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先輩研究者のご紹介(塙 宗継さん) [2022年01月31日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「海中微粒子は潮間帯における平板動物の生態系の代謝に大きく影響するのか?」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、山梨大学総合研究部医学域基礎医学系解剖学講座構造生物学教室所属の、塙 宗継さんから研究室の様子について、コメントを頂きました。

<塙さんより>
・研究室の様子
私の所属している解剖学講座はその名前の通り解剖学の講義や実習を担当している講座です。しかし、研究まで人体の解剖をしているのか?というとそんなことはありません。私の所属する解剖学講座は走査型あるいは透過型電子顕微鏡を用いて「光学顕微鏡で観察できないような小さな構造を観る」ことを得意としており、様々な生物や分子の構造をナノメートル単位で解析する研究をしています。私の研究対象である平板動物の研究も電子顕微鏡を用いて進めており、個体の表面を調べる場合には走査型電子顕微鏡、細胞構造を調べる場合には透過型電子顕微鏡をそれぞれ使用しています(図1)。

図1.jpg
図1 電子顕微鏡による平板動物の観察。

・平板動物の研究
平板動物は単純な構造をした海産無脊椎動物で温暖な海域に生息しています(図2)。平板動物は無色透明で小型なこともありフィールドで直接観察することが難しいため、磯の転石を持ち帰って顕微鏡下で個体を回収します。回収した個体はシアノバクテリアを培養した容器内で飼育し、無性生殖によって増殖させることで様々な研究に使用しています(図3)。

図2.jpg
図2 平板動物の採集ができる磯 (静岡県下田市)。

図3.jpg
図3 平板動物の飼育槽。

上述した通りフィールドでの平板動物の観察が難しいため平板動物の生態系の多くは謎に包まれていますが、海中微粒子(海砂)が舞い上がるような荒れた天候になると、しばらくの間は磯から全く採集できなくなることが経験的に知られています。このように平板動物は磯から忽然と姿を消してしまいますが、平板動物の身に一体何が起こっているのだろうか?と不思議に思い、始めた研究が笹川科学研究助成に採択された研究でした。平板動物は透明ですが色素によって着色することができるため、研究室内で海砂の舞い上がった状況を再現して個体の様子を観察しました。結果として、個体は海砂によって基質から剥がれて水槽の下に落ちていき、剥がれおちた個体を走査型電子顕微鏡で観察すると腹側で海砂を抱えるようにして丸まっている様子が確認できました(図4)。平板動物は腹側の繊毛と呼ばれる細胞の突起で基質に接着するため、このように丸まってしまうと最早、基質には付着していられません。さらに、複数の個体を海砂上にしばらく置いておくと4時間後にはほとんどの個体が死亡してしまうことも明らかになりました(図5)。何故、海砂の上で死亡するのかは研究期間中に明らかにすることができませんでしたが、自然界においても転石などの基質から剥がれた個体が海砂上に回収されて死亡している可能性があります。今後、個体が海砂上で死亡する原因について透過型電子顕微鏡を用いて明らかにし、研究成果としてまとめたいと考えています。

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図4 海砂によって基質から剥がれた個体の観察。繊毛を矢じりで示した。

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図5 海砂上の個体の経時的観察。

・笹川科学研究助成の申請書作成の前に「選考総評」を読みましょう
笹川科学研究助成は大学院修士課程に在籍する大学院生、あるいは進学予定の学部4年生も申請することのできる数少ない助成事業の一つですので、研究助成金の申請書を初めて書く機会となる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方々には「選考総評」の総評、特に御自身が申請予定の研究領域の総評を確認することをお勧めします。採択課題の選考に携わる方々の生の声をここまで詳細に知ることができるのは私の知る限り本助成事業だけで、そこには初めて申請書を書く人が陥りやすい失敗例が前年度の様々な申請内容をもとに具体的に示されています。本助成事業への申請書作成の参考になるだけでなく、将来、他の助成事業への申請書を書く際にも大変参考になりますので、申請書作成前に目を通してみてはいかがでしょうか。
<以上>

 笹川科学研究助成によって、どのように平板動物の研究を進められたか、様々な写真を用いて分かりやすくまとめていただき、誠にありがとうございました。
 研究の始まりは、不思議に思った事からではないかと思います。その疑問を解決するための第一歩として本助成を利用していただければ幸いに思います。申請書を作成することは難しいことかとは思いますが、選考総評に初めての方でも申請書を作成することができるよう、色々なアドバイス等を掲載しておりますので、是非、ご申請してみてください。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:14 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介(奥村 翔太さん) [2022年01月11日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「石基輝石結晶のナノスケール分析から探る、火道浅部環境と噴火様式の関連性」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都大学大学院理学研究科所属の、奥村 翔太さんからご専門の研究について、コメントを頂きました。

<奥村さんより>
 火山噴火には規模や継続時間などの点で様々なタイプがあり、特定の火山においても時間経過とともに噴火のタイプが変化することがあります。その要因として、マグマの化学組成だけでなく、マグマだまりから火口までの通り道(火道)をマグマがどのように上昇したかが重要であると指摘されています(図1)。具体的には、マグマは高圧の地下深部から地表へと上昇する際に減圧され、溶け込んでいたガス(水蒸気や二酸化炭素など)を気泡として析出します。これによりマグマ全体の体積が膨張し、密度が低下して浮力が強くなるため、爆発的噴火につながります。イメージとしては、炭酸飲料の蓋を開けた時を想像していただけると分かりやすいかもしれません。より厳密には、気泡が析出するのにかかる時間と上昇のタイムスケールとの兼ね合いや、気泡が火口や火道壁から抜けていくプロセスなど、火山内部で複雑なプロセスが絡み合うことにより、地表で起こる噴火の多様性につながります。従って、火山噴火という複雑な物理化学現象を予測するためには、過去の噴火におけるマグマの火道上昇履歴を明らかにし、それがどのような噴火につながったのか理解しておくことが重要です。

画像1.jpg
(図1)火山内部の模式図

 私の研究では、噴火の際に放出された軽石などの岩石試料を分析することで、その中に含まれている微小結晶の形状からマグマ上昇履歴を読み解くことを目指しています。火山岩石学分野の研究では、岩石試料の発泡度や化学組成、結晶量などがよく分析されますが、私の研究の特色は、結晶面の組み合わせのタイプ(専門用語で晶相といいます)に着目したことです。私は新燃岳や桜島といった火山の軽石を分析していく中で、数μm未満のサイズの結晶が、噴火の激しさに応じて晶相を変化させているようだと気づきました(図2)。そこで笹川科学研究助成を活用させていただき、噴火を模擬した減圧結晶化実験を行った結果、マグマ上昇に伴う減圧の激しさによって晶相が変化することを実証しました。この結果は、火山噴出物の分析において注目すべき組織を新たに示した点で重要であり、火道上昇履歴の理解を進展させることにつながると期待されます。

画像2.jpg
(図2)噴火時のマグマ上昇による減圧に応じた晶相変化

 笹川科学研究助成は地学分野でも応募できる数少ない助成金のひとつであり、当分野の方はぜひ挑戦すべきだと思います。私の研究がそうでしたが、手堅い研究よりも挑戦的で波及性の高そうな研究が好まれるかもしれません。また、コロナ禍で出張ができなくなった際、急な支出計画の変更にもご対応いただけたので助かりました。予算使途に学会発表や投稿論文の校閲・掲載料が含まれている点も大きなメリットです。
 最後に、貴重な機会を与えてくださった日本科学協会の関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。
<以上>

 日本には多くの火山があり、災害防止のためなどにも噴火のメカニズムを研究することは非常に重要であると思います。今後も独創的な着眼点によって、様々な事が分析できるよう、頑張っていただきたいと思います。
 笹川科学研究助成では、様々な分野の研究や、分野を跨ぐような研究も募集していますので、皆様、是非ともご申請いただければ幸いです。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:27 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)