CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

日本科学協会が"今"やっていること

お役立ち情報、楽しいイベントやおもしろい出来事などを紹介しています。是非、ご覧ください。


<< 2022年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
プロフィール

日本科学協会さんの画像
カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
talking to (04/17)
shapex2.net (04/15)
KetoGenic BHB (04/15)
リンク集
https://blog.canpan.info/kagakukyokai/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/kagakukyokai/index2_0.xml
先輩研究者のご紹介(田井 優貴さん) [2022年05月30日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「新たなアレルギー性疾患の治療法確立に向けたIgE産生制御機構の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東京理科大学大学院薬学研究科薬科学専攻所属の、田井 優貴さんからご専門の研究について、コメントを頂きました。

<田井さんより>
 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、気管支喘息などのI型アレルギー性疾患の発症には抗体のアイソタイプの1種である IgEが中心的役割を担っていることが知られています。したがって、IgEの産生メカニズムと病態の発症への関与を明らかにすることは、アレルギー性疾患の発症メカニズムへの理解と治療法の確立に必須だと考えられます。アレルギー性疾患の発症には環境要因と遺伝要因の2つが関与していると言われていますが、遺伝要因の一つが転写因子Foxp3の変異だと知られています。Foxp3は制御性T細胞(Treg)の分化に必須のマスター転写因子であり、Treg細胞は過剰な免疫応答や自己免疫反応を抑制することでアレルギー疾患や自己免疫疾患の発症を防いでいます。抗体産生には2次リンパ組織に形成される胚中心が重要であり、この胚中心反応はマスター転写因子Bcl6の発現をともに特徴とする濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)と胚中心B細胞(GCB)の相互作用によるもので、胚中心において抗体の親和性成熟やクラススイッチが起こると考えられています(図1)。

図1.jpg

 特に、IgEは胚中心においてクラススイッチが起こり産生されることが先行研究により示されています。しかしながら、抗体は胚中心だけでなく胚中心外でも産生されるため、Treg細胞の機能異常時においても実際にIgEが胚中心を介して産生されたのかは明確にされていませんでした。そこで、私たちのグループはTreg細胞と胚中心反応を同時に障害できるマウス(Foxp3 Bcl6 cDKO)を作成し解析したところ、Treg細胞の異常時において免疫時におけるモデル抗原特異的なIgEは先行研究と同様に胚中心を介して産生される一方で、非免疫時に自発的に誘導されるIgEは胚中心を介さずに産生されることを明らかにしました(図2)。

図2.jpg

 従来、アレルゲン特異的なIgEがアレルギー性疾患の発症に関与していると考えられてきました。しかしながら、アレルギー性疾患、特に気管支喘息に罹患している人の中には血清中の総IgE量が高いがアレルゲン特異的なIgE量が低い人もいることが報告されています。つまり、アレルゲン非特異的なIgEが何らかの形で寄与していることが考えられますが、そのメカニズムなどは不明です。そこで現在、この胚中心を介さないIgEがアレルギー性疾患を発症しやすい体質であるアトピー素因などに関連しているのではないかと考え研究を進めています。

 笹川科学研究助成は、若手研究者が行う研究に対して支援する制度で、特に大学院生にとっては貴重な機会になると思います。私が笹川科学研究助成に申請するにあたって重要だと感じたことは、新規性・独創性を感じさせる研究計画を示すことです。自分独自の視点を持って問題解決をすることを特に望んでいるように感じました。さらに、自分独自の視点から考えるだけではなく、自身の研究の立ち位置を明確にし、その課題を解決することで社会にどのようなメリットを還元できるのかなどを俯瞰して考えるようになるとより良い申請書になると思います。また、助成期間でどこまで研究を進めるかなどの具体的な計画、予備実験のデータなど実現可能性を示すことで採択される可能性は上がると思います。そして何よりも申請書を書くこと自体が良い経験になるためぜひ申請すべきです。

 最後に、貴重な機会を下さった日本科学協会の関係者の皆様に感謝申し上げます。
<以上>

 私も花粉症で非常に困っているため、アレルギーについての研究が進むことはうれしく思います。ご自身の研究を見つめなおす機会ともなりますので、是非とも笹川科学研究助成に挑戦してみてください。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:07 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介(楠本 多聞さん) [2022年05月16日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「オージェ電子放出核種を使用した標的アイソトープ治療における間接作用の役割の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、量子科学技術研究開発機構放射線計測グループ所属の、楠本 多聞さんからご専門の研究について、コメントを頂きました。

<楠本さんより>
 標的アイソトープ治療とは、放射性同位元素で標識された治療薬剤を腫瘍へ送り届け、放射線によってがん細胞を死滅させる治療法であり、根治が難しいとされる播種性のがんに対する有効な治療法として考えられています。使用される放射性同位元素としては、α線放出核種であるAt-211やAc-225、β線放出核種のI-131、オージェ電子放出核種のIn-11やCu-64が挙げられます。オージェ電子はα線やβ線に比べて飛程が短く、陽子線に匹敵するLET(放射線が単位距離進む間に落とすエネルギー)をもつことから、周囲の正常組織を傷つけることなく、がん組織のみを効率的に攻撃できると考えられています。しかしながら、オージェ電子の飛程は水中で100 nm程度と短いため、治療効果を推定するための線量を直接評価することが難しいとされています。そこで私の研究では、このオージェ電子の線量の評価手法の確立に取り組みました。
 具体的な内容としては、化学線量計としても使用されているクマリン-3-カルボン酸(C3CA)水溶液とCu-64標識した塩化銅水溶液を一定の割合で混ぜ、この混合水溶液の体積を変化させて行きます。オージェ電子の飛程は非常に短いため、混合水溶液の体積に関わらず、一定のエネルギーを落とします。しかしながら、競合過程で放出されるβ線や陽電子は飛程がオージェ電子よりも3ケタ以上も長いため、体積の増加に伴ってそれらの落とすエネルギーも増加します。よって、混合水溶液の体積と混合水溶液内で落とされた放射線のエネルギーの関係を考えると図のような切片をもつようなグラフを得ることができます。この切片がオージェ電子の線量に相当します。実験の結果をGeant4という放射線シミュレータによるシミュレーションの結果と比較することで整合性が確認できたため、オージェ電子を使用した標的アイソトープ治療の生物学的効果を他の放射線がん治療のそれと比較したところ、重粒子線治療(炭素線治療)とほぼ等しいことが分かりました。この結果は、Scientific Reportsという学術誌に成果を報告し、受理されました。

画像1.png

 日本科学協会は、笹川助成金として幅広い分野を対象に研究費の助成をしてくださいます。また、予算の使途にも自由度があり(新型コロナウイルスの影響で出張が困難になった際の使途変更にも柔軟に対応してくださいました!)、集中して研究に取り組むことができました。研究費が原因で研究が思うように進められないと悩んでいる研究者の方は是非一度応募してみてはいかがでしょうか?
最後になりましたが、貴重な機会を与えてくださった日本科学協会の関係者の皆様にお礼申し上げます。
<以上>

 新型コロナウイルスの影響で、なかなか研究が進まないこともあったかと思いますが、諦めずに研究を続けることで、成果を学術誌に報告ができたとのことでした。まだコロナウイルスは終息しておりませんが、これからも頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:29 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)