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「第15回サイエンスメンタープログラム研究発表会」を開催しました! [2023年07月30日(Sun)]
 
 2023年7月30日に第15回サイエンスメンタープログラム研究発表会(inアルカディア市ヶ谷)を開催しました。4年ぶりの現地開催となり、高校生は口頭発表、ポスター発表、研究倫理を学ぶ交流ワークショップ「信頼される研究とするために」に参加しました。
 また、本研究発表会で修了となる、青山さん、金井さんは修了証書を授与されました。

口頭発表4人.jpg
口頭発表

■発表課題 メンティ/メンター■(敬称略)
1「クロマルハナバチで見られる倍数化が行動に及ぼす影響」
  安田学園高等学校 青山 庵/大阪公立大学 渕側 太郎
2「市販塩からの高度好塩菌の分離および分類」
  成城高等学校 金井 海翔/創価大学  黒沢 則夫
3「福地層(前期デボン紀)から産出する海綿骨針」
  佼成学園高等学校 濱野 慧/大阪公立大学 足立 奈津子
4「アゾ化合物のフォトクロミズムについて」
  兵庫県立龍野高等学校 森川 留衣/兵庫県立大学 近藤 瑞穂

ポスター4人.jpg
ポスター発表

P1000814.JPG
サイエンスメンター事業委員長/JSS会長 橋と修了した青山さん・金井さん

交流WS.JPG
交流ワークショップ「信頼される研究とするために」講師 村本 哲哉 先生(東邦大学)

 今回の発表会では、サイエンスメンタープログラムOGの石井 辰美 さんと今井 裕来 さんが運営にご協力くださいました。ありがとうございました。
 ご参加いただいた高校生の皆様、本プログラムにご協力いただいているメンターの先生方および引率いただいた高校の先生方、サイエンスメンター事業委員の皆様、ありがとうございました。

集合.JPG
ありがとうございました

(おわり)
ひらめきサイエンスメンタープログラムにご興味のある方はこちら
→ https://www.jss.or.jp/fukyu/mentor/

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:49 | サイエンスメンタープログラム | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
研究者コラム(3)気象・物理学者 森 厚先生 [2023年07月20日(Thu)]

 研究者コラム第3回は気象・物理学者の森厚先生、インタビューアーは右田亜朗さんです。大学生になったサイエンスメンタープログラムのOB・OGが、研究者にインタビューして、研究者を紹介したコラムです。研究者についてもっと知りたい方必見です!

桜美林大学 森厚教授 インタビュー
〜世界の広げ方〜

右田 亜朗(早稲田大学大学院2年生※取材当時)
右田さん森先生2人.jpg
左:森先生 右:右田さん

 NHKの番組『ピタゴラスイッチ』を見たことがあるだろう。しかしこの番組で涙が出そうになる人は珍しいかもしれない。桜美林大学の森厚教授が自身の体験も交えつつ、そこに感じとった「世界の広げ方」を語った。


1 好きなことを見つけなくてもいい
 
 「あらかじめ強調しておきたいことがある」と、森教授は話を切りだした。
「世の中“好きなことをやればいい”とよく言われている。けれども“私、好きなことがない”という声もよく聞く。やりたいことが見つからないとか、自分にとって何がおもしろいのか分からないとか。それを罪悪感のように感じている人がいる気がする」。
大学で教えている学生にも、そういう人がたくさんいるという。大学院生の筆者のまわりでもよく耳にする。
 どうやって好きなことを見つければよいのか。普通はそう考えてしまう。しかし森教授のたどりついた答えは“好きなことを見つけなくてもいい”だった。その代わり、自分の経験にいとおしさを感じることが重要と話す。
「好きなことがあるのももちろんよい。しかし好きなことが見つからないから自分はダメだとか、将来を決められないというのはすこし違う。好きなことは必ずしもすぐ見つかるわけではない。何が好きかはっきりしなくても、それが普通だしよいではないか。何か好きなことを見つけようというより、自分の行動や経験に愛着を持つというほうが正しい表現に思える。たとえ最初は好きではなくても、何かやったことに対し“自分はこれをやったんだ”と思えることが大事」。
 もちろん森教授にもそうした経験があり、いま愛着を持って仕事ができていると話す。そのひとつ、研究者の職業の魅力を感じたという研究での体験を聞いた。


2 朱に交われば赤くなる

 「北極振動」という現象がある。北極と日本などの地域の気圧が、まるでシーソーのように交互に変動する。日本の気候にも影響するので、最近は天気予報でも時折耳にするようになった。
 しかしこの現象には昔から論争が生じている。あたかも「北極振動」というものがあるかのように見えているが、じつは以前から知られていた「北大西洋振動」と「太平洋・北アメリカ振動」という別の現象が合わさっただけではないかというのである。
 どうすればそれを確かめられるのか? 森教授が疑問に思っていたちょうどその頃、隣の研究室の先生が偶然別の課題を口にした。「独立成分分析」を何かに応用できないか? 「独立成分分析」とは例えるなら、合唱の声から個人の歌声をそれぞれ分ける技術だ。森教授は「北極振動」に「独立成分分析」を使えるのではないかと考え、研究をはじめる。結果、「北極振動」は見かけ上の現象に過ぎないというものだった。のちにそれを論文で読んだ他大学の先生の指摘を受け、観点を変えて解析しなおし、実際の現象をより正確に再現できる結果も得た。
 いろいろな人とコミュニケーションを取り、より正解に近づくプロセスはおもしろい体験だったという。
「自分だけでは気付けない。やっぱりコミュニケーションは常に重要だ。人によって気付くところが違うし、以前に気が付いていたことでも、いつの間にか自分はそれを大事ではないと思っていることもある」。
 そんな森教授が科学者を目指したひとつのきっかけは、1982年、高校生のときに読んだ雑誌『図書』の記事にあった。当時はまだ目新しい気象衛星「ひまわり」が撮影した雲の様子の解説である。まるで地面の溝を空から眺めると絵だと分かるナスカの地上絵のように、地上からと宇宙からでは雲の様子も異なって見えるという話で、気象学に新たな視点が与えられた印象だったという。気象学に興味のあった森青年は感銘を受けた。
 そこで記事の文章と挿絵を手掛けた東京大学の木村龍治先生に手紙を出し、気象学を学べる大学を聞いた。すると各大学の先生の専門と研究内容を記した丁寧な返事をもらい、のちに大学院では木村先生のもとで学ぶこととなった。木村先生のさまざまなことに関心を持つ姿勢に大いに影響を受け、今でもお手本にしているそうだ。
 「このあいだのW杯でゴールを決めた、三笘選手と田中選手はおなじ小学校だった。朱に交われば赤くなる。お互いに磨き合えたり、この人と一緒にやっていけば自分も成長できるだろうという人を見つけたりして、積極的にコミュニケーションを取っていくと自分も伸びていく」。
 サイエンスメンター制度でメンターの先生に教わりながら、友人と切磋琢磨し研究していた著者にも大いに頷ける。出会いがもたらす人生への影響は小さくないと、改めて感じる。


3 世界の広げ方
 
 森教授が自身の講義『物理学概論』で紹介している歌がある。冒頭にすこし書いた、『ピタゴラスイッチ』で放送された「対応の歌」だ。
 歌そのものは極めて単純である。スイッチを押すと電気がつく。まな板に残ったへたの数を見ると、料理に使ったナスの数がわかる。そうした日常に見られる対応関係を並べている。しかし森教授の見方はそれだけにとどまらない。
 「番組を見たときに感動して涙が出そうになった。ふと気が付くと人間活動はみんな“対応”と関係している感じがする。あらゆるものがいちいち“対応”していて、それが組み合わさってコミュニケーションができ、学問が成立し、人間の知的活動につながっている」。
 いったいどういうことか。いくつか例を出して説明してもらった。たとえば、日本語の「犬」は英語の「dog」という言葉と“対応”することで、おなじ動物を指している。言葉だけでなく、すこしだけ数学にも話を広げてみよう。方程式になぜxやyの文字を使うのか。それは他のアルファベットの頭文字と重ならないよう、あえて無個性な文字を使うことで、xやyがさまざまなものと“対応”できるようにしているからだ。“対応”させるという発想があるからこそ、xやyは意味を持っている。
 もうひとつ例をあげよう。速さ、時間、距離を考えると、「速さ×時間=距離」という“対応”関係の公式を見いだせる。しかし“対応”はそれだけにとどまらない。さらに発展させれば比例という“対応”関係にも結びつく。応用の幅が広がる。これを森教授は「世界が広がる」と表現した。
「とりあえず公式に当てはめて解き、自信を持つのも大事なこと。しかし、それだけできればオーケーという雰囲気があるのは残念に思う。それで終わるのではなく、本当は勉強したことをさらに深めると、いろいろな“対応”があり発展がある。比例のような“対応”関係と結びつけて考えることができたりする。そうすればもっと世界が広がってくる。ひいては大きな枠組みで考え、人間の知的活動として自分のやっている勉強を位置付けたりすることができる」。
 こうした“対応”を理解する能力が人間には備わっているという。
「人間が自分を改善していくために備わっている本能として、“対応”がある。たとえば赤ちゃんは生まれたときにちゃんと自分の手を動かすことができない。何回も試行錯誤してこうしたら手が動くという経験を獲得しているはず。初めて『ママ』と言うのも、何度も失敗し偶然言えたときに母親が反応することで、『ママ』が“対応”していると気付く。そうやってパターンを身につける」。
 “対応”によって人間はさまざまなことを認知し、考え、探究することができる。じつはこれは科学の「仮説検証」の考え方そのものだ。
「本能的に人がやってきた“対応”を見つける試行錯誤を、ガリレオ・ガリレイは実験科学の方法として提示した。何か物事を見つけたとき、その裏にどんな法則(パターン)があるだろうかと仮説を立てる。そしてその仮説に基づいて実験で検証して確かめる。この流れを意識すると、モノの見方や生活の行動、さまざまなパターンを身につけて人生を変えることができる気がする。だからこの考え方を、改めてちゃんと言葉にして身につけておくのはすごく大事ではないか」。
 人間の知的活動の根本にある“対応”。今回話に出たのはそのほんの一部にすぎないだろう。たくさんの“対応”を知りパターンを身につけ、もっと世界の広がりを見る、広げていく。そのためにまず、本能的にやってきた「仮説検証」を意識するところから始めてみてはいかがだろうか? すこし人生が変わるかもしれない。
 最後に森教授の考える、ぜひとも身につけるべきパターンを伺った。
「時間管理。意外と人生は短い。この宿題は何分でやるという、そういうところから始まる時間管理を自分でできるようにしておくと、あまり後悔しない気がする」。

<おわり>

森先生2.png
森 厚 先生
所  属:桜美林大学 リベラルアーツ学群 教授
専門分野:地球流体力学
経  歴:東京大学で博士(理学)取得。東京学芸大学教育学部地学科 助手、桜美林大学 准教授を経て現職。

右田さん2.png
右田亜朗さん
(早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻2年生※取材当時)
サイエンスメンタープログラム当時の情報
研究期間:2015.4 - 2016.3
研究課題:「裸眼での夜空の明るさ観測方法の確立」
学 校 名 :海城中学高等学校
メンター:渡部 潤一先生(国立天文台副台長教授、総合研究大学院大学物理科学研究科天文科学専攻教授)

森先生・右田さんありがとうございました!!


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:30 | サイエンスコミュニケーション | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
研究者コラム(2)後編 地質学者 山口直文先生 [2023年07月03日(Mon)]

 本日のコラムは、山口先生のインタビュー後編です。大学生になったサイエンスメンタープログラムのOB鈴木さんが、前編に続き、山口先生のお話から、飛び込んでみなければわからない研究の世界をお伝えします。(前編はこちら眼鏡

 
「科学好き」と「科学者」の違いって何だろう?(後編)

鈴木泰我(筑波大学4年生)
山口先生・鈴木さん2.jpg
左:山口先生 右:鈴木さん


「困っちゃうなぁ」は素敵なこと

 科学者、特に職業としての研究者の問いの答えは、その時点でこの世に存在しないものが大半だ。ゆえに、明晰な研究者であろうと、研究中は常に「困って」いる。答えが分からない。あるいは答えに行き着く方針すらも立たない。だが、山口さんは「そういう『困っちゃうなぁ』という状況って素敵なんですよね」と笑って語る。予想のつく研究はもちろん成果が出やすい。しかし、予測のつかない、困ってしまうような研究こそ、研究者に必要な時もあるのだ。
 また、困ってしまう、手立てがない瞬間というのは、言い換えれば大人も子供もない、ということでもある。先生や親といった大人が用意した問を自分たち子供が解く、という上下のある構造とは根本的に違い、科学の問いの前では大人も子供も等しく困っている。こうした問いに直面したとき、プロの研究者は「答えに行き着くコツを持っていたり、考える筋力が強かったりする」ことはあるが、基本的には学生と対等の立場である、というのが山口さんの考えだ。
 情報過多の時代を生きる私たちにとって、わざわざ問いを立てて検証することは無駄に思えるかもしれない。多くの場合、検索すれば「答えらしきもの」は出てくる。それを繰り返すうちに、問うことそのものを止めてしまった人も沢山いるだろう。だが答えの出ている問いに疑問を見出すことは決して愚かでも、悪いことでもない。山口さんは「『無駄』を敬遠しないでほしい」と言う。車輪は何度再発明してもいいのだ。さぁ、「困っちゃう」まで問いを立て続けようじゃないか。


科学者として生きること

 科学者としてやっていくには何かに秀でていなくてはならない、ということは多くの人の想像するところだろう。確かに研究者インタビューを見れば途方もない読書量や何日も徹夜するバイタリティなどの超人的な要素が目立ってしまうものだ。しかし一般的な「研究者らしい」イメージ以外にも研究者に役立つ重要な能力は沢山ある。
 その中の一つにはプレゼンテーションの技術が挙げられる。ここでいうプレゼン技術とは、ステージに上がって上手に振る舞うことではなく、自分の伝えたい内容を論理的に伝える技術のことだ。科学者にとって成果を発表することは研究そのものと同じくらい重要だ。相手に伝えられなければ研究成果としてみなされず、「なかったこと」になってしまう。
 山口さんは、最も言いたいことが伝わらないとき、「それは必ずしも内容が悪いわけではなく、そこに至るまでの説明で、必要な文脈を説明しきれていない場合がある」と言う。このことは研究のプレゼンだけではなく、レポートや小論文、メール一通に至るまでさまざまな媒体に通用する話だ。


科学の『競争』

 研究に「頭の回転の速さが全てではない」と山口さんは言う。舌鋒鋭く切り返す会話は確かに端から見ていて頭がよさそうに見えるだろう。しかし、時間がかかろうとも素晴らしい成果を生み出すことができる科学者もいる。科学者の評価は基本的に「最終成果物」であり、そこに至るやり方は人それぞれだ。
 従って、科学者に必要なものはある特定の能力がずば抜けていることではなく、その人にしかない能力の組み合わせだ。同じ分野に取り組んでいても、得手不得手の異なる研究者によって多様な研究が生まれる。
 山口さんのお話を伺っていると、研究者として生きていく上では「自分自身に向き合うこと」が大切で、「他人より優れた能力を獲得すること」などは二の次なのではないかと感じた。山口さんの動機は「研究そのものよりも、見つけた何かを人に伝えたい、びっくりさせたい」という思いにある。幼いころに憧れたNHKスペシャルの世界がずっと心に残っているのだ(一度は本当に就職を考えNHKの方に話を聞きに行ったそうだ) 。研究の動機は人それぞれでよい。自分の『好き』にあった研究に向き合うことが何よりも大切なのだ。
<おわり>

山口先生.jpg
山口直文先生
所属:茨城大学 地球・地域環境共創機構 講師
専門分野:地質学
経歴:京都大学大学院で博士(理学)取得。その後、日本学術振興会特別研究員、
産業技術総合研究所 地質調査総合センター特別研究員、茨城大学 広域水圏環境科学教育
研究センター助教を経て現職。サイエンスメンタープログラムメンター(2020年)。

鈴木さん.jpg
鈴木泰我さん(筑波大学 生命環境学群 地球学類4年生※取材当時の所属)
サイエンスメンタープログラム当時の情報
研究期間:2017.9 - 2018.8
研究課題:「東京都新宿区立おとめ山公園内湧水周辺の地下水面及び地下水の挙動の分析」
学校名:海城高等学校
メンター:松山洋先生(首都大学東京 都市環境科学研究科 教授)


山口先生・鈴木さんありがとうございました!!

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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:24 | サイエンスコミュニケーション | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)