重さや空気吸引ポンプの騒音などで日常生活への負担が大きく,大規模の実施が難しいです。そこで,ヒトの滞在場所と時間,滞在場所の建物の特徴を精査し,各々の滞在場所最寄りの大気測定局の公表データとの関連をモデル化にすれば,大気測定局のデータを利用するだけでも,個人ばく露調査と同等な結果が得られると仮設して研究を進めようとしました。しかし,2020年2月に始まったコロナ禍の影響で,北京と保定での調査は断念しました。その後,日本科学協会側と協議し,計画を変更して本学所在地の金沢で実施することができました。その結果,自動車排ガス中PAHs濃度、室内換気状態などの要素は,個人ばく露PAHsを影響する主因子として洗い出し,これらに基づいて個人室内ばく露PAHs濃度の推測モデルを提案しました(図2)(Zhang et al., 投稿準備中)。しかも,本研究で確立した調査方法は,異なる環境における個人ばく露PAHs濃度の推測モデルの構築にも役に立てると期待できます。

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図1 北京市と保定市で実施された個人曝露調査(左図:大気捕集、右図:肺機能測定)

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図2 住宅室内PAHs濃度の推測モデル


 環境科学分野においてのフィールドワークは,実験室だけで行える研究との違いは,天候や調査対象の都合など多くの不確定要素に影響されがちです。本研究も,実施途中に非意図的な原因で研究計画を変更せざるを得ませんでした。しかしながら,日本科学協会側の迅速かつ柔軟なご対応により,調査研究が順調に進められ,多大な成果が挙げられました。末筆ながら,短い一年間でもありましたが,ご支援をいただいた日本科学協会に心より感謝申し上げます。

参考論文:
1. Zhang X, Zhang H, Wang Y, et al. Personal PM2.5-bound PAH exposure and lung function in healthy office workers: A pilot study in Beijing and Baoding, China[J]. Journal of Environmental Sciences, 2023a, 133: 48-59.
2. Zhang X, Zhang H, Wang Y, et al. Characteristics and determinants of personal exposure to typical air pollutants: A pilot study in Beijing and Baoding, China[J]. Environmental Research, 2023b, 218: 114976.
3. Zhang X, Wang Y, Bai P.C., et al. Characteristics and prediction models for the concentrations of PM2.5-bound polycyclic aromatic hydrocarbons in residential environments in Kanazawa, Japan(投稿準備中).

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆さんより、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:36 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 大月 興春さん [2024年04月15日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「抗HIV薬の創製を目指す新規大環状ダフナン型ジテルペノイドの探索研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東邦大学薬学部助教の大月 興春さんからのお話をお届けします。

<大月さんより>
 ジンチョウゲはジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木で、春先にとても香りのよいピンク色の花を咲かせるのが特徴です。学名はDaphne odoraといい、属名のDaphneはギリシャ神話のダフネに由来し、odoraは「芳香がある」という意味があるそうです。また、和名「沈丁花」には香木である沈香と丁子の名前がそれぞれ含まれており、漢名の「瑞香」にも香りという字が含まれています。ジンチョウゲは名前の随所に香りを彷彿とさせる語が散りばめられていることからも、いかに香りがよい花を咲かせるということが想像できるのではないでしょうか。ジンチョウゲはとてもよい香りであることと花がとても可愛らしいことから日本のみなからず、欧米でも庭木として人気のある植物です。みなさんも春先に見かけたらぜひ香りとその可愛らしい花を楽しんでみてください。

写真ジンチョウゲ.JPG


 さて、ここまでジンチョウゲが観賞用の植物としてとても魅力的であることを伝えてきましたが、実はジンチョウゲは有毒植物としても知られています。毒と薬は紙一重とよく言いますが、ジンチョウゲは中国伝統医学において根や葉、花など様々な部位が薬用され、痛みや皮膚病の治療に用いられてきました。私はこのジンチョウゲに含まれるダフナン型ジテルペノイドという成分に関する研究を行っています。ダフナン型ジテルペノイドはジンチョウゲ科やトウダイグサ科植物に含まれる成分で、これまでに多くの化合物が単離されています。中には強い毒性を示す化合物もあれば、抗がんや抗HIV、鎮痛作用を示す化合物も発見されています。私はこの中でもダフナン型ジテルペノイドのもつ抗HIV作用に着目して、未だ根治できないHIV感染症の根治薬の創製を目指して研究を進めています。

 私はもともと創薬研究に興味があったのですが、大学3年生で卒業研究の配属研究室を選ぶ際に、植物から未だ治療薬のない病気を治す薬を見出すという研究に夢を感じて、現在所属する研究室に入ることを決意しました。卒業研究でジンチョウゲに関する研究に携わり、そのまま研究の楽しさにのめり込み大学院に進学しました。大学院在学中に笹川研究助成を受けることができ、研究を大きく推進することができました。現在は同研究室で助教として勤めており、これからは単離した化合物について化学変換反応により、より安全かつ作用が強く、薬に適した形にする研究も予定しています。また、ジンチョウゲ科植物の他にも様々な植物の研究にも携わっています。自分が植物から単離した化合物が実際に人々の病気を治す薬になるまでにはまだまだ長い道のりがありますが、夢の実現を目指してこれからも研究に没頭していきたいです。

 若手研究者、特に大学院生が単独で申請できる研究助成はとても限られていると思いますが、笹川研究助成はそんな大学院生にも大いにチャンスのある研究助成です。申請書や報告書の作成、予算の管理など助成を受けていた当時の経験は今の研究生活にもしっかりと活かされています。また、採択されたことで自分にとっては大きな自信にも繋がりました。早い段階から自分が代表者となって研究費を申請できるまたとない機会ですので、申請を迷われている大学院生の皆様は是非チャレンジしてみてください。最後になりますが、笹川科学研究助成を通じてご支援くださいました日本科学協会に深く感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:41 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 井上 侑哉さん [2024年04月08日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「ゲノムワイドなDNA情報にもとづく野生フキの多様性と栽培フキの起源解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、国立科学博物館の井上 侑哉さんからのお話をお届けします。

<井上さんより>
 2021年度笹川科学研究助成学術研究部門にて助成いただきました、国立科学博物館の井上侑哉です。私は現在、コケ植物の系統・分類学を専⾨にしていますが、前職の広島⼤学ではコケ植物に限らず維管束植物の多様性についても研究を進めていました。

 フキPetasites japonicus (Siebold & Zucc.) Maxim.は中国・韓国・日本に分布するキク科フキ属の多年生草本植物です。大きな腎円形の根出葉が長い葉柄の先に生じ、頭花は筒状の小花によって構成されます。数少ない日本特産野菜として奈良時代から利用されている日本人に馴染みの深い栽培植物でもあります(図1)。


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図1. フキ. A: 根出葉. B: 頭花.

 フキの野生集団には多様な形態変異が見られ、東北地方以南の本州・四国・九州に分布する集団では葉柄の長さが60 cm程度のものが一般的ですが、北海道から東北地方北部にかけて分布する集団では葉柄の長さが1–2 mに達する場合もあり、亜種アキタブキ [subsp. giganteus (F.Schmidt ex Maxim.) Kitam.] として区別されています。とくに北海道足寄町の螺湾川に沿って自生する集団は大きく、葉柄の直径が10 cm、高さ2–3 mに達し、「ラワンブキ」と呼ばれ北海道遺産にも指定されています。しかし、フキとアキタブキについて、遺伝的分化の程度については不明です。フキの栽培品種としては水ブキや愛知早生ブキ、秋田オオブキ、秋田青ブキ、八つ頭などが知られており、食用として流通していますがこれら栽培品種の起源についてもよく分かっていません。

 そこでまずは野生フキの遺伝的多様性を把握するために、国内各地から収集した野生集団を対象に、RAD-seq法により取得したゲノムワイドなSNP情報にもとづいて遺伝的多様性を調べました。その結果、日本産野生フキ集団は東北地方を境に、東北地方以南の本州・四国・九州の集団(本州型)と東北地方の一部と北海道の集団(北海道型)からなる2つの遺伝的グループに大きく分かれることが示されました(図2)。本研究によってフキ野生集団の遺伝的多様性が初めて明らかになり、栽培品種の遺伝的由来についてもDNA情報をもとに推定可能な基盤を整えることができました。今後は栽培品種についても網羅的な収集を進め、さらに史料とも照らし合わせながら検討することで、野生フキから栽培化に至る過程の詳細を明らかにしていきたいと考えています。

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図2. RAD-seq法によるゲノムワイドなSNPにもとづくネットワーク図.
(A) 本州型, (B)北海道型.


 日本科学協会の支援を受けることにより研究の進展が可能になっただけでなく、研究者としての道を歩むためのキャリア形成にも大きくプラスになりました。この場を借りて深く感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:18 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 佐々木 啓さん [2024年04月08日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「観光拠点施設を用いた来訪者への災害情報発信の方法論の構築」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、和歌山大学観光学部助教佐々木 啓さんからのお話をお届けします。

<佐々木さんより>
 和歌山大学観光学部にて助教をしております,佐々木啓と申します。
 助成をいただいた2021年度は東京大学大学院農学生命科学研究科の博士2年生でした。コロナ禍(緊急事態宣言等)でラボに行けない,フィールドに出れないという非常に強い逆風が吹き荒れるドクター生活ではありましたが,所属ラボの先生方,先輩方の支えもあり,なんとか標準修業年限の3年間で博士(農学)を取得することができました。弱冠27歳(当時)ではありましたが,とても幸運なことに学位取得直後の2023年4月よりパーマネントの助教として現職に採用いただき,業績至上主義に縛られない,真に自由な発想の元でPIとして研究活動を進めることができています。経験のない授業や校務に食らいつきながら,新たな環境で新たな研究テーマを掲げ,日々奮闘しているところです。

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(写真:佐々木啓研究室入口)


 今回は,上記の研究課題の完了報告書が高い評価を受けたとのことでブログの執筆依頼をいただきました。記憶をたどると,助成当時の選考総評(人文・社会系)で私の研究課題が取り上げられており,大いに喜んだことを覚えています。それもあり,かなり力を入れて助成対象者だけが選考対象となる笹川科学研究奨励賞に向けて取り組んだのですが,上述したようなコロナ禍の壁に阻まれ,また私の力不足ゆえに受賞は叶いませんでした。もうリベンジに臨むこともできないというのが,正直,心残りではありますが,今回このような機会をいただき,大変光栄に感じております。

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(写真:阿蘇山上ビジターセンターが立地する阿蘇火山博物館と草千里)


 さて,同研究課題の柱となっていたのは,「災害の多い観光地にも整備される情報発信施設(ビジターセンター)を通じて災害について観光客に情報発信をすることで,防災に関心の薄い層にも防災教育を行うことができ,有効な防災教育・サイエンスコミュニケーションの方法論となりうるのでは?」というアイデアでした。
 私は岩手県出身なのですが,東日本大震災の発災当時(当時中3)を今でも鮮明に覚えています。しかし,時間の流れは残酷で,風化は避けることができません。また,次の世代を担う子どもたちにも当時の記憶・教訓を継承する必要があります。「いったい岩手県人として何ができるのだろうか…」との思いで構想したのが同研究課題です。研究成果のうち,阿蘇をフィールドとしたものについては2024年6月にはJ-STAGEで論文として読めるようになりますので,ぜひお読みいただければと思います(※1)。

 次に,本助成へ応募してとくに良かったことについてふれたいと思います。1つ目は自信がついたことです。それまで,論文が続けてリジェクトされ,学振DC等のグラントにも落ち続け,研究者として生きていく自信を失いかけていました。しかし,本助成に採択いただき,総評にも取り上げていただいたことで自信を持って研究に取り組めるようになりました。自信が活力を生み,精力的に研究に励めたことが現職への採用や博士課程でのJASSO奨学金全額返還免除等につながったと確信しています。
 2つ目は機会を得られたことです。本研究課題による研究を実施することができたのは非常に大きいことでした。博士課程ではWINGSという東大独自の制度のもと生活費については学振DCに準じた額をいただいていましたが,研究費の支給がない制度であり,多額の資金を必要とするフィールド調査を行える状況にはありませんでした。本助成をいただけて,感謝の念に耐えません。
 そして,実は本研究課題のもう1つのフィールドではコロナ禍の影響で計画通りにサンプルを得ることができず,研究成果を論文化することができませんでした。しかし,怪我の功名か,後者の調査をきっかけに応募時の計画になかった研究成果に基づく査読付き研究報告(※2)を世に出すことができました。「どのようにして,災害に関する展示の多いビジターセンターは整備されたのか?」という事例・歴史研究になります。これも,本助成に採択されていなければ機会を得られませんでした。

 最後に,本助成に申請を考えている方へ。応募するかを迷っているなら,ぜひ「応募する」と心に決めて申請書を作成してください。前衛的・野心的なアイデアであっても評価していただける点が,学振や科研費にはない本助成の大きな魅力であると私は思います。

※1 佐々木啓(2024):阿蘇山上ビジターセンターにおける来館者の展示の観覧と意識変化:ランドスケープ研究87(5),印刷中,日本造園学会(査読付き)
※2 佐々木啓(2023):唐桑半島ビジターセンターの設立の経緯と設立時の収支計画について:環境教育32(1),43-49,日本環境教育学会(査読付き)

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:48 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
「第16回サイエンスメンタープログラム研究発表会」を開催しました! [2024年04月04日(Thu)]
 2024年3月17日に第16回サイエンスメンタープログラム研究発表会(inアルカディア市ヶ谷)を開催しました。高校生は、交流ワークショップ「チームの力を集結せよ」に参加し、口頭発表・ポスター発表をしました。
 また、本研究発表会で修了となる、岩波さん、⿑藤さん、⻘⽊さん、銭⾕さん、尾アさん、山本さん、⼩宮⼭さん、津島さんは修了証書を授与されました。

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交流ワークショップ「チームの力を集結せよ」講師 村本 哲哉 先生(東邦大学)

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口頭発表

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ポスター発表

■発表課題 メンティ/メンター■(敬称略)

1 「第二世代バイオマスエタノールに適した酵母の探索」
  東京学芸大学附属国際中等教育学校 岩波 晴之・齊藤 奏斗
  / 工学院大学 藤井 克彦

2 「淡水藻類廃棄物から肥料及びバイオスティミュラントを開発する」
  土浦日本大学高等学校 青木 英那 / 信州大学  國頭 恭

3 「ムペンバ効果について」
  静岡県立三島北高等学校 銭谷 憧空・尾ア 舜・山本 果奈 
  / 法政大学 藤田 貢崇

4 「鳴き声の分析によるリスザル(Saimiri sciureus)の刺激の可視化」
  洗足学園高等学校 小宮山 莉子 / 京都大学 西村 剛

5 「閉鎖空間における物質の循環」
  青森県立三沢高等学校 大坂 唯歩稀・津島 めい・平野 友麻 / 神奈川大学  鈴木 祥弘

6 「福地層(下部デボン系)の岩石から産出する微化石」
  佼成学園高等学校 濱野 慧 / 大阪公立大学 足立 奈津子

7 「Neurofeedback for Anorexia − RelaxNeuron −Aimed in Dissolving the Root Neuronal Cause」
  BYU online high school 松柳 佳奈 
  / 慶應義塾大学 吉田 貴寿 ・ 東邦大学 村本 哲哉

8 「深層強化学習を用いたヒューマノイドロボットの二足歩行における人間らしさの探求」
  聖光学院高等学校 付 聖宣 / 電気通信大学 東郷 俊太

 今回の発表会では、サイエンスメンタープログラムOB・OGの清水亮祐さん、二階堂有希乃さん、伊藤颯矢さん、久保田くるみさんが運営にご協力くださいました。
 ご参加いただいた高校生の皆様、本プログラムにご協力いただいているメンターの先生方および引率いただいた高校の先生方、サイエンスメンター事業委員の皆様、ありがとうございました。


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サイエンスメンタープログラムにご興味のある方はこちら
→ https://www.jss.or.jp/fukyu/mentor/

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 11:58 | サイエンスメンタープログラム | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 出利葉 拓也さん [2024年04月01日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「時系列情報を保持するワーキングメモリを実現する神経振動の検討」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程3年の出利葉 拓也さんからのお話をお届けします。

<出利葉さんより>
 私は「頭の良さとは何か?」という問いに中学生ぐらいから興味がありました。
中学1年ぐらいまでは「天才」と呼ばれて育ち、勉強をほとんどしなくても誰よりも勉強ができたのです。
しかし気づけば段々と天才性が失われ、みるみるうちに塾ではクラスの最下位レベルになり、高校受験も思ったような結果を得られませんでした。
今考えれば、私はただ早熟なだけだったのです。

 この経験は、私が脳研究の道に入るきっかけとなる重要な疑問を与えてくれました。
『頭の良さとはなんだろうか?』
努力しなくても頭がいい時代も、努力しても頭が良くなれない時代も、両方経験した私からみれば、「頭の良さ」が努力で補える差では決してないことは明らかでした。
では、それを分かるには脳を知るしかない。

 それから時が経ち、私は脳研究の世界を歩き始めました。
研究テーマは「ワーキングメモリ」と呼ばれる短期的な記憶システムに関するものです。
誰しも仕事の指示や料理の手順を覚え、ときに忘れてしまうことがあると思いますが、このような類の短期的な記憶やそれに関わる処理のことをワーキングメモリと呼びます。
ワーキングメモリには個人差があり、それが学業成績や知能においてとても重要だと考えられています。
「頭の良さ」という曖昧なものを知るためのスタートとして、最適な研究テーマでした。

 初めは脳波計を使って人の脳活動を測り、そのメカニズムを調べていました。
学部3年から修士1年のことです。
しかし、やればやるほど困難に直面します。
脳波は脳から頭蓋骨を経由して計測されるため、信号がぼやけすぎてしまうのです。
脳波電極に計測される信号にはあまりにも多くの神経活動やノイズも重なっていて、その意味を見出すのは不可能に思えました。
3年もこのテーマに費やしましたが、このまま研究を継続しても「頭の良さ」について何もわからない…と頭を抱えました。
(実は後に脳波研究を再開していて、その面白さを再発見していますが)

 ちょうどその頃、ある論文と出会いました。
2018年に“Neuron”という雑誌に掲載された”Neural Mechanisms of Sustained Attention Are Rhythmic”(持続的注意のメカニズムはリズミカルである)という論文です。
この論文では驚いたことに、「脳波を測ることなく」脳の詳細な活動を炙り出す独特な手法を用いていました。
実験では参加者が画面に点が現れたのに気づいたらボタンを押すという行為をひたすら繰り返すのですが、そのデータを膨大に集めます。
数百回というボタン押しのデータ(ボタンを押すのにかかる時間=反応時間)を集めると、そこには私たちの脳活動を反映する規則性がわずかに現れるのです。
これを解析すれば、意外にも頭皮から脳波を測るよりもクリアにメカニズムが見えてくる。
測っているのは行動のデータだけなのにも関わらず、です。

 この手法を応用すれば、ワーキングメモリのメカニズムも分かるかもしれないと思いつきました。
この仮説に基づき自分を対象にして試しに実験をしてみると、見事に想定通りの結果が得られて驚くとともに、視界が開けた気分でした。
知る限り、当時この手法をワーキングメモリに応用した研究者は他にいませんでした。
ここからしばらくはとんとん拍子でした。
概ね仮説を支持する(つまりワーキングメモリのメカニズムを明らかにする)結果が得られ、笹川科学研究助成にも採択いただき、モーター・コントロール研究会では若手奨励賞をいただきました。

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(写真1:研究の概念図)


 しかし、この論文をまとめて初めて学術雑誌に投稿するプロセスは、さらなる壁として私の前に立ちはだかりました。
エディターキック(編集部に掲載を断られること)とリジェクト(査読者に掲載が断られること)を合わせて10回ほど経験することになったのです。
そのプロセスでこの研究は半年ほどお蔵入りにすることを決断し、その後主張を当初のものよりも弱めた上、それを確かなものとするために追加実験をするなどしました。
最終的に累計125名を対象に、合わせて70000回ほどの反応時間のデータを分析したことになります。
お蔵入りを決めた年は失意のどん底と言える気分で、基本的に楽天的な自分ですが今回ばかりはダメかも、研究者向いてないな、と思うほどでした。
結果的に粘りを重ねて、なんとか論文のアクセプトをもらった瞬間の喜びと安堵は忘れられません。
厳しかった査読者から”I have nothing else to say. This is a good and interesting study.”(もう言うことはない。これは良い面白い研究だ)というコメントをいただくこともできました。

 とはいえ、この研究自体は、「頭の良さとは何か知りたい」という中学生の自分の疑問のほんの一端の一端を解き明かしたにすぎません。
今現在、これに関わる研究をいくつか進めていて、興味深い結果が得られつつあります。
ようやくスタートに立てたと言うことで、これからますます精進していきたいと思います。
研究の中身について触れることがあまりできませんでしたが、詳細はぜひ論文(下部に記載)に目を通していただければ幸いです。少し難解かもしれませんが…。

最後に、2021年度に笹川科学研究助成を、そして2023年度には海外発表促進助成を賜ったことに心より感謝申し上げます。
本研究がなんとか身を結ぶことができたのは、紛れもなく本助成のおかげです。

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(写真2:海外発表促進助成の支援を賜った学会にて)


 これから笹川科学研究助成に応募したいと言う方へ
当研究助成の特徴の一つは、「若手による基礎研究」への支援を積極的におこなっていただけるということだと思います。
世の中にある大抵の助成金は、ある程度実績があることや、世の中の役に立つことが審査における大きな基準となります。
それと異なり、笹川科学研究助成では私の研究のように、実績もない若手による、すぐには世の中の役にも立たないような研究も寛大に受け入れてくださいます。
もちろん、その面白さを十分に伝える必要はありますが、ぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

論文
Ideriha, T., Ushiyama, J. Behavioral fluctuation reflecting theta-rhythmic activation of sequential working memory. Sci Rep 14, 550 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-023-51128-7

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:10 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)